記録的な対円での米ドル売り傾斜の反動はありそう

4月14日、米10年債利回りは比較的大きく低下し、それに伴い日米10年債利回り差(米ドル優位・円劣位)が縮小する中で、米ドル/円は一時142円台前半まで下落した(図表1参照)。このような日米金利差縮小で米ドル/円が下落するという金利差と米ドル/円の関係が順相関となったのは、やや久しぶりのことだ。

【図表1】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

トランプ米大統領が4月2日に相互関税を発表してから間もなく米金利は急騰し、それに伴い日米金利差は急拡大するところとなったが、米ドル/円はそれを尻目に下落を大きく拡大した。つまり先週(4月7日週)までは、金利差と米ドル/円の関係は逆相関となっていたわけだ。

為替市場は対円で大きく米ドル売りに傾斜している可能性

振り返ると、最近の米ドル/円は米金利が低下し、金利差が縮小した時だけでなく、米金利が上昇し金利差が拡大した時も下落するように、急に「買われる理由」が少なくなったことが分かる。かつて「トランプ・トレード」と呼ばれ、人気を集めた米ドル買いへの評価が大きく変わり始めていると言えそうだ。

ただそうした中でも、米ドルが「買われる理由」の1つはポジション調整ではないか。特に1月の158円から一時142円割れ近くまで米ドル安・円高が広がる中で、為替市場は対円で大きく米ドル売りに傾斜している可能性が高く、その修正に伴う米ドルの買い戻しはやはり不可避ではないだろうか。

4月8日現在、円の買い越しは14万枚

CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の対米ドル・ポジションを見ると、4月8日現在で円の買い越しは14万枚で、ユーロの5万枚、英ポンドの1万枚などと比べてみると突出して大きくなっている(図表2、3、4参照)。過剰な円買いリスク・テークの反動は、急に少なくなった米ドルが「買われる理由」の1つと考えられる。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表3】CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
【図表4】CFTC統計の投機筋の英ポンド・ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

円はリスクオフでも、さらに買われる余地は限られる

「トランプ・ショック」と呼ばれたリスクオフ局面で、安全資産と位置づけられるスイスフランの買いが目立った。スイスフランは最近まで大幅な売り越しとなっていた(図表5参照)。同じく安全資産とされることが多い円が、すでに見てきたように記録的な買い越しとなっていたことと正反対だったわけだ。

【図表5】CFTC統計の投機筋のスイスフラン・ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のように見ると、「トランプ・ショック」でリスクオフのスイスフラン買いが強まったのは、買い戻す余地が大きかったためであり、逆にすでに「買われ過ぎ」となっていた円はリスクオフでもさらに買われる余地が限られたということではないか。