先週(3月17日週)の振り返り=目立った米ドル高・円安試す動き
先週の米ドル/円は一時150円の大台を回復するまで反発しました。その後、3月19日FOMC(米連邦公開市場委員会)の後に急反落となったものの、148円割れには至らず、改めて150円近くまで上昇するなど、全般的に米ドル/円の反発力を試す動きが目立ちました(図表1参照)。ではそれはなぜか。

米ドル/円は、1月の158円から一時146円台までほぼ一本調子で下落しました。そうした中で、為替市場のポジションはかなり米ドル売り・円買いに偏った可能性があったようです。短期売買を行う投機筋の代表格であるヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋のポジションは、円買い越し(米ドル売り越し)が、3月11日には13万枚以上と過去最高まで拡大しました(図表2参照)。

上記のデータにおいて、2024年までの円買い越し最高は7万枚だったので、それが倍近く急増したわけです。しかも日米金利差はなお円劣位で、円買いには不利でした。以上のことから、米ドル売り・円買いは「行き過ぎ」懸念が強く、そうした中ではさらなる米ドル/円の下落にも自ずと限度があり、むしろ「行き過ぎ」の反動から反発する可能性がある。それを試したのが先週の展開だったのではないでしょうか。
2024年夏に161円まで米ドル高・円安となった動きと今回との違い
今回の場合なら米ドル高・円安が拡大する可能性は今のところ低い
今回と方向は逆でしたが、米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」の反動が急激な米ドル安・円高をもたらしたのは2024年夏の出来事でした。米ドル/円は、2024年7月の161円から、ほんの1ヶ月で141円まで最大20円の大暴落を演じました(図表3参照)。

では、今回はそれとは逆の米ドル売り・円買い「行き過ぎ」の反動なので、急激な米ドル高・円安、つまり米ドル/円の急騰が起こるのか。私は、同じ「行き過ぎ」でも、2024年夏と最近では違いが多いため、逆方向への急激な動き、今回の場合なら米ドル高・円安が拡大する可能性は今のところ低いと思います。
日本の通貨当局による円安阻止介入は2024年7月に入って再開
2024年夏に161円まで米ドル高・円安となった動きは、日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小を尻目に起こったものでした(図表4参照)。当時の米通貨政策の責任者であるイエレン財務長官の発言などを手掛かりに、日本の通貨当局はもう円安阻止介入ができなくなったとの見方から、円売りが「バブル化」したものだったのです。

ところが、「できない」と思われていた日本の通貨当局による円安阻止介入は7月に入ってから間もなく再開しました。そして、7月はそれ以前の2年も米ドル/円が下落していたことから想像できるように、もともと夏休み前でポジション調整が拡大しやすいタイミングだったようです。
今回は基本的に金利差とは整合的な米ドル高・円安
さらに2024年7月、行き過ぎた米ドル買い・円売りの「逆流」が急加速したのは、テクニカルな理由が大きかったのではないでしょうか。代表的な投機筋であるヘッジファンドは、過去半年の平均値である26週MA(移動平均線)や120日MAが損失を最低限にとどめるための主要な売買転換点になっています。その観点からすると、確かに2024年夏の米ドル買い・円売りポジション手仕舞いは、120日MA割れから急拡大したように見えました(図表5参照)。

以上のように見ると、2024年7月から行き過ぎた米ドル買い・円売り、別の言い方をすると円売り「バブル」が破裂したことには具体的な理由、介入が予想外に再開したことや、ポジション調整が本格化しやすいタイミングだったと思います。では今回はどうか?
米ドル/円の120日MAは足下で152円台後半と、ヘッジファンドの売買転換点とはまだほど遠い状況のようです。そして2024年夏とは異なり、今回は基本的に金利差とは整合的な米ドル高・円安です。つまり、2024年夏に円売り「バブル」破裂で急激な円高になった局面と、最近も円買い「行き過ぎ」懸念はあるものの、状況はかなり違うのではないでしょうか。
今週(3月24日週)の注目点=日米金利差拡大にも限界の可能性
先週は、3月19日に日米の金融政策を決める会合がありました。日銀については、最近にかけての長期金利の大幅上昇に対して、植田総裁がそれを容認したと見られる発言を行ったことが個人的には印象的でした。一方、米国の金融政策を決める会合、FOMC(米連邦公開市場委員会)では、メンバーの経済見通しである「ドット・チャート」において、実質GDP伸び率予想が下方修正されたことなどが意識され、米金利は小幅ながら低下しました。
今週(3月24日週)の米ドル/円は146~151円で予想
こうした中で、日米金利差は拡大が一巡しました(図表6参照)。すでに見てきたように、米ドル売り・円買いは「行き過ぎ」懸念が強いものの、その修正が本格化するのは、経験的には120日MAブレークであり、それにはまだほど遠いということです。その上で、米景気の減速懸念が続いていることなどから、日米金利差拡大が限られるといった見通しが基本的に変わらないなら、やはり米ドル高・円安も限られるのではないでしょうか。以上を踏まえると、今週の米ドル/円は146~151円で予想したいと思います。
