米国フルサービスレストラン売上トップ10に2ブランドがランクイン

ダーデン・レストランツ[DRI]は、米国を中心に2,000店を超えるレストランを展開する大手運営会社。フルサービス形式のレストランチェーンでは、米国最大の企業です(フルサービス:店員が客の席で注文を取り席まで料理を運ぶ形態)。イタリアンの「Olive Garden(オリーブ・ガーデン)」をはじめ、「ロングホーン・ステーキハウス」、「バハマ・ブリーズ」、「シーズンズ52」、「ヤードハウス」、「チェダーズ・スクラッチ・キッチン」、「ルース・クリス・ステーキハウス」、「エディV'sプライムシーフード」、「ザ・キャピタル・グリル」のブランドでレストランを所有、運営しています。また2024年7月にもテキサス風メキシコ料理チェーンの「チュイズ」を買収し、新たに104店舗が加わりました。これにより2024年11月24日現在の運営店舗は全部で2,152店舗と報告されています。

主力店はイタリアンの「Olive Garden(オリーブ・ガーデン)」で、総出店数の45%、売上の45%を占めます(2024年5月期売上高114億ドル)。1982年に自社開発して出店後、瞬く間に成長した同社の柱でいまや米国最大のフルサービス・イタリアン・レストランとして広く知られています。11月24日現在、925店舗を運営しています。この「オリーブ・ガーデン」に次ぐのが2007年に他社から買収した「ロングホーン・ステーキハウス」で総出店数の28%、売上の25%を構成します。Statistaの「2023年の米国フルサービスレストラン売上トップ10」のうち、オリーブ・ガーデンとロングホーン・ステーキハウスの2つがランクインしました。

物価高の中、魅力的な価格帯で提供

売上の7割を稼ぎ出しているこの2ブランドは、続く他の5ブランドとともにカジュアルレストランに位置づけられます。これらの単価は大体20ドル~35ドルで、最近の物価高の中では、魅力的な価格帯と言えます。ちなみに主力のオリーブ・ガーデンは、ディナーのメイン料理は11.50ドル~21.50ドル、ランチのメイン料理は9.50ドル~11.50ドルで、1人あたりの平均売上(総売上をメイン料理の販売数で割った値)は約23ドルでした。また後者3ブランドは高級レストランの位置づけとなり、単価は100ドル強となっています。最近の業績では、高級レストランが低調、カジュアルレストランは好調となっており、インフレによる家計への影響が反映されていると見えます。

買収と新規出店で売上規模拡大、コスト削減策推進で利益改善

ダーテン・レストランツはゼネラル・ミルズ[GIS]のレストラン部門だったレッドロブスターが分離した企業として紹介されますが、実際にはウィリアム・ダーデン氏によって始まり(1938年にThe Green Frogという25席の小さなレストランをオープン)、その後はシーフードレストラン(1968年)で成功を見た同氏が策略的にゼネラル・ミルズに自社を売却し(1970年)、ゼネラル・ミルズに入り込んでその資金力を活用してレッドロブスターを巨大なレストランチェーンに育て上げました。ダーテン氏率いるレッドロブスターはゼネラル・ミルズのレストラン部門切り離しにより「ダーデン・レストランツ」として誕生した(1995年)という流れとなります。この年には49州で1,250店舗を展開する巨大なレストラン運営会社となっており、同年にはニューヨーク証券取引所に上場を果たしました。なお、成長の礎を築いたレッドロブスターは2010年代に経営不振となりすでに売却しています。

その後、買収と新規出店によって事業規模を拡大し続けています。売上高はコロナによるパンデミックの影響を受けた2020年5月期および2021年5月期を除いては一貫して成長してきました。コロナ禍からの反動で前年比34%成長を記録した2022年5月期を除くと年平均成長率は9%です。なお、2022年5月期以降の3期に渡っては年間平均17%で成長しています。

利益面も同様ですが、レッドロブスター売却による影響を除いては基本的に成長しています。実際同社は売却を機に経営改革に乗り出し、経営陣を刷新したりコスト削減策を講じたりといった利益改善の取り組みを進めたことで、営業利益率は9%台から11%台に上昇しました。直営店中心のレストランチェーンの中では高い方で、競争とされるテキサス・ロードハウス[TXRH](9%)やチーズケーキ・ファクトリー[CAKE](4%)などと比べると高い水準となっています。

