選挙相場後は企業業績の成長を見極める局面へ

2月8日の衆議院選挙の投開票日を前に、株式市場は上昇基調を強めています。2月3日の日経平均株価は2,065円上昇し、5万4,720円と市場最高値を更新しました。好調な米国株高が相場上昇を下支えするなか、各報道機関が実施している衆議院選の情勢調査で、自民党が単独過半数を確保し、与党として安定多数を維持するとの見方が広がっていることも、株価を押し上げる要因となっています。

日経平均株価のPER(株価収益率)は2月3日に20.23倍となり、市場で警戒感が意識される20倍を再び上回りました。足元では選挙を意識した相場展開が続いていますが、今後、選挙相場が一巡すれば、株価は将来の企業業績の成長の見込みを冷静に見極める局面へ移行すると考えられます。

高PER局面で問われる「成長」の視点

そして日経平均株価全体のPER水準だけでなく、個別銘柄の選別においてもPERが意識されています。個別企業が高いPERを許容されるかどうかは、将来の業績成長への期待次第です。つまり、PERと将来成長という二つの軸が、投資判断において重要な要素となります。その両者を統合的に捉える指標が、PEGレシオ(Price Earnings Growth Ratio)です。

PEGレシオは、PERを利益成長率で割って算出される指標で、成長性を考慮した株価の割安度を測るために用いられます。たとえば、PERが20倍、利益成長率が20%の企業であれば、PEGレシオは1となり、一般にこの水準を下回ると割安と評価されることが多くなります。

PERが高い企業は一見すると割高に見えますが、将来の利益成長率が高ければ、将来の利益水準を基準にした評価では必ずしも割高とは限りません。こうしたPERの見かけ上の割高感を補正するうえで、PEGレシオは有効な指標といえます。

PEGレシオは市場をアウトパフォームしてきたのか?

PEGレシオについては、本連載の2025年11月12日付の記事「野村不動産、第一三共ほか…13銘柄 PEGレシオで選ぶPERだけでは見えない『成長調整』の視点とは?」で詳しく取り上げています。今回、改めてPEGレシオを取り上げたのは、足元の市場環境ではPERの水準だけを見ると割高に見える局面であっても、将来の成長見通しを考慮すれば必ずしも割高とは言えない状況にあるためです。

市場全体で同様のことが言えるように、個別銘柄においても、足元のPERだけで評価すると割高に映るものの、高い利益成長が見込まれる場合には、将来の利益水準を基準にした株価評価は相対的に割安と捉えられる銘柄が存在します。こうした局面では、PERの水準だけにとらわれず、成長性を加味した視点で銘柄を選別することが重要になると考えられます。

PEGレシオが魅力的な銘柄に注目し、過去の株価パフォーマンスを深掘り

そこで本記事では、PERが相応に高い水準にある銘柄であっても、将来の利益成長を考慮すれば株価評価に割安感が見込める、PEGレシオが魅力的な銘柄に注目し、過去の株価パフォーマンスを深掘りして検証しました。なお、PEGレシオの算出には、「今期予想PER÷来期予想営業利益増益率」を用いています。

まず、PEGレシオが投資判断においてどの程度有効であるかを再確認します。分析対象となる母集団には、十分な流動性を確保する観点からTOPIX500を採用しました。TOPIX500は、東証上場銘柄の中でも時価総額と流動性がともに高い主要500銘柄で構成される代表的な株価指数であり、実務的な投資分析に適した指数です。

金融業を除くTOPIX500の構成銘柄のうち、PEGレシオが小さい、すなわち成長性を考慮した割安度が高いとみなされる上位20%の銘柄を抽出しました。なお、来期の増益率がマイナスとなる銘柄については、PEGレシオ算出時の分母が負となり、指標としての意味を持たなくなるため、分析対象から除外しています。

PEGレシオの低い銘柄群が中長期的に高い収益を上げる傾向

選定した銘柄群に均等投資した場合のパフォーマンスを算出した結果が、図表1の青線グラフです。青線は累積リターンを示しており、グラフが右肩上がりで推移していることは、時間の経過とともに収益が着実に積み上がってきたことを意味します。このことから、PEGレシオの低い銘柄群が中長期的に高い収益を上げてきた傾向が確認できます。

