2025年4月7日(月)8:30発表
日本 毎月勤労統計調査2025年2月分速報
【1】結果:2月の実質賃金は前年同月比1.2%減の結果に

2025年2月の名目賃金は、前年同月比3.1%増と前月1月(改定値)から伸びが加速する結果となりました。おおむね、市場予想に沿ったもので名目賃金は再び大台の3%台となりました。基本給にあたる所定内給与は、同1.6%増と前月から伸びの鈍化が確認されました。厚生労働省からは、2025年1月に実施された調査対象事業所のサンプル替えによる断層の影響が指摘されていますが、共通事業所ベース(=サンプル替えをしていないもの)も同様に2%を割り込んでおり、基本給の伸びの鈍化がうかがえる内容となっています。

2月の実質賃金は、前年同月比1.2%減と2ヶ月連続でマイナスでの推移となりました。一方で、算出に用いられる消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合指数)は同4.3%上昇と伸びが鈍化し、実質賃金もマイナス幅を縮小する結果となっています(図表2)。
【2】内容・注目点:所定内給与の伸び鈍化に注目 日銀の前提崩れる可能性

2月の賃金指標では、基本給にあたる所定内給与の伸びの鈍化が目立つ内容となりました。そのため、所定内給与を物価で割り引いて実質化したデータではマイナス幅が拡大しています(図表3)。サンプル替えの影響を除いた共通事業所ベースにおいても2%を割り込んでおり、基本給においては若干のペースダウンがうかがえます。
再び、上昇基調となる材料は春闘による賃上げの結果が反映されることですが、結果は夏ごろ(例年では8月あたり)までに指標に現れてくることから、まだ時間を要するものでしょう。2月の速報値が一過性のものかに注目です。ペースダウンが続くようであれば、日銀が前提に置く賃金と物価の好循環のベースが崩れることになりかねません。足元では米政権による相互関税から不確実性が大きく、景気後退も言及される中で賃金も想定より伸びていないケースでは、経済下押しをより強める可能性があるでしょう。
【3】所感:春闘は堅調だが指標反映までの期間にリスクが多い
全体としては実質賃金のマイナス幅が縮小し、評価できるものの、所定内給与の伸びの鈍化がし不安材料が残る内容となった印象です。執筆(4月7日)時点の春闘回答速報における賃上げ率は全体で5.42%増、中小企業で5.00%増とともに前年を上回る水準で、ある程度賃金基調は継続する公算が高いでしょう。一方で春闘の結果が現れる前の先行き数ヶ月間に、関税を起点とした経済の下押しの影響が見え始め、それらが重なる時期には、よりリスクオフ姿勢に傾斜する可能性が高くなると考えられます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太