同社のコスト構造は、コストの8割を、食品・飲料費、レストランでの人件費やレストラン経費が占め、バックオフィス系のコストは小さいです。驚くのはマーケティングコストの売上比がたった1%であることです。つまり広告宣伝にお金をかけずにプロモーションに客を呼び寄せ既存店売り上げを伸ばしていることになります。以前は3%あったのが、テレビ広告を減らすなどして削減を進めてきたようです。

ウーバー・テクノロジーズ[UBER]との提携本格始動

同社では買収による拡大に加え、新製品発売や新規プロモーションも成長の原動力となっています。例えば、最近ではオリーブ・ガーデンで「ネバーエンディングパスタボウル」という食べ放題メニューの復活が話題になりました。これはパスタ食べ放題、スープやサラダ、焼きたてのパンが好きなだけ食べられるというもの。しかも価格は13.99ドルで、2022年と同じ価格です。さらには4.99ドルの追加料金でチキンやソーセージをトッピングできるオプション、「エンドレストッピング」を追加できます。同社によると、「ネバーエンディングパスタボウル」を注文する客の約65%が「エンドレストッピング」を追加したとのことで、これにより単価が上昇することになります。

この他にも魅力的な新製品や人気メニューの復活によって客足を増やす取り組みを行っています。消費者心理が改善していく中、競合となるドミノ・ピザ[DPZ]やテキサス・ロードハウス[TXRH]から客をどう守るか、どう奪うかは重要な要素となってきます。

そして、今後長期的な効果が期待されるのがウーバー・テクノロジーズ[UBER]との提携です。同社は2024年10月に約 100のオリーブ・ガーデン店舗でデリバリーサービスの試験運用を開始しました。11月の報告では「宣伝していないにもかかわらず好調だった」とのこと。具体的には総売上の約1.5%に貢献したと言います。今回のパイロット店は100店舗でこれはオリーブ・ガーデン店全体の1割相当です。残りの店舗でも同様の貢献があるとすれば、全体として1億ドル近い売上貢献が見込まれます。

また、もう一つの注目点として、ウーバーイーツによる平均単価がピックアップ注文よりも高かったとの報告があり、オリーブ・ガーデンにウーバーが浸透するにつれ単価が上がることが期待されます。2025年度第3四半期には米国内の 900を超えるオリーブ・ガーデンレストランすべてに展開される予定となっており、収益の行方が注目されるところです。

好調な業績とキャッシュ創出力

業績は堅調で、コロナが収束してからは3期連続増収増益を記録しており、今期も引き続き最高業績更新の見通しです。同社の成長の原動力は買収と新規出店ですが、巧みなプロモーション活用によって客単価アップに成功していることが堅調な既存店売上高に繋がっていると見られます。また今後はウーバー・テクノロジーズとの提携による宅配事業の寄与も見込まれます。

キャッシュフローも良好で、フリーキャッシュフローはコロナの影響のあった期でさえプラスを維持しました。今期も過去最高を記録する見通しです。今期上半期で生み出された営業キャッシュフローは前年比8.5%増となる6億6180万ドル、一方で新店舗建設や改装などに使われた設備投資は3億1500ドルと0.7%の増加に留まり、この結果、3億4700万ドルと前年を16.7%上回るフリーキャッシュフローが残されました。今期予想されている投資(資本的支出で買収は含まない)は、新店舗の建設、既存店舗の改装と修理、デジタル化等へ約6億5000万ドルが見積もられていますが、これに関してはキャッシュフローで賄える見込みです。

一方、財務内容ですが、有利子負債に24億ドル、現金に2.2億ドルを保有しています。ネットでは1倍となりますが、有利子負債はほとんどが長期債で、2027年10月まで満期はありません。ムーディーズからBaa2、フィッチからBBB、S&PからBBBの長期債務格付けを獲得していることからも財務リスクはないと言っていいでしょう。

株主還元も安定的で、自社株買いと配当を通して株主に利益を還元しています。今期6ヶ月間には210万株、3億2400万ドルの自社株買いをしました。2024年3月に承認された10億ドルの自社株買いプログラムはまだ6億残されており、株価の下支えになることが期待されます。また配当は3期連続増配の記録を持ちます。コロナによるパンデミックがあった2020年度は64%の減配としましたが、それ以外は2015年以降増配を維持しています。

【図表1】ダーデン・レストランツ[DRI]年間配当推移
出所:Bloombergより筆者作成(1995年~2024年)
【図表2】ダーデン・レストランツ[DRI]とS&P500の株価推移比
出所:Bloombergより筆者作成
※ダーデン・レストランツ[DRI]株価は1995年5月31日を1とした数値