モトリーフール米国本社 – 2025年9月21日 投稿記事より
金利低下で追い風を受ける3社:アップスタート・ホールディングス[UPST]、ロビンフッド・マーケッツ[HOOD]、S&Pグローバル[SPGI]
米連邦準備制度理事会(FRB)は、9月17日に政策金利を0.25%引き下げました。2025年に入って初めて利下げが行われました。市場では年末までにあと2回の利下げが予想されています。これが実現すれば、2024年と同じく年間3回の利下げとなります。
金利が低下すると、多くの場合、投資家はリスクの高いグロース銘柄や高配当株へ資金を移す傾向があります。もっとも、金利低下は多くの金融株にとって必ずしもプラスだけがあるわけではありません。伝統的な銀行にとっては、低金利が融資活動を促進する一方で、そのローンから得られる純金利収入は減少します。また、低金利下では普通預金や定期預金の魅力も低下しかねません。
しかし、伝統的な銀行以外に目を向ければ、金利が低下することでむしろ成長が期待できる金融銘柄は数多く存在します。今回はその代表格といえる3社をご紹介します。
アップスタート・ホールディングス[UPST]:AIが変える与信審査
アップスタートは、インターネット上で借り手と貸し手を結びつけるプラットフォーム(レンディング・マーケットプレイス)を運営しており、銀行、信用組合、自動車ディーラー向けにローンの審査を行っています。特徴的なのは、従来のような個人信用スコアや年収といった情報だけではなく、人工知能(AI)を使って学生時代の標準テストのスコアや成績平均値(GPA)、過去の職歴といった非伝統的情報を基に、幅広いローンを審査する点にあります。
アップスタートはローンの仲介役にとどまり、同社自身がローンを実行することはなく、利益を伸ばすのに高い金利は必要ではありません。収益のほとんどは、提携している金融機関にローンを紹介することで得られる仲介手数料から生まれています。低金利になればローンの申し込みが増え、手数料をベースとする同社の収入は、利ざやを圧迫することなく収益を拡大できるのです。
アップスタートは2022年と2023年に苦戦しました。金利上昇に伴って、新規ローン需要が減ったためです。しかし、2024年に金利が低下し始め、再び成長が加速しました。今回のFRBによる利下げは、同社のビジネスにとって、さらに強力な追い風になると考えられます。
2024年から2027年にかけて、アナリストによるコンセンサス予想は、アップスタートの収益が年平均36%、調整後利払い・税引き・償却前利益(EBITDA)が同245%成長するとみています。これは、金利低下に加え、ローン審査の自動化が進むことで「スーパー・プライム」と呼ばれる優良な借り手を獲得できるためです。本稿執筆時点で、株価は2026年の予想調整後EBITDAの22倍の水準にあり、この水準の銘柄としては驚異的な成長率です。マクロ経済の環境がさらに改善すれば、株価はさらに上昇する可能性があります。
ロビンフッド・マーケッツ[HOOD]:取引活発化とゴールド会員増加が成長ドライバー
ロビンフッドは、手数料無料の取引を普及させたオンライン証券です。同社の収入源は大きく分けて2つあります。
1つは「ペイメント・フォー・オーダー・フロー」(PFOF)というビジネスモデルで、ユーザーの注文情報を高頻度取引(HFT)業者に販売することで手数料を得ています。2つ目は純金利収入で、これは信用取引における委託保証金融資(マージンローン)や、銀行・証券会社で残高に応じて自動的に資金を移動するスイープ口座から得ています。
FRBの利下げによって、ロビンフッドの純金利収入は減るはずですが、一方で投資家がリスクの高い株式や仮想通貨に再び目を向けることで、取引量の増加が見込まれます。さらに、サブスクリプション型の「ゴールドプラン」に加入するユーザーも増えるはずです。「ゴールドプラン」には様々な特典があり、具体的には利息なしで使える1,000ドルのマージンローン枠、マージンローンに対する割引金利の適用、遊休資金への高金利の適用、課税対象預金や個人退職金口座(IRA)への拠出金に対するボーナス、即時入金の上限額引き上げ、詳細な注文情報へのアクセスなどです。直近四半期では、「ゴールドプラン」の加入者は350万人と、2024年末の260万人から増加しています。
コンセンサス予想では2024年から2027年に、ロビンフッドの収益は年平均22%、調整後EBITDAは同30%の成長が見込まれています。本稿執筆時点の株価は2026年の予想調整後EBITDAの38倍と割安ではないかもしれませんが、ロビンフッドは金利低下でより多くの投資家を引きつけ、成長を続けると予想されます。
S&Pグローバル[SPGI]:金融データと格付けの世界的リーダー
S&Pグローバルは、「フォーチュン100社」の全社、「フォーチュン500社」のほとんどの企業についての金融データ、信用格付け、分析サービスを提供しています。主な顧客は大手銀行、保険会社、企業、大学、機関投資家などで、S&Pのツールを使って財務上の意思決定を行っています。最近では、「スパーク・アシスト」と呼ばれる生成AIコパイロットなど、新たなAI機能を導入し、そうした作業を最適化・高速化・自動化を進めています。
S&Pグローバルと、規模で劣る同業のムーディーズ[MCO]が、この収益性の高い市場でほぼ独占状態を築いています。市場環境にかかわらず顧客がサービスを使い続けることから、S&Pグローバルはしばしば、「エバーグリーン(常緑)銘柄」と呼ばれています。ただし、2023年は金利上昇に伴って企業による社債発行が減少したことから、信用格付け事業の成長は一時的に鈍化しました。
2024年に金利が低下したことで、S&Pグローバルの成長は再び加速しています。コンセンサス予想では2024年から2027年に、収益が年平均7%、調整後EBITDAが同8%で伸びるとみられています。それでも、株価は本稿執筆時点で2026年の予想調整後EBITDAの21倍の水準にあり、バリュエーションは妥当であるように思われます。S&Pグローバルは今後の利下げ局面で恩恵を受けやすい代表的な銘柄の1つと言えるでしょう。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Leo Sunは記載されたどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はムーディーズ、S&Pグローバル、アップスタートの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。
