2026年3月9日(月)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2026年1月分速報
【1】結果:実質賃金は13ヶ月ぶりにプラス転換 所定内給与の伸びが寄与
2026年1月の名目賃金は、前年同月比3.0%増と前回2025年12月(改定値)から0.6%ポイント伸びが加速しました。同2.4%を見込んでいた市場予想を大きく上回りました。基本給にあたる所定内給与が同3.0%増と伸びが加速したほか、ボーナスなどにあたる特別給与も同3.8%増となりました。サンプル替えの影響を除いた、共通事業所ベースの所定内給与は同2.2%増と概ね横ばい圏での推移となっています。
名目賃金が再び3%台に大きく上昇したことに加え、物価指標が2%を割り込んだことで、実質賃金は前年同月比1.4%増と2024年12月以来、13ヶ月ぶりにプラスとなりました。また、ヘッドラインの消費者物価指数(総合指数)にて試算された実質賃金は同1.6%増と2ヶ月連続でプラス推移となりました。従来の実質賃金を試算する際に用いられる消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合指数)は同1.7%上昇と2025年12月から0.7%ポイント伸びが鈍化しました。
【2】内容・注目点:先行きで物価は減速基調が続く見通し
今回の毎月勤労統計調査の結果では、物価の減速のみならず、名目賃金が3%増と賃金サイドの上振れも実質賃金のプラスに寄与しました。物価の減速という、いわば外部環境に頼ることなく、賃金サイドで上昇が確認できたことはポジティブに評価できる材料と言えるでしょう。実質ベースの所定内給与もプラスに転換しており、家計から見れば物価考慮後で給料の伸びを実感できる水準とみなせます(図表3)。
より保守的な見方をすれば、毎月勤労統計調査は調査対象のサンプル替え影響が大きく出るとの指摘もあり、所定内給与の3%の伸びは一過性のものである可能性が懸念されます。現に、そのサンプル替えの影響を除いた共通事業所ベースの同指標は前年同月比2.2%増と横ばい圏の推移であり、伸びが加速してきたとは判断しがたいものです。
そのため、今回のデータのような実質賃金が大きくジャンプするといったケースは先行きでも想定できず、緩やかな成長に回帰していくものとみています。足元では、2026年3月5日に、2026年春闘の要求集計結果が公表されました。その中で、賃上げ要求は平均5.94%と前年並みの水準であり、先行きにおいても、ある程度賃上げが達成されていく見込みが高いと考えています。
【3】所感:実質賃金プラスにより消費主体の経済に期待
足元の局面では、賃金の上昇モメンタム以上に原油高を起点としたコストプッシュ型インフレの再燃が懸念されます。実際に、本稿を執筆した2026年3月9日にはNY原油先物が前日比20%以上も上昇し、一時110ドル台まで上げるなど、波乱含みの展開となっています。前月末(2026年2月末)比では50%以上の急騰です。この急騰は行き過ぎのようにも感じられますが、この状況が長引けば、エネルギーの輸入依存度が高い日本の輸入物価、ないしは消費者物価に上昇圧力がかかり、本稿で取り上げた実質賃金のプラス推移も遠のく可能性が出てくるでしょう。
エネルギーの供給網は、米国が産油国に転換するなど、過去と比較すると様相が異なるもので供給ショックが起こる可能性は以前よりも低いと想定しています。しかし、先物市場の価格は戦争の長期化といったリスクシナリオを織り込んでいる部分が見られ、先物価格の上昇によって現物価格が上昇するケースが想起されます。原油価格の上昇は、数ヶ月程度のラグをもって国内の物価に波及していくと考えられ、イラン情勢次第で2026年の4・5月に日本のインフレが再び3%台といったシナリオも描かれます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
