12月8日週はS&P500は-0.63%、ナスダック100は-1.93%、ダウ平均は+1.05%

先週(12月8日週)の米国株市場は、主要3指数で対照的な動きとなり、明暗が分かれる結果となりました。S&P500は12月11日(木)には史上最高値を更新したものの、先週1週間では-0.63%、ナスダック100は-1.93%と軟調に推移。その一方で、ダウ平均は+1.05%としっかりと上昇したのです。

また、小型株は底堅さを維持し、ラッセル2000も12月11日に史上最高値を更新、週間では+1.19%の上昇となりました。テクノロジーを中心にグロース株とバリュー株の間で物色の差が明確に表れた、また小型株が買われて裾野が広がった1週間だったと言えます。

週前半は、FOMC(米連邦公開市場委員会)を控えた様子見ムードがマーケットを支配し、売買はやや手控えられる展開となりました。そして迎えた12月10日(水)、FRB(米連邦準備制度理事会)はマーケットのコンセンサス予想通り0.25%の利下げを実施。織り込まれていた利下げであり、市場にとってはポジティブなサプライズではないものの、イベント通過に伴う安心感が広がるきっかけとなりました。

FOMC通過後は安心感からS&P500が6,901ポイントと過去最高値を更新

今回のFOMCでは、同時に公表された経済見通しで、2026年のGDP成長率が引き上げられた一方、インフレ見通しはやや引き下げられるなど、景気の底堅さとインフレ圧力の後退が同時に示されました。また、2026年の追加利下げについては1回にとどまるとの見通しが示され、市場では「景気悪化を前提とした利下げではなく、調整的な政策対応」と前向きに評価されました。

さらに、パウエルFRB議長が会見で「今後発表される経済データ次第で、利下げのペースについては柔軟に対応していく」と述べたことで、マーケットはこれをハト派的なスタンスの継続と捉え、株価は一時的に反発しました。

ただし、今回の決定では3名の委員が利下げに反対票を投じるなど、FOMC内でも見解の相違が顕在化。今後の金融政策はより一層、経済指標に依存する「データドリブン」な運営となることが強く意識される結果となりました。

FOMC通過後の12月11日には、安心感から株式市場に買いが広がり、S&P500が6,901ポイントと過去最高値を更新。特に、景気敏感株やバリュー株の一角である金融株や素材株が買われ、セクターの広がりを伴った上昇が見られました。テクノロジー一辺倒だった年初の相場とは異なり、相場の牽引役が分散しつつある兆しがうかがえます。

AI関連株に対する警戒感の高まり、投資額の急増が財務への圧力に

しかし一方で、マーケットの楽観ムードに冷や水を浴びせたのがAI関連株に対する警戒感の高まりです。オラクル[ORCL]が発表した四半期決算では、売上は堅調だったものの、急拡大する設備投資と利益率の低下懸念が意識され、失望売りが広がりました。さらに、一部データセンターの開設計画延期報道や、OpenAIとの3,000億ドル規模のクラウド契約をめぐる不透明感がセンチメントを一段と悪化させました。

特に注目されたのは、OpenAIの支払能力に対する疑念が市場に浮上したことで、オラクルの信用リスクが意識され、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドが2008年の金融危機以来の水準にまで拡大した点です。

このニュースは、オラクル単体にとどまらず、AI関連全体への信頼感を一時的に損ねる結果となりました。高成長期待に支えられてきたAIテーマですが、投資額の急増が財務への圧力となりつつある実態が浮き彫りになっています。

金融やディフェンシブセクターは底堅い動き、12月15日週は重要指標「失業率」に注目

一方で、こうしたテクノロジー主導の不安定さを尻目に、金融やディフェンシブセクターは底堅い動きを見せました。特に金融セクターは、ゴールドマン・サックス[GS]が主催した投資家向けカンファレンスで、複数の大手銀行が2026年にかけての強気な業績見通しを示したことが好感されました。

M&Aやオルタナティブ投資の活性化、商業用貸出の回復傾向、さらにはAIを活用した業務効率改善などが収益成長のドライバーとして評価されており、投資家の関心も高まっています。

中でも、バンク・オブ・アメリカ[BAC]は2006年以来の過去最高値を更新し、金利環境がやや緩和に向かう中での金融株復調を象徴する存在となりました。年初来で出遅れ感があった銀行株が、ここにきて本格的に見直され始めている印象です。

このところ政府閉鎖の影響で経済指標が発表されていなかった分、今週(12月15日週)は新規失業保険申請、雇用統計、失業率、CPI、小売売上高などが一気に出てきます。

特に重要な指標は「失業率」です。これはFRBが最も注目しているバロメーターで、最近わずかに上昇しています。さまざまな経済指標をひとつずつこなしていくという、マーケットのボラティリティが高まる週となりそうです。