金利差縮小とヘッジファンドの方針転換

・米ドル/円は2025年1月に158円まで米ドル高・円安が進んだ後、2月、3月と下がり、足元で150円を大きく割れる展開になっている。その理由は、日米の金利差(米ドル優位・円劣位)が急ピッチで縮小していることにある。その金利差縮小に連動して米ドル安・円高が進行している。

・さらに「影の主役」と言えるのがヘッジファンドである。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションを見ると、米ドル/円が下落する動きと、ヘッジファンドの取引がほぼ重なり合って展開してきたことがわかる。

・円高になると円買いがふくらむのは当然といえば当然だが、ヘッジファンドは円を売って利回りの高いところで運用する円キャリーではないのか?と疑問に思う人も多いだろう。2024年の7月に161円の円安となった時は、18万枚という過去最大の規模の米ドル買い・円売りポジションとなり、円キャリー全盛期だった。それが様変わりし、2025年1月に158円を記録した際のヘッジファンドの米ドル買い円売りポジションは3万枚弱であった。さらに円高が進み、先週(3月3日週)の段階では、13万枚の円買い越し(ドルショート)となり、これは過去最大である。このようにヘッジファンドの戦略が、円売りから円買いへと急転換していることがわかる。

・なぜヘッジファンドは戦略を大きく変えたのだろうか。それは、トランプ大統領の通貨政策にあるだろう。トランプ大統領は3月初めに「円安を変えられなければ関税をかける」と発言。おそらくヘッジファンド出身のベッセント財務長官は早くからその意向を知っていたのではないか。そのため、ヘッジファンドは円買いに戦略を展開し、円高をリードしてきたのが今の構図ではないか。

米ドル売り・円買いは「行き過ぎ」の可能性

・2024年までは、日本のFXトレーダーも大幅な金利差に便乗し円売り・米ドル買いをする取引が多かった。それはヘッジファンドも最近まで同様であったが、この2、3ヶ月で転換。下がったら買い、という押し目買いがこの1、2週間でうまくワークしないと思い始めた人も多いだろう。それは上がったところをヘッジファンドが売っているからであり、その転換を知っておく必要がある。

・CFTC統計の投機筋の円ポジションを2010年以降の長い時間軸で見ると、米ドル買い・円売りが10万枚を超えると行き過ぎで、米ドル売り・円買いは5万枚を超えると行き過ぎとなる。先週(3月3日週)は米ドル売り・円買いが13万枚とさらに拡大し、行き過ぎの可能性が高くなっているため、警戒が必要だろう。実際、徐々に米ドル売り・円買いポジションの手じまいの動きも出てきている。では、円安に急激に戻す可能性はあるのだろうか。

・2024年7月に161円をつけ、過去最大級に広がっていた円売りポジションはたった1ヶ月で消滅し、米ドル/円は20円の大暴落となった。しかし今回は、急に円安に戻す可能性は低いだろう。2024年は金利差からかい離した円安だったが、今回は金利差に沿った形で展開している。金利差が急激に拡大するといったことがなければ円安に大きく戻すことにはならないだろう。