高市早苗総理の誕生に向けた期待で株式市場は好調です。停滞と構造的な硬直化が指摘されてきた日本の政治ですが、初の女性首相誕生への流れは、政界変革への大きな契機になります。とりわけ改革を期待する外国人投資家の日本株への積極的な投資姿勢が、相場の牽引役となるでしょう。相場が強気のタイミングなので、株式に振り向ける資金を増やしたいと考える方もいるでしょう。あるいは、株式投資を始めようと思う方もいるかもしれません。

株価が低い銘柄の方が、株式パフォーマンスが良いのか?

個別株に投資する際に気になるのが「いくらあれば株を買えるか」という点です。株価が安ければ必要な投資額は少額で済みます。一般に個別株へ投資するには売買する際の最低取引単位分の購入が必要です。これは単元株と呼ばれますが、どの銘柄でも投資するのに最低で100株買う必要があります。例えば1000円の株価なら単元株の100株分買うとすれば10万円が必要です。近年は、単元未満株でも売買の取り扱いは可能とされます。より少額で個別株投資が可能ですが、それでも株価が低いとそれだけ必要投資金額が少なく済みます。

株価が低いということは、投資家が買いやすく株式需要につながるので、株価が上がりやすいかもしれません。伝統的なファイナンス学術分野に「低位株効果」と呼ばれるものがあります。株価が低い銘柄の方が、株式パフォーマンスが良いというものです。今回は低位株効果を検証で確認して、実際の銘柄選別を紹介します。

「低位株効果」は存在する

低位株効果の検証は次のように行いました。

TOPIX(東証株価指数)構成銘柄のうち、比較的売買が行いやすいように流動性を考慮して時価総額が800億円以上の銘柄を母数に設定します。毎月末の時点で、母数のうち株価が低い方から10銘柄までを選んで、均等額を投資した場合の株式パフォーマンスを計算しました。

結果は図表1の青線グラフで示されます。青線グラフは累積リターンを示しており、右肩上がりの形状から、株価の低い銘柄への投資が継続的に収益をもたらすトレンドにあったことがわかります。

また、図表1の赤線グラフは、株価が低い銘柄に均等額を投資したリターンから、母数の対象銘柄のリターンの平均を引いて累積したものです。母数全体の平均リターンに比べて、株価が低い銘柄の株式パフォーマンスがどのように推移してきたかを見たものです。全体に対する超過のリターンを見るものなので「超過パフォーマンス」と呼んでいます。超過パフォーマンス(累積)も基本的に右肩上がりトレンドとなっており、株価が低い銘柄のパフォーマンスは母数全体に比べて上回っていることが確認できます。

【図表1】株価が低い銘柄(低位株)の株式パフォーマンス
注1:データ期間は2020年1月から2025年9月、データサイクルは月次
注2:母数はTOPIX構成銘柄で時価総額800億円以上
注3:今期と来期の営業利益に用いる予想値はアナリストコンセンサスを用いている
注4:毎月末時点で母数のうち株価が低い方から10銘柄に等金額投資した場合の翌月のリターンを算出。絶対パフォーマンスは2019年12月以降を累積している。超過パフォーマンスは対象となる月の母数全体に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて2019年12月以降累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成

「株価が低い」こと自体が株高につながる要因に、低位株の株式パフォーマンスの留意点は?

このような低位株効果の存在について、学術論文などでさまざまな理由が挙げられています。そのなかで筆者が考える最大の理由が「低位株は必要投資額が少ないため投資しやすい」ことです。投資しやすいことが株式需要を高め、株高に貢献するというものです。

ただ、低位株効果のパフォーマンスに留意点もあります。図表1の赤矢印で示した2020年は赤線グラフが右肩下がりを見せ、株価の低い銘柄の超過パフォーマンスが下がりました。

当時を振り返ってみましょう。2020年はコロナ禍の年でした。4月に緊急事態宣言が発令されるなか、新型コロナウィルス感染拡大の景気への影響が分からない状況になりました。特に業績への厳しい見通しで株価が大きく売り込まれた低位株には、将来の回復シナリオが見えにくく、見直し買いが入りにくい時期でした。

その後、2021年に入って、赤線グラフが急激に反発、低位株効果は復活しました。低位株を長期で保有する覚悟があれば結果的に投資効率は悪くありませんでした。しかし投資する際には、こうした有効性の変動のリスクは避けたいところです。

低位株を業績チェックで絞り込み

低位株投資をする際に、低位株効果が落ち込む場面に対処するには、業績面でのチェックが必要です。業績が大きく落ち込んで株安となった低位株を除くためです。実際の基準には足元のROE(株主資本利益率)、ROA(総資産利益率)と予想営業増益率を使います。

重要なポイントは、業績チェックのハードルは、それほど厳しくする必要はありません。低位株効果を享受することが目的なので、業績面で不安が大きい銘柄のみ除外するものです。

具体的な基準は次を用います。
・実績ROE:8.00%以上
・実績ROA:3.00%以上
・今期の営業増益率:3.0%以上
・来期の営業増益率:3.0%以上

そこで、東証プライム上場において時価総額800億円以上、投資金額が10万円以下の銘柄の中から参考銘柄を抽出しました。マネックス証券のウェブサイトで提供している「銘柄スカウター」の10年スクリーニングを用いています。

結果は図表2の9銘柄となりました。投資の参考にしてみてください。

【図表2】スクリーニング結果(投資金額の小さい順)
※東証プライム上場、投資金額:100,000円以下のうち、[指標]実績ROE:8.00%~、[指標]実績ROA:3.00%~、[今期コンセンサス]増益率(営業利益):3.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]増益率(営業利益):3.0%~・3人以上、時価総額800億円以上
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(2025年10月6日時点)

銘柄スクリーニングの条件設定について

最新データを用いて、図表2で解説したスクリーニングを行う場合の具体的な入力項目は以下の通りとなります(図表3)。

【図表3】スクリーニングの条件設定画面(銘柄スカウター)
出所:マネックス証券ウェブサイト 銘柄スカウター(ログイン後 ― 投資情報 ―ツール― マネックス銘柄スカウター ― 10年スクリーニング、2025年10月6日時点)