モトリーフール米国本社 – 2025年3月25日 投稿記事より
自動運転配車サービス業界でテスラ[TSLA]よりシェアを獲得する可能性がある企業とは
テクノロジー投資家として知られるキャシー・ウッド氏が設立したアーク・インベストメント・マネジメントは、自律走行による配車サービス業界が2027年までに14兆ドルの企業価値を生み出すと見ています。テスラ[TSLA]は自動運転技術の開発をリードする企業であり、同社の新型ロボットタクシー「サイバーキャブ」は、人間の手を借りずに乗客を運ぶことが可能で、早ければ今年中にも米国の道路を走るかもしれません。
しかし、テスラは『自動運転革命』の最大の勝者ではないかもしれません。むしろ、ウーバー・テクノロジーズ[UBER]が、この14兆ドル規模の市場で、より大きなシェアを獲得する可能性があると著者は考えます。同社は足元で、世界最大の配車サービスプラットフォームを運営しており、自動運転へのシフトが加速する中で成功を収めるためのインフラをすべて整えています。
ウーバーの株価は足元で、テスラに対して非常に魅力的なバリュエーションで取引されています。そこで、自動運転車が主流になる前の今、ウーバーが絶好の買いになるかもしれない理由をご紹介します。
配車サービス事業ではネットワークがすべて
自動運転車はいずれ普通の車と同じくらい一般的になる可能性があるため、開発者やメーカーにとっては非常に競争の激しい業界になるでしょう。しかし、配車サービス事業において市場シェアを獲得する上で最も困難なことは、最高の自動運転車を設計することではありません。真の課題は、ネットワークを構築し、規模を拡大することです。
テスラのイーロン・マスクCEOは、ロボットタクシー「サイバーキャブ」向けの配車サービスネットワークを構築したいと考えています。同社の乗用電気自動車(EV)の所有者も、自分の車を使っていない間は、ネットワークに貸し出して収入を得ることができます。その結果、テスラは配車サービスに十分な数の車を供給することは可能ですが、利用者に新たなスマートフォンアプリをダウンロードして、実際に使ってもらうことは容易でしょうか?
ウーバーにとっては、ここがかなり有利な点になります。同社は自動運転車を独自に設計する計画はありませんが、既存の配車プラットフォームはすでに毎月1億7,100万人を超えるユーザーが利用しています。最近ダラ・コスロシャヒCEOは、テスラのような企業が独自のネットワークを構築する際に直面するであろう運用上の多くの課題について、ウーバーはすでに対処する体制が整っていることを説明しています。
さらにウーバーは、運賃を巡る紛争、保険金請求、遺失物の返却、立ち往生した車両の処理まで、迅速に対応するインフラをすべて整えています。よって自律走行車の開発者は、ウーバーのネットワークに集まることをコスロシャヒCEO は確信しています。このような面から、この業界で一から独自に取り組むよりも、迅速に規模拡大が可能だと考えます。
ウーバーはすでに複数の自動運転車に関するパートナーシップを結んでいる
ウーバーは自動運転技術が普及するのを待っているわけではありません。商業化の初期段階にあるメーカーを含め、現時点でできる限り多くのメーカーと提携しています。中国のウィーライド、モーショナル(ラスベガスのタクシー事業)、サーブ・ロボティクス(配達ロボット)、そして最も注目すべきはアルファベットのウェイモなど、すでに10社以上と契約を結んでいます。
ウェイモは、サンフランシスコ、ロサンゼルス、フェニックス、テキサス州オースティンで週に20万件を超える有料自動運転サービスを提供しており、近い将来、マイアミとアトランタへの拡大も予定されています。ウーバーは、すでにオースティンでみられるように、アトランタでもウェイモの独占的な拠点となり、これは、自律走行車の配車ネットワークの分野でリーダーとなるための大きな一歩です。
テスラの監視なしFSDソフトウェア(レベル5)はまだ公道での使用承認を得ておらず、今年末までに承認されるのはカリフォルニア州とテキサス州だけになるかもしれません。さらに、同社のサイバーキャブは2026年まで量産される見込みがないため、ウェイモなどに大きく遅れをとっています。
ウーバーは1月、AI開発のためのチップやその他のソリューションの世界最大のサプライヤーであるエヌビディアともユニークな契約を締結しました。ウーバーは、同社のプラットフォームで毎年完了する何十億もの乗車から収集した貴重なデータを活用し、自動運転のパートナーが商業化への道を加速できるようにしたいと考えています。ウーバーは、必要なハードウェアとソフトウェアのすべてを提供するプラットフォーム・ソリューションであるエヌビディアのDGX Cloudを使用して、そのデータを処理します。
ウーバーはエヌビディアの基盤モデルであるCosmosファミリーも使用しています。Cosmosファミリーを使用することで、開発者は自律走行ソフトウェアを訓練するために広範な実世界シミュレーションを作成することができます。これにより、データを収集するために実世界で車を走らせる必要が減るため、従来の方法と比較してトレーニングプロセスを迅速化することが可能です。
パートナー企業が自動運転車をより早く市場に投入できるように支援するウーバーの投資は、同社が昨年負担した725億ドルという莫大な運転手の人件費を削減するのに役立つため、将来的に大きな利益をもたらす可能性があります。
ウーバー株はテスラ株よりはるかに魅力的に見える
ウーバーの一株当たり利益(EPS)は昨年4.56ドルとなり、2023年の実績から424%もの大幅増となりました。株価収益率(PER)はわずか16.6倍で、本稿執筆時点のS&P500種指数のPER約22.9倍に対して、かなり割安となっています。
さらに121.9倍という目を見張るようなPERで取引されているテスラよりもウーバーの株式は大幅に割安となっていることがわかります。テスラのEPSが2024年中に53%減少し、今年も減少する可能性があることを考えると、テスラがより割高に見えます。
とはいえ、ウーバーの信じられないほど割安なバリュエーションには1つ注意点があります。同社は2024年に57億ドルの一時的な税制優遇措置の恩恵を受けているため、それがなければEPSは2.01ドル程度となり、PERは37.5となります。とはいえ、テスラに比べれば割安であることに変わりありません。
14兆ドル規模に達する可能性のある自動運転ブームの恩恵を受けるのが、ウーバーの方がはるかに有利な立場にあることを考慮すると、現在の株価は、長期的に魅力的な水準であると考えます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anthony Di Pizioは次のオプションを保有しています:テスラの2025年4月満期の200ドルプットのロングとテスラの2025年4月満期の210ドルプットのロング。モトリーフール米国本社はアルファベット、エヌビディア、サーブ・ロボティクス、テスラ、ウーバー・テクノロジーズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。