原油高で波乱も、徐々に落ち着きを取り戻す展開か

東京株式市場は、イランでの戦争を受けた原油価格の上昇を背景に、調整色を強めている。日本の原油の輸入依存度は94%で、それに用いられるタンカーの約8割がホルムズ海峡を経由している。国内ではインフレ懸念がある一方で、景気減速への警戒感も浮上している。ただ、情勢がこれ以上緊迫しないことを前提にすれば、株価にはある程度織り込まれてきたとみることができそうだ。2月の最高値からの調整で、過熱感は解消した。

6月までの日経平均株価の値動きは5万2000円~5万7000円程度となるのがメインシナリオである。早期決着での原油価格下落なら一段の戻りを試し、さらなる状況悪化なら下値を試す展開を想定する。

株価の下落で値ごろ感。高まりつつある買い余地

原油WTI(ウエストテキサス・インター・ミディエート=油種名)は3月9日前後に一時1バレル120ドル付近まで上昇し、戦争開始前の約65ドルから急騰している。原油運搬の要衝であるホルムズ海峡の封鎖で、流通が滞る懸念が出ているほか、他の産油国もイランの攻撃で減産を余儀なくされるとの観測が要因となっている。

政府のガソリン暫定税率廃止で落ち着いていた価格は再度上昇。石油化学製品にも影響が出るとみられている。政府は原油の輸入量減少に対応し、3月16日から国内の石油備蓄放出を開始したが、需給の改善は限定的だ。国内大手証券会社では、1バレル10ドルの上下は、日経平均で同1000円程度の変動要因とみている。

株価の下落で値ごろ感も出ている。日経平均株価が最高値を付けたのは2月27日の5万8850円。戦争はその週末から始まり、ホルムズ海峡封鎖で原油価格が急伸した3月9日に5万2720円の安値を付けた。2月27日時点の日経平均のPERは20.6倍だったが、3月9日には18.5倍にまで低下した。200日移動平均線とのかい離率は2月27日の28%から、3月9日には13%に縮小している。ファンダメンタルズからは買い余地が高まりつつある。

しかし原油価格の高止まりが続けば、4月下旬から本格化する3月期決算で、企業は2027年3月期の業績予想を慎重にみる可能性が大きい。約1年前のトランプ関税発表では、株価が急落した。当時、2026年3月期は当初2ケタ減益の可能性も示唆された。実際には今期は増益が確実視される。不透明感が後退すれば株価の見直しが進みそうだ。

本格化する高市政権の経済政策、先行投資分野は?

物色動向では基本に立ち返り、政策関連銘柄が有望といえそう。高市内閣による経済政策はこれからが本番だ。高市政権は「危機管理・成長投資」を掲げ、AI(人工知能)・半導体、造船、創薬・先端医療を戦略17分野と決め、積極投資を行う方針だ。3月10日に開催された日本成長戦略会議の第3回会合ではこれを61製品・技術に整理し、さらに先行して検討を進めている製品・技術として27項目を発表している(※)。

通常予算は年度内に成立する見込みで、成立すれば経済を下支えする公算が大きい。また、夏前にも公表される「骨太の方針」には、戦略17分野の具体的な推進策が盛り込まれる見込みである。外部環境が落ち着けば、まず、政策に沿った業界や銘柄が注目されることになりそうだ。
 
戦略17分野の中から、主要な製品・技術等をいくつか挙げると「AI・半導体」では「フィジカルAI(特にAIロボット)」。「航空・宇宙」では「民間航空機」「ロケット・射場」など。「資源・エネルギー安全保障・GX」では「次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池等)」。「コンテンツ」では「ゲーム」などとなっている。

戦略17分野の主要製品・技術に関連する銘柄をピックアップ

「フィジカルAI」

ファナック(6954)

工作機械用NC(数値制御)装置で世界首位。産業用ロボットでも有数。2025年12月には米半導体大手のエヌビディア[NVDA]との協業を発表し、産業用ロボットへのフィジカルAI実装を推進するとしている。2025年の「国際ロボット展」では、工場向けのロボットにAIを搭載することで、ヒトの言葉を理解しながら作業するロボットを展示している。

【図表1】ファナック(6954):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年3月19日時点)

ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)

小型の精密減速機で世界首位。ロボットの関節などを滑らかに動かすには精密減速機が不可欠だ。特に精緻な動きが求められる指の関節部分などは、同社製でないと対応できないとされる。減速機だけでなくモーター、センサーなどの周辺機器を組み合わせたモーション・コントロール技術にも定評。2026年2月27日にスタンダード市場からプライム市場に区分変更。

【図表2】ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年3月19日時点)

「民間航空機」、「ロケット・射場」

三菱重工業(7011)

JAXAと同社が共同で開発を進める「H3」ロケットは日本の基幹ロケット。製造だけでなく、打ち上げ輸送サービス、射場での衛星準備支援、打ち上げ業務まで一貫したサービスを提供している。防衛では戦闘機や護衛艦、潜水艦、ミサイルなどを製造する代表的な存在。民間では米ボーイング機の主翼や胴体を担当。

【図表3】三菱重工業(7011):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年3月19日時点)

「ペロブスカイト太陽電池」

積水化学工業(4204)

軽量で柔軟性があるペロブスカイト太陽電池で世界のパイオニア。屋根やビルの壁面にも設置できることや、原料のヨウ素を国内で調達できるなど優位性がある。2027年4月に100メガワット(MW)の製造ライン稼働、2030年にはギガワット(GW)級の製造ライン構築を目指す。

【図表4】積水化学工業(4204):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年3月19日時点)

「ゲーム」

任天堂(7974)

ゲーム機のハード、ソフトで総合首位。3月5日に世界同時発売したニンテンドーSwitch2向けソフト「ぽこ あ ポケモン」について、世界累計販売本数が発売後4日間で220万本(うち国内100万本)を突破したと発表。主人公は人間の姿に変身した「メタモン」。木や石などを材料にして道具を作り、木の実を集めてポケモンたちと分け合いながら、住みやすい場所を作るというスローライフゲームだ。

【図表5】任天堂(7974):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年3月19日時点)

※第3回日本成長戦略会議資料:戦略17分野における「主要な製品・技術等」(PDF)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/kaigi/dai3/shiryou1.pdf