経済の好循環を背景に、日経平均は4万5000円を目指す

2025年の東京株式市場は、経済の好循環を背景に基調の強い展開となりそうだ。日経平均株価は4万5000円を目指すと想定する。

国内では物価の上昇基調に、賃金の伸びがようやく追いつこうとしている。消費や設備投資の拡大が続けば、企業業績にも追い風になることが期待される。自公少数政権と可処分所得の向上を掲げる国民民主党との連携が進めば、デフレ脱却が加速する可能性がある。

米国では1月に第2次トランプ政権が発足する。減税や規制緩和を推進する方針を明らかにしており、米経済はソフトランディング(軟着陸)から再拡大に進む公算が大きい。他国への関税強化方向は警戒要因だが、米物価の上昇に直結するだけに、運用は慎重になることも想定される。

複数の大手調査機関では2026年3月期に10%程度の増益になると試算している。現在、日経平均株価の1株利益は約2,480円だが、10%増益なら来期の1株利益は2,730円程度になる計算。PER16倍なら4万3700円、16.5倍で4万5000円が見込まれる。2024年7月の史上最高値時のPERは17倍で、これを当てはめれば4万6400円だが、ややオーバーシュートの水準といえる。

リスク要因は国内では増税路線の浮上。1990年以降のバブル経済崩壊後は、景気が上向くと増税に進んで景気回復の芽を摘んできた経緯がある。海外では米国のインフレや、中国経済のさらなる低迷など。これらのリスクが消費や企業業績に影響を与えるようなら、株価の上値が重くなるだろう。特に米長期金利の一段の上昇には警戒したい。

4つの注目テーマと関連銘柄

PBR改善(=ROE向上)を進める企業

物色面では、低PBRの修正、すなわち企業の資本効率の改善に関連するテーマが引き続き中心となるだろう。2022年に東京証券取引所がPBR改善を打ち出して以降、これに呼応する動きが続いている。

PBR=PER×ROE(株主資本利益率)の算式で求められるため、企業はROEの向上策を打ち出している。具体的には自社株買いや増配など株主還元策を強化する動きを進めている。

主体別売買動向で、自社株買いの動向を示す事業法人は11月までに約7兆7000億円の買い越しで、2023年1年間の約5兆5000億円買い越しを大幅に上回っている。2025年はさらに増加する可能性がある。ROEの向上が進めば、外国人投資家の買いが入る可能性も高まる。

継続的な還元策を打ち出している三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)などの大手銀行、日本郵船(9101)といった海運など。また、PBRが1倍を割り込んでいる日本製鉄(5401)などの鉄鋼のほか、三菱ケミカルグループ(4188)、INPEX(1605)、三菱マテリアル(5711)などには実施期待がありそうだ。

AI(人工知能)半導体関連に注目

また、AI(人工知能)半導体関連は外せない展開となろう。エヌビディア[NVDA]に代表されるAI半導体は2022年の生成AIのチャットGPTに始まり、データセンター、スマートフォン、自動運転などに用途を広げてきている。自然言語処理、画像認識などに用いられ、短時間に膨大な量の計算をこなすのが特長である。

製造工程ではチップに切り出して封止(パッケージ)するまでの「後工程」への重要度が増している。AI半導体は後工程でメモリー隣接などの性能向上のための処理が必要となるためだ。

切断、研磨、研削装置のディスコ(6146)、検査装置のアドバンテスト(6857)、後工程材料のレゾナック・ホールディングス(4004)、パッケージ装置の芝浦メカトロニクス(6590)などが該当する。

防衛関連株の好業績が継続

また、防衛関連株の好業績が継続しそうだ。政府は防衛費をGDP(国内総生産)の2%に倍増させる方針で、2027年度までの5年間で43兆円を投入することが決まっている。従来は採算が合わないケースがあったが、売上高営業利益率最大15%を想定して発注することとなっている。

三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)、東京計器(7721)、日本製鋼所(5631)が軸となる。

苦戦セクターの株価挽回も想定

一方、2024年に苦戦したセクターの株価挽回も想定される。

例えば、自動車は検査不正問題に加え、EV(電気自動車)シフトの失速、米国での販売苦戦や中国経済低迷の影響を受けた。また、中国経済の苦戦は、工場自動化(FA)投資鈍化につながっている。2025年はこれらが解消に向かう可能性がある。

自動車ではトヨタ自動車(7203)、SUBARU(7270)、本田技研工業(ホンダ)(7267)。FAではNC(数値制御)装置のファナック(6954)、サーボモーターの安川電機(6506)、搬送システムのダイフク(6383)などが挙げられる。