2026年2月8日に行われた衆議院選挙で自民党が歴史的な大勝利を収めたことを好感し、2月9日の日経平均株価は前営業日比2,110円高となり、史上最高値となる5万6,363円を記録しました。なお、日経平均株価のPER(株価収益率)は2月3日時点で20.51倍と、市場で警戒感が意識されやすい20倍を上回っています。

高市政権が掲げる「責任ある積極財政」や「成長投資主導型経済」が着実に進展していくとの見方を背景に、安定した政治基盤のもとで将来の企業業績の成長を前倒しで評価する動きが強まった結果とみています。

選挙後の株高と市場が織り込む将来成長

今後は、期待先行で上昇した株価に対して、実際の企業業績がどの程度追随してくるかが焦点となります。3月期決算企業の第3四半期決算発表は、2月16日で一巡します。これまでの決算発表を見る限り、事前の予想を上回る内容が多い印象ですが、第3四半期決算は年間の4分の3が経過した時点での決算です。足元は年度末まで残り2ヶ月弱で、市場の関心は来年度(2026年度、2027年3月期)の業績見通しへと移っています。

そして、第3四半期決算を受けて、証券会社や調査機関に所属する企業アナリストが担当企業の業績予想をどのように修正するかも重要な注目点です。とりわけ、年度末に近づく今年度の利益予想以上に、来年度の利益予想がどのように見直されるかが、市場評価を左右しやすくなります。そこで今回は、今年度と来年度の利益予想修正(変化)の違いに着目した投資戦略を紹介します。

今年度と来年度のリビジョンが示す業績モメンタム

予想利益の上方修正は、株価にとって基本的にポジティブな材料です。企業経営の改善が当初の想定以上に進んでいることが、株価に反映されるためです。ただし、市場の期待がすでに利益の上方修正を織り込んでいる場合には、上方修正の発表が「材料出尽くし」となり、株価が一時的に下落する場面もあります。それでも、その後も継続的に利益の上方修正が続けば、株価は利益成長の勢いを改めて評価し、中長期的には上昇基調を維持しやすくなります。

投資実務では、利益予想の修正(変化)を「リビジョン」と呼びます。利益の上方修正は上方リビジョン、下方修正は下方リビジョンです。TOPIX(東証株価指数)を構成する銘柄全体で、上方リビジョンと下方リビジョンの件数を集計することで、市場全体の業績の方向性や勢いを把握することができます。これがリビジョンインデックス(RI)です。

上方修正銘柄が優勢

図表1の青線は、QUICKが算出するリビジョンインデックスの推移を示しています。リビジョンインデックスは週次ベースで企業アナリストによる今期経常利益予想の修正件数を用い、

(上方修正件数-下方修正件数)÷(上方修正件数+下方修正件数)

の計算式で算出し、さらに12週間の移動平均を施しています。TOPIX構成銘柄の中で上方修正が多ければ指数はプラス圏にあり、下方修正が多ければマイナス圏となります。直近の水準は14ポイントと、過去と比較しても高い水準にあり、上方修正銘柄が優勢であることが分かります。

【図表1】今期予想経常利益を用いたリビジョンインデックス(RI)
注1:2022年1月4日から2026年2月2日からスタートする週(2月6日)まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIX構成銘柄
注3:リビジョンインデックス(RI)の計算は予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を12週平均している。算出方法は本文参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

リビジョンインデックスの差と日経平均株価の動きには、一定の連動性が見られる

ここまでは今年度の利益予想リビジョンを見てきましたが、来年度のリビジョンにも着目します。今年度にリビジョンによって利益予想が引き上げられ、その増加分が来年度にも上乗せされる場合、来年度の利益予想も上方修正されることになります。一方、来年度の利益予想が据え置かれる場合、今年度のみのリビジョンにとどまり、利益モメンタムが鈍化する可能性もあります。

来年度に向けても業績拡大が持続的に期待される局面では、今年度だけでなく来年度のリビジョンインデックスも上昇する傾向が見られます。そこで、来年度のリビジョンインデックスから今年度のそれを差し引いた「リビジョンインデックスの差」を算出しました。