【図表1】PEGレシオが低い(魅力的な銘柄)の株式パフォーマンス
注1:データ期間は2019年1月から2026年1月、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX500構成銘柄、但し「金融業(銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」と「その他金融業」を除く
注3:来期の営業利益に用いる予想値はアナリストコンセンサスを用いている
注4:毎月末時点で、PEGレシオ(今期予想PER÷来期予想営業増益率)が低い方から5分の1に入る銘柄を抽出。それらの銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出する。絶対パフォーマンスは2019年1月以降を累積している。超過パフォーマンスは対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2019年1月以降累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

赤線グラフは、市場平均を上回る超過パフォーマンス(累積)を示しています。こちらも右肩上がりで推移していることから、PEGレシオが魅力的な銘柄群が、継続的に市場全体をアウトパフォームしてきたことが分かります。

「PERは高いがPEGは低い」銘柄はいつ効くのか?

さらに今回の検証では、PERが高水準にある銘柄の中でも、将来の利益成長を踏まえれば株価に割安感が見込める銘柄に対象を絞って分析を行いました。

具体的には、毎月末時点で今期予想PERが高い方から上位3分の1に入る銘柄のうち、PEGレシオ(今期予想PER÷来期予想営業増益率)が低い方から5分の1に入る銘柄を抽出し、それらに等金額で投資した場合の翌月リターンを算出しています。

これは、「PERは高いが、来期の利益成長率も高い銘柄」に注目した検証です。PERが高くてもPEGレシオが低いということは、PEGレシオの分母にあたる来期予想営業増益率が大きいことを意味します。言い換えれば、足元では株価が先行して高く評価されているものの、それを上回るペースでの利益成長が見込まれている銘柄です。そのため、成長性を考慮すれば、株価に割安感が生じやすいと考えられます。

実際に、「PERは高くてもPEGレシオが低い銘柄」のパフォーマンスを見ると、図表2の紫線グラフに示す累積超過リターンは右肩上がりで推移しており、全体として良好な結果となっています。累積リターンの終点となる2026年1月末時点では、PER水準にこだわらずPEGレシオの低い銘柄群の累積超過パフォーマンス(図表1の赤線グラフ)と、ほぼ同水準に達しています。

もっとも、紫線グラフで示す「PERは高くてもPEGレシオが低い銘柄」のパフォーマンスには、大きな変動も見られます。2022年半ばにかけては急速にパフォーマンスが改善しましたが、2024年にかけては低迷し、その後2025年半ば以降、足元にかけて再び有効性が急回復しています。

【図表2】PERの水準は高いがPEGレシオが低い(魅力的な)銘柄の累積超過パフォーマンス
注1:データ期間は2019年1月から2026年1月、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX500構成銘柄、但し「金融業(銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」と「その他金融業」を除く
注3:来期の営業利益に用いる予想値はアナリストコンセンサスを用いてい
注4:「PEGレシオが低い銘柄」のパフォーマンスは、毎月末時点で、PEGレシオ(今期予想PER÷来期予想営業増益率)が低い方から5分の1に入る銘柄を抽出。それらの銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出する。そして対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2019年1月以降累積している
注5:「PERは高くても、PEGレシオが低い銘柄」のパフォーマンスは、毎月末時点で、今期予想PERが高い方から3分の1に入り、かつ、PEGレシオ(今期予想PER÷来期予想営業増益率)が低い方から5分の1に入る銘柄を抽出。それらの銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出する。そして対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2015年11月以降累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

増益期待が高まる局面では「PERは高くてもPEGレシオが低い銘柄」が有効か

2020年の新型コロナウイルス感染拡大後には、景気と企業業績の急回復が期待される局面となり、PERが高水準であっても、それ以上の業績成長が見込まれる企業の株価パフォーマンスが良好となりました。これが、2022年半ばにかけてパフォーマンスが大きく改善した背景です。

