2025年4月18日(金)8:30発表
日本 消費者物価指数(全国)2025年3月分

【1】結果:米価格の上昇止まらずコアコアCPI(生鮮食品・エネルギーを除いた総合指数)も3%に近い水準に

【図表1】2025年3月の全国消費者物価指数の結果
出所:総務省よりマネックス証券作成

2025年3月の全国消費者物価指数は、ヘッドラインである総合指数が前年同月比3.6%上昇と、前回2月から伸びがわずかながら減速する結果となりました。生鮮食品は減速傾向であるものの前年同月比13.9%(前回2月:同18.8%)上昇と高く、ヘッドラインの高止まりに寄与しています。

【図表2】コアCPIの寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成

生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)は、同3.2%の上昇となり、こちらは伸びの加速が確認されました。エネルギーは一部に政府による補助金の効果も寄与し、同6.6%(前回2月:同6.9%)と伸びが鈍化する一方で、生鮮食品を除いた食料がコア指数を押し上げています。

食料は、米類が同92.1%上昇と過去最大の伸びとなる等、依然として米価格の高騰が続いている様子です。変動性の高い生鮮食品・エネルギーを除いた総合指数(コアコアCPI)は同2.9%と0.3ポイント伸びが加速となりました。コアコア指標では、外食等サービスのインフレが確認され伸びの拡大につながりました。

【図表3】コアCPI構成品目 前年同月比上昇・下落品目数の割合(レンジ別、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成

上昇品目・下落品目を見ると、コアCPIを構成する522品目のうち3月は414品目が上昇、35品目が下落、73品目が変わらずとなりました。下落品目の割合は低下する一方で、4%以上上昇する品目は3割を超えており、一部の品目のインフレが顕著であることが示唆されます(図表3)。

【2】内容・注目点:サービスCPIは外食が寄与し伸びが加速

【図表4】サービスCPIの寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成

図表4の通り、人件費とも関連の深いサービスCPIは前年同月比1.4%上昇と、前回2月から0.1%ポイント伸びが加速しました。外食や宿泊費等が含まれる教養・娯楽が上昇に寄与しており、賃上げへの波及も期待される内容としてポジティブに捉えられるでしょう。

賃金動向も、足元の春闘の集計速報(4月17日公表、第4回回答集計)では、平均賃上げ率は5.37%と前回集計からはわずかに低下するも、2024年の第4回時点(同5.20%)を上回る内容となっており、サービスCPIにも上昇余地があると考えられるでしょう。

【図表5】食料の推移(前年同月比、%)
総務省よりマネックス証券作成

もっとも外食については、足元の食料価格高騰が転嫁されていると考えられ、単に仕入れ価格の増分を価格転嫁し、人件費分は据え置きといったケースがあることには注意が必要でしょう。顧客離れ等が懸念され、消費者向けの製品やサービスでは価格転嫁がしにくいといった声も聞かれます。しかし、今回の総務省の発表では値上げの理由について、「人件費のため」といった回答もあったとしています。より人件費への余地を残すためにも、食料価格の落ち着きが待たれます。

【3】所感:CPIだけを見れば利上げを後押しする内容だが、今の市場のフォーカスは関税政策

今回のCPIの結果は、サービスにも上昇が確認され、本来であれば日銀の利上げを後押しする内容であったと考えられます。しかしながら、足元の米政権による関税政策といった不確実性が大きい中での利上げは実施され難いでしょう。現に、執筆時点(4月18日時点)のOIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)からみる利上げ確率は、5月時点では1.2%、7月時点で27.3%と、市場は先行き2会合での利上げに懐疑的な様子です。

日米の関税交渉が進展していることは不確実性の緩和に貢献すると考えられますが、日米間だけでなくグローバルな景気後退懸念等が払しょくされない限り、利上げのリスクは小さくないでしょう。現時点では、年内での利上げは実施し難いものと推測しています。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太