米国ではBTC現物ETFの資金流出が強まる
・年初来のBTC価格とVIX指数を重ねたチャートを見ると、2月後半からVIX指数が上昇しているのに対して、BTCが下落している様子がわかる。トランプ関税が警戒される中、株式市場に調整が入り、BTCもリスク資産として下落している。米国ではBTC現物ETFの資金フローが注目されているが、2月以降、15億ドルもの金額が流出。市場がリスクオフに動くにつれて、現物ETFに資金を入れていた投資家層も、一部資金を引き揚げる流れが強まっている。
・ただ、足元ではVIX指数は低下し、BTCの動きも横ばいになり、現物ETFの資金流出も落ち着いてきているため、BTC価格の底も近くなってきているのではないか。年初のトランプ大統領就任時には上昇が続くとみられていたため、資金流入が強まったが、一方で高値の警戒感もあり、売り買いが交錯する状況が続いている。今後どう推移するか。
BTC準備金に関する大統領令は無難な内容
・米国ではBTC準備金の動きが注目される中、関連する大統領令が署名された。しかしその内容は、犯罪等で押収されたビットコインやその他暗号資産については売却せず保有を続けるというもので、マーケットが期待していた追加購入については今後の検討課題となり、やや失望感が強まった。ただ、本命令の日付から60日以内に、財務長官でBTC準備金およびデジタル資産備蓄の評価を行うと指示が出たため、5月頃にはもう少し具体的な案が市場に出てくるだろう。
・2024年、国が犯罪等で押収したBTCを売るのではないかと、マーケットで警戒された。実際、ドイツ政府がBTCを売りに動いて、価格が下落したということがあった。世界最大の経済大国である米国が売却しないという方針を固めたのはポジティブなことととらえられる。今後、追加購入に関することが出てくればさらにマーケットは上向くだろう。
BTC先物はトランプラリー前の水準に回帰
・先物市場の未決済建玉の推移を見ると、トランプ大統領当選直後にBTC価格が上昇し、先物ポジション残高も大きく上昇、機関投資家がBTC市場に対して資金を入れていたことがわかる。ただ、先物ポジションも足元では減少しており、トランプラリーの期待はいったん落ち着きをみせたようである。BTC価格は25%下落と、株式などと比べると調整幅は大きいが、暗号資産になじみのある投資家からすると、トランプラリー前の水準に戻っただけで、過度に悲観的になる必要はない。
・米企業がBTCを買う流れも出てきている。BTC市場に参加するプレイヤーの層が広がり価格も上振れている。
・今後は4月2日の米国による相互関税の発動に注目。内容次第ではリスクオフがさらに加速する可能性もあるが、一方で過度なものでなければ、リスクオフが後退し、買戻しが強まるだろう。4月以降の方向感として重要になる。
今後の見通し:米国の規制方針に注目
・米では景気後退も意識され、関税に伴う景気後退リスクが雇用統計の悪化などから出てくると、マーケットは短期的に下がる可能性がある。5月のFOMC(連邦公開市場委員会)にかけて、インフレ再燃と景気後退懸念のリスクバランスがどうなるか、BTCだけでなく金融市場全体の大きなテーマとなる。この不透明感が消えない限り、上昇には向きづらい環境にある。
・暗号資産市場特有のイベントとしては、暗号資産規制に関する報告書が7月頃に公表される予定である。規制がクリアになることで投資家の動きや暗号資産関連企業の事業が活発化することが期待される。マクロ的には不透明感があるが、暗号資産市場にとっては、米政府の推進が続いているため、このあたりに注目しながら今後の市場を見ていきたい。
・米国の動きを見て、日本も暗号資産規制の見直しに動いている。その他地域も米国を中心に議論が波及しているため、全体としてはポジティブな環境が続いていると言えるだろう。