一方、その後はコロナ禍からの回復一巡感が強まるなか、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機とした物価高などを受け、将来の業績成長に対する確信が持ちにくい投資環境へと変化しました。この結果、高いPERを正当化するだけの増益率への信認が低下し、銘柄選択効果も弱まったと考えられます。

その後、足元にかけて累積超過リターンが再び回復してきた背景には、来年度以降の増益期待が再び高まっていることがあります。こうした環境下では、「PERは高くてもPEGレシオが低い銘柄」の有効性が、あらためて発揮されやすい局面にあると考えられます。

銘柄スクリーニング結果は?ツルハホールディング(3391)、塩野義製薬(4507)など参考銘柄9選

そこで、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」の10年スクリーニング機能を筆者が利用し、期待の低PEGレシオ銘柄を抽出しました。

対象は、金融業(「銀行業」「証券・商品先物取引業」「保険業」「その他金融業」)を除く企業とし、流動性を考慮して東証プライム市場に上場し、時価総額3,000億円以上の銘柄に限定しています。また、業績面で一定の健全性を確保するため、実績ROEが8.00%以上、かつ実績ROAが3.00%以上で、さらに、今期予想増益率(営業利益)が5%以上、来期予想増益率(営業利益)が10%以上の銘柄に絞り込みました。PERがある程度高い水準となっていても、来期にかけて増益率が高い銘柄に絞ってPEGレシオで評価するためです。

これらの条件に基づきExcel上でPEGレシオを算出し、1未満の値を示す9銘柄を抽出しました。これらの結果は図表3に示してあります。投資の参考にしてみてください。

【図表3】スクリーニング結果(Excel出力での表示変換)
[基礎条件]
市場:東証プライム、業種:水産・農林・鉱業・建設・食料品など、時価総額:3,000億円~
[詳細条件]
[指標]予想PER (会社予想):0.1倍~、[今期コンセンサス]増益率(営業利益):5.0%~・3人以上、
[来期コンセンサス]増益率(営業利益):10.0%~・3人以上、[指標]実績ROE:8.00%~、[指標]実績ROA:3.00%~
さらに「PEGレシオ」をExcelで算出して、魅力的な方から値が「1」未満の銘柄を出力
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(2026年2月3日時点)を用いてマネックス証券作成

銘柄スクリーニング方法を解説

ここからは補足的な説明です。読者の皆さんが、ご自身のタイミングや最新データで図表3のスクリーニングを行いたい場合の具体的なスクリーニング入力項目を示しました(図表4)。詳細条件の設定中の「予想PER(会社予想)」は、後の処理で必要な指標なので本来は表示のみで条件入力は不要ですが、会社予想の値が取得できないケースでデータが欠損となるため、便宜的に「0.1倍以上」を入力しています。

【図表4】スクリーニングの条件面設定画(銘柄スカウター)
出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― 10年スクリーニング、2026年2月3日時点)

この結果、図表5のような銘柄一覧が画面に出力されます。これらの出力銘柄のPEGレシオ計算する必要があります。そこで右上の「CSVダウンロード(図表5の〇印)」から銘柄リストを取得して、Excelで処理します。

ここで注意点があります。後に、Excel処理のために行う「csvダウンロード」は200銘柄までの制限があります。そこで対象銘柄数が200銘柄以内であることを確認します。仮に、200銘柄を超えていたら、3,000億円で設定している時価総額の最低基準を少し増やして、対象銘柄を200銘柄までに抑えるようにしてください。

【図表5】スクリーニング表示結果(銘柄スカウター)
出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― 10年スクリーニング、2026年2月3日時点)
図表6は図表5でダウンロードして取得したcsvファイルをExcelで開いた画面です。

まず、L列に「G列/I列」という数式を入力します。これが「PEGレシオ」です。
「/」は割り算という意味です。そして、そのL列の「PEGレシオ」で昇順(小さい順)にソート(並べ替え)します。

上位銘柄がPEGレシオから注目される銘柄です。

【図表6】Excel画面サンプル
出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウターの結果を使ってマネックス証券作成