先週(1月5日週)の振り返り=一時158円台、高市政権誕生後の円安値を更新
2025年の円安ピークに接近=「歴史的円安」161円も視界に
先週の米ドル/円は金曜日に大きく上昇し、2025年10月の高市政権誕生後の高値である157.8円を上回り、一時158円台を記録しました。この日発表された米12月雇用統計を受けて1月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ見送りの可能性が強まったこと、また高市総理による早期解散・総選挙の可能性に関する一部報道などが米ドル買い・円売り材料になったとされました(図表1参照)。
高値を更新したことで、米ドル/円の次の上値の目処は、2025年の高値である158.8円になります。さらにそれを超えると、次の上値の目処はいよいよ2024年7月に記録した161.9円というここ数年の米ドル高・円安のピークになります(図表2参照)。
大きく変わった可能性のある円安阻止介入を取り巻く状況
2024年7月に記録した161.9円は、1986年以来約38年ぶりの米ドル高・円安だったことから「歴史的円安」と呼ばれました。現状、「歴史的円安」のピークへ、すでに3円程度まで接近したことによって、日本の通貨当局による米ドル売り・円買い介入再開に対して注目度が高くなっているようです。ただし、いくつかの客観指標を比べると、これまで過去に米ドル売り介入が行われた状況と最近ではかなり異なると考えられます。
米ドル売り介入が行われたのは2022年と2024年でした。それぞれは基本的に米ドル/円が、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を3割前後と大きく上回った局面でした。これに対して2025年1月9日時点の米ドル/円は、5年MAを14%上回っていたにすぎません(図表3参照)。
2022年と2024年に米ドル売り介入が行われた米ドル/円が5年MAを3割前後上回った水準は、それまでの米ドル/円の循環的高値となった水準でもありました。過去の代表的な円安局面の終了、1998年の147円、2015年の125円はともに5年MAを3割上回った水準だったのです。米ドル/円上昇がさらに続き、5年MAを4割以上上回ったことは確認できる限りではありませんでした。
以上のようにみると、米ドル/円が5年MAを3割上回った水準は、循環的上昇(米ドル高・円安)の限界圏であり、その状況において米ドル売り介入が行われたことで米ドル高・円安阻止に成功したという面があったのではないでしょうか。そんなふうに考えると、最近はまだ米ドル売り介入で円安が止まる状況ではない可能性がありそうです。
金利差縮小でも円買い反応せず=日本政府の自力の円安阻止厳しい
なぜ、約1年半前の2024年7月には米ドル売り介入をきっかけに161円で終わった円安が、足下では為替介入をしたとしても止まらないのではないかいう状況に変わった可能性があるのでしょうか。
米ドル/円は2024年以降一時的に下落しても、140円を大きく割り込むことはありませんでした。このように2年以上も150円前後の米ドル高・円安圏での推移が続くなかで、2024年7月に125円程度だった5年MAが足下では138円程度まで大きく上昇しました(図表4参照)。
この結果、5年MAを3割上回る水準は、2024年7月には160円程度だったのに対し、足下では180円近くになっています。5年MAを3割上回る水準は、経験的には日本の通貨当局が米ドル売り介入などで「自力」で円安を止めることが可能な円安限界圏でもありました。そのような円安限界圏が、足下では180円程度になってしまう場合、日本政府による「自力」での円安阻止はかなり厳しくなっているのではないでしょうか。
このように米ドル/円を取り巻く環境が大きく変わった一因は、金利差との関係が一因でしょう。日米金利差(米ドル優位・円劣位)は2025年を通じて大きく縮小、仮に2025年1~3月の金利差との関係を前提にすれば、足下の米ドル/円は140円を割れていてもおかしくないところですが、実際には160円に向かう動きとなっています(図表5参照)。金利差縮小でも円高反応が限られる中で、円安阻止は一気に厳しくなっている可能性があるでしょう。
今週(1月13日週)の注目点= 浮上する米景気楽観論、その一方要注意の最高裁判決
金利差と逆行の円安をもたらした一因=ヘッジFの円買いポジション処分
日米金利差変化で説明できない2025年以降の米ドル高・円安を、比較的うまく説明できそうなのがヘッジファンド(以下ヘッジF)の取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションでした。このポジションは、2025年4月末に空前規模の米ドル売り・円買いを記録しました。
円買いポジションが縮小に向かう動きは、基本的に米ドル高・円安に沿って展開しました(図表6参照)。このように日米金利差縮小を尻目に展開した米ドル高・円安をもたらした一因に、ヘッジFの円買いポジション処分に伴う円売りがあった可能性はあるでしょう。
上記の通り、ヘッジFの円買いポジション処分は、2025年12月に入ったところで一巡したようです。そしてこの前後から、米ドル高・円安も足踏みが目立つようになりました。その意味では、米ドル高・円安が一段の拡大に向かうかの鍵を握るひとつに、ヘッジFが2025年から一転して米ドル買い・円売り本格化に動くかということもあるのかもしれません。
ヘッジFは円売りを再開するのか=トランプ政権の通貨政策「代役」に注目
ヘッジFは、2024年までは米ドル買い・円売りを拡大し、むしろ「歴史的円安」の主導役と見られたのに対し、2025年のトランプ政権発足後は米ドル売り・円買い拡大に急転換、ここまでは米ドル買い・円売りへの再転換が確認されていません(図表7参照)。これには、やはり貿易相手国の通貨安を好まないトランプ米大統領の考え方が影響しているのではないでしょうか。
足下の円安は日本政府による自力での阻止がかなり厳しいものになってしまった可能性があります。ただし、トランプ政権の通貨政策の「代役」のようなヘッジFが円売り拡大に動かないようなら、それにはトランプ政権による円安阻止、是正の意向が反映されている可能性もあり、それはひとつの注目点でしょう。
今週(1月13日週)の米ドル/円予想レンジは155~160円
今週はCPI(消費者物価指数)など注目度の高い米経済指標の発表が多く予定されています。すでに1月9日発表の米12月雇用統計を受けて1月FOMCでの利下げ見送りとの見方が強まっています。そして、一部で2025年10~12月期の米GDP成長率が5%以上のプラスになるといった米景気の予想以上の楽観論も出てきたことから、当面の米景気指標発表もそれを後押しし米金利上昇、米ドル買い要因になるかといった観点で注目されるのではないでしょうか。
一方、1月9日にもあるとの見方のあったトランプ関税に対する米最高裁判決は行われず、一部では14日になるとの見方もあるようです。これが違憲となり米国株の暴落をもたらすようなら、基本的には米金利低下=米ドル安・円高要因でしょう。以上述べてきたことを踏まえ、今週(1月13日週)は円安、米ドル安とも大きく振れるリスクが続くとの考え方から、米ドル/円は155~160円で予想します。
