最悪の「FRBデー」からPCEの結果を受け、市場に一時的な安堵感も

先週(12月16日週)の米国株市場は非常に混乱した1週間となりました。最終的にS&P500は1.99%の下げ、ナスダック100は2.25%下落して終わりました。

世界中の金融参加者が注目していた12月18日(水)のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、予想通りの利下げが行われたものの、その後の声明が「タカ派的利下げ」を発表したことで市場は大きく下がりました。この日は恐怖指数と言われているVIX指数は74%上昇し28に達したのです。

S&P500は、1日で2.9%下落とパニック的な売りが起き、18日はここ数年で最悪の「FRBデー」となりました。この動きは、米国経済の堅調さとインフレ抑制の進展の遅れが、FRB(米連邦準備制度理事会)に引き締め的な政策スタンスを取らせていることを反映しています。

しかし、12月20日(金)に注目されていたインフレ指数であるPCE(個人消費支出)が発表され、インフレが予想を下回ったことから市場に一時的な安堵感が広がりました。また、この日の株式市場はトリプルウィッチングでもありました。

トリプルウィッチングとは、株式オプション、株価指数オプション、および株価指数先物の同時満期が起きることを指し、毎年3月、6月、9月、12月の第3金曜日で年に4回発生します。トリプルウィッチングは通常、投資家がポジションを手仕舞いするか延長するかの選択を迫られるため、活動が急増し、その活動にはボラティリティが高まる場合があります。

実際、12月20日は、米国市場では約217億株の取引が行われ、過去4年で最大の取引量となりました。なお、2024年のこれまでにおける1日平均取引量は116億株となっています。

政府閉鎖は回避、大規模な支出決定はトランプ新政権に先送り

先週後半、ワシントンD.C.から政府閉鎖の可能性が報じられ、投資家心理に再び不安が広がりました。政府閉鎖の懸念がなければ、12月20日(金)の株式市場は、さらに上昇していたかもしれません。最終的に事態が解決したのは21日(土)のことです。

米国上院では21日未明、政府資金を3月中旬まで継続するための支出法案が承認され、バイデン大統領の署名を得るべくホワイトハウスへ送られました。これは、連邦資金が一時停止する期限を過ぎた数分後のことでした。バイデン大統領は21日にこの支出法案に署名し、期限は形式的には過ぎていたものの連邦資金の供給に中断はありませんでした。

上院では賛成85票、反対11票で可決され、この法案にはハリケーンの被害を受けた地域への災害救助金1000億ドルも含まれています。これにより、大規模な支出決定については、2025年に誕生するトランプ新政権と共和党が完全に支配する議会の最初の数ヶ月に先送りされました。

米国10年債の利回り動向にも注視、今週は穏やかな米国株式市場に

先週、債券市場では米国10年債の利回りが上昇し、これが株式市場の下げの要因となりました。米国政府が閉鎖されるかもしれないという懸念があるなか、安全資産への資金逃避が起き、債券が買われ金利は下がっていてもおかしくない環境でした。

ただ、実際には、前週末4.3967%だった10年債利回りはインフレへ注意を払い、12月20日のPCEの発表前には4.5924%まで上昇しました。その後予想を下回るPCEが発表されると、インフレは穏やかだったことを受け、金利は下落に転じ、最終的には4.522%で1週間を終えました。もし10年債利回りがここで安定し、下がり始めれば、それは株式市場には良いことです。しかし利回りが上昇し続ければ、市場は再びパニックになる可能性があります。

今週(12月23日週)の米国株式市場は、年間で最も静かな2週間のうちの1つとなり、取引量も減少することが予想されます。12月24日は市場が早期終了し、25日はクリスマスで休場となるため、市場の動きは緩やかになるでしょう。