ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]、医薬品・医療機器の両部門が堅調

ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]が発表した2025年1-3月期決算は売上高が前年同期比2.4%増の218億9300万ドル、純利益が3.4倍の109億9900万ドルでした。調整後EPS(1株当たり利益)は2.77ドルで、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)がまとめた市場予想の2.59ドルを7.0%上回っています。

売上高が小幅に増える中、売上原価が13.0%増の73億5700万ドルに膨らみ、粗利益率は悪化しましたが、販売費や研究開発費を抑制し、利幅が広がりました。さらにその他収入として73億2100万ドル(前年同期は24億400万ドルの支出)が加わり、最終利益が一気に拡大しています。特別要因を除く調整後純利益は1.9%増の67億600万ドルでした。

事業別売上高:がん治療薬が好調、免疫疾患役は低調

事業別では医薬品部門の売上高が2.3%増の138億7300万米ドルと堅調でした。分野別の売上高はがん治療薬が17.9%増の56億7800万ドルと好調です。特に主力の抗がん剤である「ダラザレックス」が20.2%増の32億3700万ドルと伸び、全体をけん引しています。代謝・循環器疾患治療薬は22.2%増の10億1300万ドルと順調に伸びました。

一方、免疫疾患の治療薬は12.7%減の37億700万ドルと低調で、特に「ステラーラ」が33.7%減の16億2500万ドルに落ち込んでいます。精神・神経疾患治療薬は8.7%減の16億4700万ドル、肺高血圧症治療薬が8.7%減の10億2500万ドル、感染症治療薬が2.3%減の8億200万ドルに縮小しています。

医療機器部門は売上高が2.5%増の80億2000万ドルです。治療分野別では心血管疾患が16.4%増の21億300万ドルに伸びた半面、整形外科が4.2%減の22億4100万ドル、医療外科が0.8%減の23億9600万ドルにとどまっています。

予想売上高を上方修正

同社は2025年12月通期のガイダンスで、売上高の予想を916億-924億ドルに設定し、2025年1月時点の予想である909億-917億ドルから上方修正しました。統合失調症の治療薬「カプリタ(ルマテペロン)」で知られるイントラ・セルラー・セラピーズの買収完了を反映させています。

ホアキン・デュアト最高経営責任者(CEO)は、トランプ大統領が主導する相互関税について、医薬品のサプライチェーンに混乱が生じる点を挙げ、米国で医薬品や医療機器の生産能力を引き上げるには税金の優遇措置がより効果的との見方を示しました。

【図表1】ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表2】ジョンソン・エンド・ジョンソン[JNJ]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年4月18日時点)

バンク・オブ・アメリカ[BAC]、株式市場の乱高下で市場部門好調

バンク・オブ・アメリカ[BAC]が発表した2025年1-3月期決算は売上高に相当する純営業収益が前年同期比6.6%増の273億6600万ドル、純利益が10.8%増の73億9600万ドルとなりました。EPS(1株当たり利益)は0.90ドルで、LSEGがまとめた市場予想の0.82ドルを9.9%上回っています。

米国6大銀行の一角

同社は米国の6大銀行の一角に位置づけられています。6大銀行と一口に言ってもそれぞれに特色がありますが、商業銀行型と投資銀行型に大別できます。

例えば、モルガン・スタンレー[MS]は2024年12月期の純営業収益に占める純金利収入の割合が、わずか13.9%にとどまる典型的な投資銀行です。一方、シティグループ[C]はこの割合が66.7%に達しており、商業銀行型と言えそうです。

バンク・オブ・アメリカはこの割合が55.0%で、ウェルズ・ファーゴ[WFC]の57.9%とジェイピー・モルガン・チェース[JPM]の52.1%の中間に位置しています。バンク・オブ・アメリカは、リーマンショックが起きた2008年に三大投資銀行の一角を占めていたメリルリンチを買収し、投資銀行部門を強化しています。

グローバル・マーケッツ部門が好調

2025年1-3月期の業績では純金利収入が2.9%増の144億4300万ドル、非金利収入が9.6%増の129億2300万ドルと着実に伸びました。

事業別ではグローバル・マーケッツ部門が好調で、純営業収益が11.9%増の65億8400万ドル、純利益が13.1%増の19億4900万ドルと1割超の増収増益でした。トランプ大統領の就任後に株式相場が乱高下する中、証券売買の機会が増えたようです。トレーディング収益は株式が16.7%増の21億8200万ドル、債券・為替・商品(FICC)が4.7%増の34億6300万ドルに達しています。

【図表3】バンク・オブ・アメリカ[BAC]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表4】バンク・オブ・アメリカ[BAC]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年4月18日時点)

