2025年12月8日(月)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2025年10月分速報

【1】結果:実質賃金はマイナス幅縮小も10ヶ月連続でマイナスとなる 前年同月比0.7%減

2025年10月の名目賃金は、前年同月比2.6%増と、前回9月(改定値)から0.5%ポイント伸びが拡大しました。市場予想を上回る内容であり、主因は基本給にあたる所定内給与は、同2.6%増と前月(改定値)から0.6%ポイント伸びが加速したことがあげられます。サンプル替えの影響を除いた、共通事業所ベースの所定内給与も同様に、前月から0.1%ポイント伸びが加速し、同2.3%増となりました(図表1)。

【図表1】毎月勤労統計調査2025年10月速報値結果
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、所定内給与は事業規模5人以上、調査産業計

10月の実質賃金は、前年同月比0.7%減となり、前回9月の同1.3%減からマイナス幅を縮小しました。物価は3%を超えて推移する中で、名目賃金の伸びが改善に寄与しました。2025年の実質賃金は、10ヶ月連続でのマイナスとなり、物価の減速が待たれます(図表2)。

【図表2】実質賃金の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合)はマイナス表示

【2】内容・注目点:所定内給与はまちまち 2026年の春闘も底堅くなる公算が高い

10月の所定内給与は前月から伸びが加速し、前年同月比2.6%上昇となりました。実質ベースでは、依然マイナスでの推移が続くもプラス圏が目前となっています。(図表3、水色)。

【図表3】所定内給与の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、調査産業計、実質所定内給与は消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合指数)にて算出

一方で日銀も注目するサンプル替えの影響を除いた、共通事業所ベース・一般労働者の所定内給与を確認すると、10月は前年同月比2.2%増と前月から伸びが縮小したことがうかがえます。2%を上回って推移している点はポジティブと考えられますが、2024年から伸びの鈍化が確認できること(図表4、青・矢印)は気がかりで、先行きで伸び悩んで推移する懸念があります。

【図表4】共通事業所ベース・一般労働者 所定内給与の推移(前年同月比、%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成

日銀を含め、賃上げ動向は2026年の春闘に注目が集まっています。現時点で、連合は「賃上げ要求率5%以上」を方針とすると発表しており、3年連続での5%台の賃上げを目標としているようです。そのことから、2026年もある程度堅調な賃上げの推移が見込まれる一方で、賃上げできる企業とそうでない企業の差が2025年よりも出ることが危惧されます。

現に2025年も春闘の賃上げ率は5%を超えた半面、図表4の通り概ね横ばい圏から緩やかに伸びが鈍化しており、国内企業全体で底上げされているとは言い難いでしょう。大企業は経営体力や人材惹きつけ、ブランディングの観点で、ある程度の賃上げが見込まれますが、中小企業が同様に賃上げ拡大をできるかが2026年のポイントと考えています。

【3】所感:冬の利上げは既定路線 その後は慎重な政策運営となるだろう

日銀の植田総裁は、2026年の春闘について、初動のモメンタムを注視していると発言しています。ここまで発表されてきた賃上げ関連の動向を踏まえると、賃上げのモメンタムが弱まっているとは考え難いです。直近の挨拶や講演の場でも、政策金利の利上げを意識させる内容があり、執筆時点の12月8日現在では、12月の金融政策決定会合での利上げは90%弱と大きく織り込まれています。

植田総裁が念押しされているように、現行水準ではあくまで緩和的な金融環境が続くでしょう。先行きにおいても要所を確認しながらの政策運営が見込まれ、政策金利を中立水準ないしは引き締めの水準まで引き上げていくことは、より時間をかけて実施されるものとみています。賃上げに関していえば、上述の通り、中堅・中小企業なども相応の賃上げが実施されており、日本全体として底上げされているかが重要となるでしょう。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太