図表2はリビジョンインデックスの差を示したものです。グラフがゼロラインを上回っている局面は、来年度のリビジョンインデックスが今年度を上回っていることを意味します。株価はリビジョンだけで決まるわけではありませんが、図表2の矢印で示したように、リビジョンインデックスの差と日経平均株価の動きには、一定の連動性が見られます(グラフ中のオレンジ矢印は2つのグラフの山が概ね一致することを示しています)。

【図表2】今期と来期のリビジョンインデックス(RI)の差と日経平均株価
注1:2022年1月4日から2026年2月2日からスタートする週(2月6日)まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIX構成銘柄
注3:リビジョンインデックス(RI)の計算は予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を12週平均している。算出方法は本文参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

来期予想リビジョンの一段の改善が重要なポイント

さらに図表3では、今年度と来年度のリビジョンを散布図で示しました。足元では、横軸である今年度のリビジョンはプラス方向への動きが強まっている一方、縦軸の来年度のリビジョンはプラスではあるものの、十分に追随しているとは言い切れません。株高の裏付けとして企業業績が伴うためには、今後、縦軸方向への改善が期待される局面といえるでしょう。

衆院選の結果を受けて期待先行で上昇した足元の株価が、さらに上値を伸ばすためには、来期予想リビジョンの一段の改善が重要なポイントとなりそうです。

【図表3】今期と来期のリビジョンインデックス(RI)
注1:2026年12月1日から始まる週から2026年2月2日からスタートする週(2月6日)まで。データサイクルは週次
注2:母数はTOPIX構成銘柄 注3:リビジョンインデックス(RI)の計算は予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を12週平均している。算出方法は本文参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

来期重視で進む業種選別、注目の3業種とは

このように市場全体のリビジョン動向に注目が集まる局面では、物色がより選別的になる可能性が高まります。そこで、業種別の視点から見た注目分野を整理します。

東証33業種についても、今期と来期のリビジョンインデックスを同様の手法で算出しました。図表4は、直近(2026年2月6日から始まる週)の水準をプロットしたものです。

【図表4】業種別に見た今期と来期のリビジョンインデックス
注1: 2026年2月2日からスタートする週(2月6日)の値のプロット
注2:母数はTOPIX構成銘柄に関して、東証33業種別にリビジョンインデックス(RI)を集計
注3:リビジョンインデックス(RI)の計算は予想の経常利益を対象に算出しており、QUICK Workstation Astra Managerの出力値を12週平均している。算出方法は本文参照
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

今年度・来年度ともにリビジョンインデックスがプラス圏にあり、かつ来年度が今年度を上回っている業種は図表中に黄色の背景を施した「銀行業」「卸売業」「証券先物取引業」の3業種です。

以下ではそれらの3業種のポイントをまとめました。

・銀行業:債券価格下落による含み損の影響はあるものの、金利上昇の恩恵が収益改善に寄与。
・卸売業:総合商社を中心に、今年度の資源価格下落による減益の反動が来年度に寄与。
・証券先物取引業:産管理型ビジネスの拡大や個人投資家層の広がりを背景に、業界環境が改善。

リビジョンインデックスを最新データで確認する方法

ここからは補足的な話題です。リビジョンウォッチは計算処理に手間がかかるものですが、比較的簡単に業種のリビジョンの傾向をとらえるものとして、マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」では最新のデータでリビジョンインデックス(RI)を確認することができます。

図表5の青丸印から1週間の水準を見ることができます。そして「1ヶ月の変化」の項目で出力された水準と比較して、足元の水準が改善しているのかを合わせて見ることが大切です。また、業種一覧タブ(図表5の赤丸印)からは業種別のリビジョンインデックス(RI)を確認することができます。

【図表5】リビジョンインデックス(RI)の出力画面(銘柄スカウター)
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― アナリスト予想変化、2026年2月8日時点