2026年3月13日(金)日本時間21:30発表
米国 2026年1月PCE価格指数、他

【1】結果:2月のCPI前年比は横ばいも インフレ指標はまちまち

2026年2月の米・消費者物価指数(CPI)は、ヘッドラインが前年同月比2.4%上昇と市場予想に一致しました。食品・エネルギーを除いたコア指数(コアCPI)も、同2.5%上昇と市場予想に一致しました。2指数はいずれも、1月から前年比伸びは横ばいとなりました。一方で、2026年1月のPCE価格指数は同2.8%上昇で伸びがわずかに減速、食品・エネルギーを除いたコア指数は同3.1%と前月から横ばいで、市場予想には一致しました。前月と同様に、指標間の乖離が見られる状況が続いています(図表1)。

【図表1】米コア物価指数の推移(前月同月比%)
出所:米労働省労働統計局、米商務省経済分析局よりマネックス証券作成 ※コアPCE価格指数のみ季節調整値

【2】内容・注目点:原油高を受け期待インフレ率の上昇が見られる

CPIとPCE価格指数の乖離は前月の同レポート(【米国】1月CPIは減速も、発表ラグのあるPCEやPPIに不安が残る内容)で指摘した通りです。乖離自体が必ずしも問題となるわけではありません。また足元では、直近のデータよりも先行きの物価動向のほうが、市場の関心事と言えます。

2月28日に米国・イスラエルがイランへの攻撃を開始しました。中東情勢の緊迫化から、交通の要衝であるホルムズ海峡が封鎖されたことで、その間にWTI原油先物が100ドルを上回るなど急騰しています(図表2)。金融政策運営の観点で注目されるインフレ動向について、足元では、市場関係者やFRB高官が過去数ヶ月の実績データ以上に、原油高を起点とする先行きの物価高騰を危惧している状況です。

【図表2】WTI原油先物価格の推移
出所:ブルームバーグよりマネックス証券作成

実際に期待インフレ指標も、イラン攻撃が始まった2月28日以降、上昇しています。ブレイクイーブンインフレ率は、市場が予想する期待インフレ率であり、足元では約1年ぶりの水準まで上昇しています。期待インフレ率の上昇は、人々が将来の物価上昇を予想していることを示唆します。さらに、価格転嫁などを通じて、実測される消費者物価(CPIなど)にも波及していくとされています。

【図表3】5年ブレイクイーブンインフレ率の推移
出所:セントルイス連銀よりマネックス証券作成、データは2026年3月13日まで。

市場の期待インフレ率に加え、消費者の期待インフレ率も上昇が意識されます。ミシガン大学が発表した消費者信頼感指数では、3月の1年後期待インフレ率は3.4%となり、前月から横ばいでした。しかし、中身をみると中東情勢の悪化が消費者の期待インフレを押し上げていることが示唆されます。なお、同調査は2月17日から3月9日に実施されたものです。

イラン攻撃が開始された3月以降に集計されたサンプルでは、ガソリン価格の上昇幅や1年先の期待インフレ率が、2月28日までに調査されたサンプルよりも高かったとされています(図表4)。上述の通り、期待インフレが実測されるCPIなどに波及する懸念があり、緩やかながらもディスインフレ基調で推移していた米経済にとって、期待インフレの上昇は向かい風と言えるでしょう。インフレの再燃は、FRBの利下げを遅らせるどころか、場合によっては利上げによりインフレ鎮静に追われる可能性も懸念されます。
 

【図表4】ミシガン大学期待インフレ指標
出所:ミシガン大学よりマネックス証券作成

【3】所感:3月FOMCでは政策金利の据え置き見込み/中東情勢の緊迫化が続けば年内利下げに黄信号

今週(3月16日週)は3月18日から19日にかけて、FOMC(米連邦公開市場委員会)が開催予定です。市場は、今会合での利下げは見送られ、政策金利の据え置きを予想しています。また、中東情勢の緊迫化に伴う原油高を受け、FOMCメンバーのインフレ見通しに変化があるかが注目されます。当然ながら、直近の情勢はインフレ予想を押し上げる材料であり、これがどれほど他の財やサービスに波及するかが焦点となります。

米国はシェール革命以降、産油国へ転換しています。そのため、日本のようなエネルギー輸入国と比べると、原油高の影響は相対的に小さいと考えられます。もっとも、市場の利下げ期待は後退しています。上述の通り期待インフレ率の上昇が各所で確認され始めていることから、FOMCメンバーも緩やかな物価上昇圧力を意識しなければならない局面でしょう。

事態の終結に向けては政治動向が注目されますが、トランプ米大統領の発言は二転三転する傾向があり、短期に終結する可能性が高いとは考えられず、長期化する可能性も相応にあるとみています。不確実性の高まりは、2025年の相互関税の局面でもみられたように、データを重視するFRBのアクションを遅らせることにつながり、この場合には、FRBは年内追加利下げに踏み切れなくなると懸念しています。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太