「円安、低金利容認せず」=米政権の方針と逆行する高市政権の政策

トランプ政権の日本など貿易相手国の為替・金融といったマクロ経済政策への期待については、2025年6月に米財務省が公表した為替報告書の中の見解が分かりやすいだろう。その中で、「トランプ政権は、米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策はもはや容認しないと貿易相手国・地域に警告してきた」ことを確認していた。

「米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策」とは、日本の場合なら「過度な円安、不当な低金利」などが相当するだろう。そうした認識は、2025年10月の高市政権誕生前後でも基本的には変わっていないのではないか。

2025年8月、ベッセント米財務長官はあるメディアのインタビューの中で、「日銀はビハインド・ザ・カーブに陥っているのではないか」、要するに、利上げが後手に回っている、遅過ぎる、つまり「不当な低金利」を続けていることを疑ったような見解を示していた。

では、為替政策についてはどうか。1月23日に日米通貨当局は米ドル高・円安が160円に迫る局面で「レートチェック」、つまり円安けん制に動いたが、これについて一部報道は、日本からの要請ではなく、米経済への悪影響の観点からベッセント長官が主導した可能性を指摘した。「過度な円安」への日本政府の阻止姿勢への不満から、米政府主導で円安阻止に動いたようにも読める動きだろう。

「トラス・ショック」と重ねたベッセント=高市政策を不安視か

以上のことから、2025年6月の為替報告書で示した「米国との不均衡な貿易関係を助長するマクロ経済政策はもはや容認しないと貿易相手国・地域に警告してきた」とのトランプ政権の方針からすると、高市政権誕生後のマクロ政策には、「過度な円安、不当な低金利」も容認するとして、強い不満があるのではないか。

その「本音」を感じさせたのが、1月下旬、スイス・ダボスで行われた片山財務相との非公式会談でベッセント長官が語ったとされた以下の発言だ。「高市首相はこのままではトラスになるか、メイになってしまうのではないか」。

前者は、財源が曖昧な大減税発表で通貨、株、債券「トリプル暴落」の「トラス・ショック」をもたらしたとされた英国の女性首相だが、そうした人物に高市総理を重ねたのは、ベッセント長官の本音が、高市政権の経済政策に対する強い不安、不満である可能性を感じさせるものだろう。

高市経済政策への不満はいつ表面化するか

では、高市政権の為替・金融・財政などのマクロ政策に対する米政権の見方は誤りなのかと言えば、そうとも言い切れない。1月末、高市総理のいわゆる「円安ホクホク」発言は、本音では円安に寛容な認識が変わっていない可能性を改めて感じさせるものだった。

また、2月中旬に行われた対植田日銀総裁会談では、一部報道によると「追加利上げへ難色」を示したとされた。その後、日銀審議委員の交代人事で、いわゆる「リフレ派」がこぞって指名されたことで、金融緩和継続支持の姿勢が変わっていない可能性も改めて認識された。

以上のように見ると、トランプ政権からすると高市政権のマクロ経済政策にはかなり不満があるのではないか。足下では、対イラン政策など安全保障、外交政策などとの総合判断になるだろうが、どこかのタイミングで高市政権のマクロ経済政策へのトランプ政権の不満が具体化されるリスクに注意が必要かもしれない。