モトリーフール米国本社 – 2024年12月3日 投稿記事より
ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]は、数十年にわたって素晴らしいリターンを生み出し、その名を馳せてきました。その結果、長期にわたる複利効果もあり、バークシャー・ハサウェイの株価は、優れた実績があるS&P500種指数を大幅にアウトパフォームしています。
1965年~2023年の間に、バークシャー・ハサウェイの株価は4,384,748%上昇しており、複利リターンに換算すると年率19.8%となります。同期間のS&P500種指数の上昇率は31,223%であり、配当込みの年率リターンは10.2%です。これこそが、数多くの投資家がバフェット氏とバークシャー・ハサウェイの動きを注視している理由です。しかしながら、個人投資家が投資先について自身で精査しなくてよいというわけではありません。年末に向けて、12月に注目したいバフェット銘柄2銘柄を紹介します。
シリウスエックスエムホールディングス[SIRI]:優れたリスク/リターン特性
バークシャー・ハサウェイは、2024年を通して衛星ラジオ企業のシリウスエックスエムホールディングス(以下、シリウスXM)の株式を買い続けており、今ではシリウスXMの筆頭株主となっています。シリウスXMは、2024年に多くの変化を経験しました。同社は最近、リバティ・メディアから分割され、さらに10対1の株式併合を実施しました。これらの動きは、企業構造をシンプルにし、また株価を引き上げることによって、より多くの機関投資家の関心を引くことが狙いでした。
株価は年初来で50%超下落しており、多額の債務と契約者数の減少に苦しんでいます。経営陣はまた、広告収入の低迷を理由に2024年通期の売上高見通しを下方修正しており、事業が軌道に乗っていることを投資家に示す必要に迫られています。
しかし、シリウスXMは引き続き、サブスクリプション事業の成長という長期戦略に注力しています。同社は大金を投じ、多くの視聴者を抱えるポッドキャストの独占配信・広告権を獲得しました。会社側は、これによって契約者基盤が多様化し、自社のプラットフォームにより多くの広告主を引き付けることができると期待しています。2024年第3四半期に、「シリウスXM」と姉妹プラットフォームの「Pandra」を合わせて契約者数は約1万4,000人増加して、合計3,740万人となりました。ポッドキャストの広告収入も6%増加しました。
同社は長期目標として、契約者数は2023年比で25%増の5,000万人、フリーキャッシュフローは同50%増の18億ドルを掲げています。フリーキャッシュフローが増加すれば、債務の返済、自社株買い、増配などが可能になります。
同社にはやるべきことがたくさんありますが、同社の事業は市場のファンダメンタルズとは無関係とみられ、リスク/リターン見通しは良好です。株価収益率(PER)は8倍未満であり、株式市場全体の上昇相場から出遅れています。配当利回りは4%近くあり、持ち続ければ報われる可能性があります。
また、何らかの理由で市場が調整したとしても、同社に対する投資家の期待値はすでに低く、株価がさらに下落する可能性は低いと思われます。
シティグループ[C]:セクター内で割安なため、アウトパフォームが見込まれる
バフェット氏は昔から、銀行株を好んでいました。しかし、ここ数年は銀行セクターにとって厳しい状況で、複数の著名な銀行が破綻して大きな話題になったり、2年にわたる逆イールドカーブによってセクターに深刻な影響が及んだりしていました。米連邦準備制度理事会(FRB)が最近利下げに動き始めたことで、イールドカーブは正常化しています。銀行は通常、短期で借りて長期で貸し出すため、イールドカーブが急勾配な時ほどセクターのパフォーマンスは好調になります。
バークシャー・ハサウェイは、パンデミックの期間中に多くの銀行株を売却し、2024年に入ってからも、それまで大規模に保有していたバンク・オブ・アメリカ[BAC]株を大量に売却しています。しかし、シティグループに関しては約3%の持ち分を維持しています。同社は現在、バークシャー・ハサウェイの3,000億ドル超に上る株式ポートフォリオの1.3%を占めています。シティグループは世界金融危機以降、不振が続いており、最近では不満を募らせる株主、複雑すぎる銀行事業、同社の内部統制に関する合意命令への対応を余儀なくされています。
ジェーン・フレイザーCEOは2021年の就任以降、競争に打ち勝つだけの規模がなく、莫大な資本を消費していた海外の消費者(リテール)向け事業の大半を売却するなど、多くのことを成し遂げています。
メキシコで高い収益を上げている消費者向け事業「Banamex」の分離に向けた取り組みはまだ続いています。これは複雑なプロセスであり、完全売却に失敗した後も予想以上に時間がかかっています。シティグループは近いうちにBanamexを自社のシステムから切り離し、同事業の一部を2025年か2026年に新規株式公開(IPO)によって上場させ、残りの部分も時間をかけて売却する意向です。
これは長いプロセスですが、成功すれば莫大な資本解放につながります。シティグループにはすでに多額の余剰資本がありますが、銀行を対象とした資本規制が確定し、トランプ次期政権下で銀行を取り巻く規制環境が緩和されれば、資本ポジションを長期的に引き下げることが可能になります。同社は自社株買いを実施しており、株価にとって大きな好材料です。シティグループの株価純資産倍率(PBR)は1倍を下回っています。
同業他社のPBRは2倍に近い(中には2倍を上回る)水準にありますが、シティグループのPBRは足元で0.8倍未満です。過去10年間の平均は0.83倍です。事業がシンプルになり、収益性の高い事業に注力できるようになれば、バリュエーションの差は縮小する可能性があります。
足元の株価は約71ドル、1株当たり有形純資産(TBV)は約90ドルです。PBRが1.25倍になれば(それでも同業平均を下回る水準です)、株価は113ドルとなります。さらに、PBRが1倍を下回っているうちに自社株買いが追加で行われれば、1株当たりTBVはもっと高くなります。
現在、シティグループがバリュートラップにあると見る投資家もいるかもしれません。アンダーパフォームが長く続いていたことを考えれば当然です。しかし、バフェット氏は21世紀に入って以降、ウォール街の主要銀行のほとんどに1度は投資してきました。しかし、米証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、バークシャー・ハサウェイは2001年以来2022年まで、シティグループを保有していませんでした。
バフェット氏と同氏のチームは明らかに、今回は違うと考えたのかもしれません。シティグループの配当利回りは3%を超えており、企業の変化を待つ間も配当収入が見込まれます。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。シティグループはモトリーフール・マネーの広告パートナーです。バンク・オブ・アメリカはモトリーフール・マネーの広告パートナーです。元記事の筆者Bram Berkowitzはバンク・オブ・アメリカ、シティグループの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、バンク・オブ・アメリカの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。