ブラックロック・ファンディング[BLK]、調整後純利益が20%増

世界最大の資産運用会社、ブラックロック[BLK]が発表した2025年1-3月期決算は営業収益が前年同期比11.6%増の52億7600万ドル、純利益が4.0%減の15億1000万ドルでした。調整後EPS(1株当たり利益)は11.30ドルで、LSEGがまとめた市場予想の10.14ドルを11.4%上回っています。

投資助言・管理の手数料収入が17.0%増の42億4400万ドルに達し、営業収益が順調に伸びましたが、人件費や運用費用、一般管理費、減価償却費などの増加が利益を圧迫しました。一方、無形資産の減価償却費などの特別要因を加減した非GAAP(米国会計基準)の調整後営業利益は14.5%増の20億3200万ドル、調整後純利益は20.2%増の20億3200万ドルと好調です。

2025年3月末時点の運用資産総額は11兆5839億ドルで、前年同期比で10.6%増えました。内訳は「iシェアーズ」ブランドを軸に展開する上場投資信託(ETF)が1.7%増の4兆3028ドルと着実に拡大しています。

資産運用における債券投資の割合が上昇

個人投資家の運用資産は0.8%増の1兆229億ドルと小幅に増えています。トランプ政権の誕生を受けた投資家の警戒感や株価の乱高下を受け、株式が小幅に減る半面、債券投資が拡大しています。

年金、基金、財団、公的機関、金融機関などで構成する機関投資家向けのビジネスでも資産運用に占める株式の割合が小幅に低下し、債券投資の割合が上昇しています。全体の運用資産は1.1%減の5兆3277億ドルで、内訳はアクティブ運用が0.9%増の2兆1552億ドル、インデックス運用が2.4%減の3兆1725億ドルでした。

ラリー・フィンク会長蒹最高経営責任者(CEO)は業績発表資料で、「顧客との結びつきがかつてないほど強固になっている」とコメントしています。具体的な成果として買収効果を除く手数料収入の自律成長が6%に達し、2021年以降で最高になった点を挙げました。

【図表5】ブラックロック[BLK]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表6】ブラックロック[BLK]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年4月18日時点)

オムニコム・グループ[OMC]、売上高の自律成長率が3.4%と堅調

広告・マーケティング事業を手掛けるオムニコム・グループ[OMC]が発表した2025年1-3月期決算は売上高が前年同期比1.6%増の36億9000万ドル、純利益が9.7%減の2億8800万ドルでした。調整後EPS(1株当たり利益)は1.70ドルで、LSEGがまとめた市場予想の1.62ドルを5.0%上回っています。

売上高は買収効果などを除く自律成長率が3.4%と堅調です。自律成長率は売上高の規模が大きいメディア&広告部門が7.2%に達し、けん引役になっています。精密マーケティング部門は5.8%増とプラスでしたが、広報部門が4.5%減、ヘルス・ケア部門が3.2%減とマイナスになっています。

オムニコム・グループが決算資料で自律成長率に焦点を当てた背景には、大型の企業統合・買収(M&A)が控えているためとみられます。同社は2024年12月、大手広告会社の米インターパブリック・グループ[IPG]の買収で合意しました。

このM&Aが実現すれば世界最大級の広告会社が誕生します。オムニコム・グループは決算資料の中でM&Aが2025年下半期に完了するという従来の見方を維持しています。

【図表7】オムニコム・グループ[OMC]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表8】オムニコム・グループ[OMC]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年4月18日時点)

ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス[UAL]、通期予想EPSを据え置き

ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス[UAL]が発表した2025年1-3月期決算は純利益が3億8700万ドルとなり、1億2400万ドルの純損失を計上した前年同期から黒字に転換しました。売上高は前年同期比5.4%増の132億1300万ドルです。調整後EPS(1株当たり利益)は0.91ドルで、LSEGがまとめた市場予想の0.76ドルを20.2%上回っています。

国際線が好調で、大西洋路線のRASM(有効座席マイル当たり収入)が4.7%増、太平洋路線のRASMが8.5%増とそろって伸びています。旅行需要が復調する中、輸送能力を4.9%増強した効果が表れています。

決算発表時のガイダンスでは2025年12月通期の調整後EPSを11.50-13.50ドルと予想し、今年1月に発表した予想を据え置きましたが、景気後退時のシナリオとして7.00-9.00ドルの予想を新たに加えました。また、2025年4-6月期の調整後EPSについては3.25-4.25ドルと予想しています。

【図表9】ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス[UAL]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表10】ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングス[UAL]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2025年4月18日時点)