被害相次ぐサイバー攻撃
サイバーセキュリティに対する注目度が再度高まっている。サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を導入するための法案が、4月8日に衆議院本会議で与党の賛成多数で可決。参議院に送られ、今国会内で成立する見通しとなっている。背景にはサイバー攻撃による被害が大きく、今後は国防にもかかわることなどがある。
目立つのがランサムウエアによる企業などへの攻撃だ。ランサムウエアとは、感染するとパソコンなどに保存されているデータを暗号化して使用できない状態にした上で、そのデータを復元するため金銭などを要求する不正プログラムのことである。
2024年5月には岡山県精神科医療センターがサーバー攻撃を受け、電子カルテを始めとする院内システムがランサムウエアウイルスに感染。法人内の診療所を含む全カルテが閲覧できないという甚大な被害を受けた。外食のサイゼリヤもKADOKAWAなども2024年にランサムウエア攻撃を受けたと発表するなど、被害が相次いでいる。
政府は2027年度中の運用開始を目指す
一方、株式市場に関連する事案も台頭している。野村証券など6社で顧客の証券口座が乗っ取られ、株を勝手に売買される被害が確認されている。「フィッシング」と呼ばれる手口を使い、不正にログインし、本人になりすまして株式の売買を行ったとみられている。
こうした背景が「能動的サイバー防御」を導入するための法案につながっている。この法案は、政府が重要なインフラの関連事業者などと協定を結び、サイバー攻撃の恐れがないかを監視するために、通信情報を取得できるようにするためのもの。警察や自衛隊が重大な被害を防ぐために、新設する独立機関の承認を受けたうえで、アクセスし無害化することもできるようになるという。
セキュリティ対策を「守り」から「攻め」に転じることを意味する。政府は法案を早期成立させ、2027年度中の運用開始を目指しているもようだ。
関連銘柄をピックアップ
トレンドマイクロ(4704)
サイバーセキュリティの大手。多国籍企業。パソコン端末などのいわゆるエンドポイント保護に強みがある。法人向けでは世界首位級。個人向けにアンチウイルスソフト「ウイルスバスター」を展開。セキュリティソフトのXDR(サイバー攻撃などの検知・対応などシステム全体を包括的に対策できる)製品に注力している。

FFRIセキュリティ(3692)
独立系のサーバーセキュリティ専業。標的型攻撃を防ぐ「ヤライ」など独自技術に定評がある。防衛省および自衛隊、防衛産業企業向け国家安全保障関連のセキュリティサービス案件を受託。官公庁向けのセキュリティ調査・研究、開発などの案件も手掛ける。また、情報通信分野を専門とする日本唯一の公的研究機関であるNICT(情報通信研究機構)の政府端末向けセキュリティソフトの開発サポートも行っている。

グローバルセキュリティエキスパート(4417)
民間企業や官公庁の情報通信ネットワークを防御するサイバーセキュリティの専門企業。コンサルティング、脆弱性診断、セキュリティソリューションなど、日本初のセキュリティ全体像を網羅した教育サービスを提供している。脆弱性はバケツの亀裂に例えられ、亀裂が大きいほど危険な状況であり、亀裂からの水漏れは脆弱性を突かれることを意味する。同社ではこれを診断し、外壁で亀裂の広がりを防ぐようなセキュリティシステムを提案している。

網屋(4258)
ネットワークセキュリティ事業とデータセキュリティ事業を展開。社名にある「網」はネットワーク(語源は網)に由来。データセキュリティではAIと高度な分析機能で効果の見えるログ(履歴、記録)管理を実現する「ALog」の収益力が高い。ネットワークセキュリティではネットワークインフラを管理センターに一任できる「Network All Cloud」などを手掛けている。「ALog」は全てサブスク(継続課金)で利益積上げ型のビジネスモデル。

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