2026年3月6日(金)日本時間22:30発表
米国 2026年2月雇用統計、他

【1】結果:雇用者数、失業率ともに市場予想に反し悪化 医療セクターの雇用減は一時要因も

2026年2月の非農業部門雇用者数は前月比9.2万人減となり、市場予想の5.5万人増に反して雇用の伸びが減少しました。また、失業率は4.4%と前回(1月)から0.1%ポイント上昇し、労働市場の悪化が示唆されました。

非農業部門雇用者数が市場予想に反し減少となったことで、株式市場にはサプライズとなりましたが、中期的には雇用者数の下落トレンドは2025年から続いています(図表1-1)。雇用の弱さが以前から続いている点は変わらず、それが今回の結果で再び意識されるものとなりました。

【図表1-1】非農業部門雇用者数の長期系列(前月差、季節調整値)
出所:米労働省労働統計局、トリム平均は外れ値影響を除くため上下5%のデータを除いた平均値

詳細をみると、2026年2月は製造業・サービス業・政府部門のいずれも減少しました(図表1-2)。ここまでの雇用者の伸びを下支えしていた「医療・教育」セクターの雇用者が減少しました。もっとも、医療関連の雇用減少の一部は、米医療保険ネットワーク運営大手カイザー・パーマネンテで働く医療従事者によるストライキの影響が指摘されており、一過性の減少であるとの見方もされています。そのほかのサービスは5ヶ月連続で雇用減となっており、なかでも情報技術は過去1年で平均5,000人の雇用が減少しています。

【図表1-2】非農業部門雇用者数の推移(前月差、季節調整値)
出所:米労働省労働統計局よりマネックス証券作成

失業率は小数点以下2位までの数値では4.44%と前回から0.12%ポイント上昇しました(図表2)。また、トランプ米政権下で進められている不法移民の取り締まり強化の影響もあり、米国の人口が下方修正されたことによって、労働参加率と就業率が低下しました。

【図表2】失業率・就業率・労働参加率の推移(季節調整値、%)
出所:米労働省労働統計局よりマネックス証券作成

先行きの米労働市場、とりわけ非農業部門雇用者数は今回のように前月比減少することもありつつ、小幅な上昇トレンドが続く見通しで、この先悪化が続いていくとは想定していません。

理由としては、求人の高頻度データを確認すると、足元では求人数の下げ止まりも示唆されるほか(図表3)、各連銀が公表するサーベイデータを平均化した雇用指標では製造業・非製造業ともに先行きの雇用環境の改善が期待できるためです(図表4)。

【図表3】求人数の推移
出所:米労働省労働統計局、Indeedよりマネックス証券作成
【図表4】主要連銀サーベイデータによる雇用関連指標の合成指数
出所:ニューヨーク、リッチモンド、ダラス、フィラデルフィア、カンザスの連邦準備銀行よりマネックス証券作成。サービス6カ月先のみフィラデルフィア連銀は含まない。

もっとも、前回の米雇用レポート「1月の雇用統計 雇用は市場予想を上回るも労働市場は決して強いとは言えない」でも指摘したように、人工知能(AI)による労働代替や米政権の移民取り締まり政策が雇用の下押し圧力となるでしょう。これらの要因が、緩やかな労働回復の動きと重なることで、米国の労働市場は一進一退の推移が見込まれます。

【3】所感:米国内のインフレ再加熱はスタグフレーションにつながる可能性

来週3月17・18日にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催される予定です。本稿の執筆時点(2026年3月9日時点)では、市場は9割以上の確率で、政策金利の据え置きを見込んでいます。今回の雇用統計は労働市場の悪化を示しました。しかし、物価の上振れリスクもあるため、FRB(米連邦準備制度理事会)は追加利下げを判断しづらい状況にあるでしょう。

雇用自体は、低速な成長を続けると筆者はみています。足元では、中東情勢の緊迫化から原油相場の急騰がみられ、日本含めグローバルにインフレ圧力となる懸念があります。米国内のガソリン価格が上昇しているというニュースも見られます。インフレが再加熱すれば、追加利下げを遠のける材料となるでしょう。この場合には、物価上昇と雇用の伸び悩みが同時に起こり、ひいてはスタグフレーション・景気後退懸念まで意識されると考えられます。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太