日本の長期金利にも米金利同様下落圧力が強まる

国内金利が大きく変動しています。米金利は年初来で低下傾向にある一方、国内の10年金利は日銀の利上げ期待を背景に上昇し、一時は1.6%に迫りました。しかし、トランプ政権による関税発動を受けて、米金利と同様に下落圧力が強まっています。

【図表1】日米10年金利の年初来推移
出所:Bloomberg

植田日銀総裁はこれまで、国内経済への自信を示す一方で、海外の不確実性には慎重な姿勢を取ってきました。しかし、足元では国内外の両面で不安が強まりつつあります。国内では、直近2月の賃金指標が鈍化しており、春闘の結果が反映される夏ごろまでは、賃金の伸びが停滞するリスクがあります(4月7日レポート:【日本】2月の実質賃金はマイナス幅を縮小も2ヶ月連続で下落)。

【図表2】所定内給与の推移(前年同月比%)
出所:厚生労働省よりマネックス証券作成、調査産業計、実質所定内給与は消費者物価指数(持家の帰属家賃除く総合指数)にて算出

関税スタンス変化なければ米国経済下押し圧力が長期化する可能性

一方、海外ではトランプ政権による関税発動が懸念材料です。今回は2018年時よりも規模が大きく、インフレへの影響は一時的にとどまると見られるものの、その不透明感が企業の設備投資を抑制し、経済への下押し圧力は長期化する可能性があります(図表3、4)。

【図表3】米国の平均実効関税率の推移(%)
出所:Yale Budget Lab
【図表4】米GDPへの下押し圧力の試算(%)
出所:Yale Budget Lab

日銀の利上げスタンス、軟化の兆し

7日の日本銀行支店長会議では、関税政策が賃金と物価の好循環に対するリスク要因として言及されました。このような環境下で、日銀の年内利上げ見通しは0.3回まで修正されています。国内外の停滞リスクが高まる中、市場の不安定さも重なり、当面は利上げに踏み切れない状況が長期金利を抑制すると見込まれます。これにより、銀行株の相対的な魅力はやや低下する一方で、緩和的な金融政策が経済全体にプラスの効果をもたらす側面もあります。

米国市場の動向をみると、株式市場ではボラティリティが高まっている一方、クレジットスプレッドに見る債券市場は、歴史的にも、また株式市場と比較しても未だ落ち着いた動きを見せています(図表5)。これは、投機的な動きが先行しやすい株式市場が先に反応している状況であり、関税問題が継続すれば、今後はその影響が実体経済にどのように波及するかを見極める局面に入っていくでしょう。

【図表5】ボラティリティとクレジットスプレッドの関係
出所:Bloomberg

2025年初来、日米金利は連動性に乏しい状況が続いていましたが、世界的なリスク認識の広がりを受け、日銀の利上げスタンスも軟化の兆しが見え始めています。今後は日米金利の連動性が回復に向かい、国内の金融政策も海外動向により強く左右される展開が予想されます。こうした中、長期金利の上昇圧力は和らぎ、債券への投資需要の高まりを通じて、金利には低下圧力がかかると見込まれます。