2025年7月1日(火)8:50発表
日本 日銀短観2025年4-6月期
【1】結果:2025年4-6月期の日銀短観は横ばい、先行きでは悪化予想

2025年4-6月期の日銀短観における全規模全産業の業況判断DIは、前回1-3月期から横ばいの15%ポイントとなりました。前回の1-3月期時点の先行き予想では米国による関税政策など、不透明感が景況感を下押しし、5ポイント低下が見込まれていたものの、想定よりは業況の悪化とならず、基調は横ばいとなりました(図表1、右)。
翌四半期(2025年7-9月期)の見通しは6ポイント低下が見込まれています。例年通りであるものの、未だ合意に取り付けていない米国との関税交渉などが影響し、先行きの見通しは保守的なものとなりました。

業態、企業規模別に業況判断DIを確認すると、企業規模・業態を問わず2025年1-3月期からほとんどが横ばいとなりました。2025年4-6月期は悪化が見込まれていた中で、持ちこたえたとの見方もできる一方で、先行きについては主に非製造業の悪化が大きいことが見込まれています。
【2】内容・注目点:設備投資は持ち直し 需要は旺盛

2024年度の最終的な設備投資は前年度比7.5%増となりました。その前の2年間と比べると低下となるものの、堅調さがうかがえる内容です。また、2025年度の設備投資計画が更新され、前回の2025年1-3月期の前期比0.1%増から持ち直し、同6.7%増と平年並みの設備投資計画が示されました。トランプ米政権の政策は懸念事項であることは間違いないものの、「TACOトレード」と揶揄されるように、あらかじめ企業側も最終的な妥結を見越して、設備投資計画を上方修正していると考えられます。

業態・企業規模別に設備投資計画を確認すると、2024年は大企業、中小企業業態問わず10%程度で着地となりました。中小の製造業は前年(2023年)から持ち直し、設備投資が進んだことがうかがえます。2025年の計画も上方修正が確認され、設備投資需要の旺盛さは引き続き堅調であるものと考えられます。
【3】所感:企業の物価見通しはクリアも今年の利上げは慎重か

短観にて発表される企業の物価見通しも引き続き、2%を超えて推移しており、ここ数年はある程度、日銀のターゲットを超えてアンカーされていることがうかがえます。足元では日銀による政策金利の引き上げは慎重な姿勢を見せており、執筆(7月1日)時点におけるOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)から読み取れる利上げ確率は、年末時点で5割程度と2025年の追加利上げの可能性も半々といったところです。期待インフレとされるブレークイーブンインフレ率などは2%を下回っており、植田総裁の言葉でいえば、このあたりの指標がもうワンノッチ上昇が見られれば、利上げの確度が高まると考えられるでしょう。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太