勤務先で企業型確定拠出年金(企業型DC)や、iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合、自分で商品を選択する必要があります。そのための説明資料も用意されているのですが、DCで用意される説明資料は、証券会社で投資信託を購入するのに比べて、やや物足りないと思うことはありませんか?

DC向けの説明資料はシンプル

DCでは定期預金や保険商品、投資信託の中から商品を選択できます。今回は投資信託を例にみていきましょう。

企業型DCやiDeCoで加入している運営管理機関では、投資信託の商品ごとに「商品の選定理由」のほか、「確定拠出年金向け説明資料」が用意されていることが多いです。ただし、証券会社などの販売金融機関で投資信託を購入するときに読むことになっている「交付目論見書」とは異なり、「確定拠出年金向け説明資料」は一般に2~3ページに以下の項目が箇条書きで記されているだけです。

【確定拠出年金向け説明資料の例】

・投資方針
・主要投資対象
・主な投資制限
・ベンチマーク
・信託設定日
・信託期間
・償還条項
・決算日
・信託報酬
・信託報酬以外のコスト

 

・お申込単位
・お申込み価額
・ご解約価額
・信託財産留保額
・収益分配
・申込不可日
・課税関係
・損失の可能性
・セーフティーネットの有無
・持ち分の計算
・委託会社
・受託会社

一覧表が列記されている感じで、そっけないものが多く、それだけで投信を選んだり、運用状況を確認したりするのは難しいのではないでしょうか。

運用会社のウェブサイトで詳しい情報をゲット

運営管理機関によっては、加入者がログインした後の画面で「投資信託説明書(交付目論見書)」を読める会社もありますが、そうでないケースも多いようです。運用報告書や月次レポートについても同様です。

運営管理機関経由で、投資信託の詳しい情報が得られない場合には、投資信託を設定・運用する運用会社のホームページにアクセスしてみましょう。DC専用の投資信託であっても「交付目論見書」や運用報告書などを読むことができます。

事例1)A国内株式インデックスファンド(DC専用商品)

例えば、A国内株式インデックスファンド(DC専用)の場合、「確定拠出年金向け説明資料」では3ページほどの箇条書きの説明にとどまりますが、交付目論見書では約10ページにわたって図表などを交えてわかりやすく説明されています。運用会社のウェブサイトでは、交付目論見書のほか、過去の運用報告書なども載っています。

事例2)B日本株ファンド(一般販売商品)

アクティブファンドの場合、さらに説明のボリュームは大きくなります。B日本株ファンドの「確定拠出年金向け説明資料」では肝心の投資方針が11行書かれているだけです。これだけではアクティブファンドを選ぶのは難しいかもしれません。目論見書ではファンドの目的や特色、投資先企業の特徴、投資先を選定するプロセスなどが図解も交えて詳しく書かれています。

運用会社のウェブサイトで調べてみると、B日本株ファンドは、DC専用ではなく、一般にも販売されている商品のため、交付目論見書のほか、(より詳しく記載されている)請求目論見書、交付運用報告書、運用報告書、月次報告書などがすべて載っています。

このB日本株ファンドは毎月発行される「月次報告書」では詳細な運用コメントが掲載され、ウェブサイトでは運用担当者(ファンドマネジャー)の動画も視聴できるようになっています。これだけ充実しているファンドは少ないかもしれませんが、運営管理機関だけから入手する情報に比べると、幅がぐんと広がりますし、その商品を選ぶか否か、保有し続けるかどうかを判断する際のヒントにもなるはずです。

証券会社や投資信託協会のウェブサイトも参照可能

運用会社のウェブサイト以外にも、投資信託を取り扱う証券会社のウェブサイトからも交付目論見書や運用報告書などを読むことはできます。また、投資信託協会の「投信総合検索ライブラリー」(「ファンドを探す」のタブから入れます)や、ウエルスアドバイザーなどの投資信託の情報サイトからも投資信託の情報をとることは可能です。確定拠出年金の世界でも、一般に販売されている投信と同様の開示がされるようになるとよいですね。

企業型DCの選択肢がイマイチだったら

ただし、iDeCoは自分で運営管理機関を選択できますが、企業型DCの場合には勤務先がそろえた商品から選択するしかありません。最近はNISAなどを通じて投資する方が増えていることもあり、自社のDCの品ぞろえが不満という声を聞くようになりました。例えば、インデックスファンドの運用管理費用(信託報酬)が高い、投資方針やプロセスが不明瞭で運用成績が芳しくないアクティブファンドばかり、というようなケースです。

この場合、まずは会社(事業主)の担当部署や組合に相談し、運営管理機関が取り扱う商品を良い方向に変えてもらうことを目指してはどうでしょうか。例えば、運営管理機関が取り扱う同タイプのインデックスファンドで運用管理費用(信託報酬)が低い商品があるかもしれません。それと同レベルまで運用管理費用の引き下げを交渉してもらう、新しい商品を導入してもらう、といった対応策が考えられます。

2019年7月から厚生労働省のウェブサイトには、運営管理機関が取り扱う企業型DCの運用商品一覧が公表されています。一覧から運営管理機関名を探し、企業型DCの運用方法をクリックすると、その運営管理機関が取り扱う「企業型商品一覧」などを見ることができます。その中にご自身が希望する条件に合うような、加えてほしいと思える商品があるかもしれません。