モトリーフール米国本社  – 2025年4月8日 投稿記事より

下落相場でマクドナルド[MCD]は3月に史上最高値を更新

株式市場の売りは激しさを増し、ダウ工業株30種平均とS&P500種指数は直近の高値から10%超下落し、ナスダック総合株価指数は本稿執筆時点で20%を超える下落となっています。しかし、すべての株価が下がるわけではありません。

例えば、ファストフード大手のマクドナルド[MCD]は3月に史上最高値を更新し、本稿執筆時点では年初来でわずかに上昇しています。ここでは、ダウ平均の構成銘柄であるこの銘柄が関税に耐えることができる理由と、この配当銘柄への投資が好機と考えられる理由を説明します。

関税に耐性のあるビジネスモデル

マクドナルドは関税の影響を受けないわけではありませんが、貿易摩擦が長期化しても耐えることができます。

マクドナルドは100を超える国で38,000を超える店舗を展開しており、その約93%は独立した事業主によって運営されています。これらのフランチャイジー(加盟店)はマクドナルドに家賃とロイヤルティを支払っています。その見返りとして、飲食物の売上から利益を得ています。フランチャイジーはマクドナルドのブランド力から利益を得る一方、マクドナルド本社は比較的手をかけずに安定したキャッシュフローを生み出すアプローチを享受できるため、両者にとってウィンウィンの関係となっています。

マクドナルドは非常に効率的な運営を行うことで、足元で45.7%という非常に高い営業利益率を誇っており、これは外食チェーンというよりもマイクロソフト[MSFT]のようなソフトウェア企業に近くなっています。

比較のために、チポトレ・メキシカン・グリル[CMG]やスターバックス[SBUX]のような他のレストランブランドの営業利益率が、それぞれわずか17.6%、13.2%であることを考えてみてください。チポトレは自社店舗を所有しています。スターバックスは大半の店舗を所有・運営していますが、ライセンス店舗も展開しています。しかし、両社とも、消費者の裁量に大きく依存した食品・飲料のラインナップを揃えているため、個人消費の後退や関税の影響を受けやすくなっています。

マクドナルドの売上高は過去10年間あまり伸びていませんが、営業利益率は着実に上昇しているため、莫大な売上高を営業利益に転換しています。

マクドナルドを分析する際、企業業績と全店舗の総売上高が大きく異なることを理解することが重要です。2024年、フランチャイズ店舗を含むシステム全体の売上高は1,300億ドルでした。システム全体の利益率は、ロイヤリティや賃料は営業経費をあまり必要としないために利益率が高いマクドナルド本社の利益率ほど、高くはありません。

マクドナルドにとって、ハンバーガーとフライドポテトを売ることが本当のビジネスではありません。むしろ、フランチャイジーが収益性の高い店舗を運営し、ビジネスを継続して家賃やロイヤリティを支払い続け、さらに多くの事業主がマクドナルドのビジネスモデルに参入することを望んでいます。

総じて、マクドナルドはフランチャイズモデルと顧客への価値提供に重点を置いているため、景気循環の変動から比較的影響を受けにくいと言えるでしょう。

「4つのD」戦略で競争上の優位性を高めることに注力

マクドナルドは近年、いくつかの改善を行い、それが堅調な業績に貢献しています。その大きな要因はロイヤルティプログラムへの投資です。2024年、ロイヤルティ会員に対するシステム全体の売上高は2023年比で30%増加し、2024年のシステム全体の売上高の23%を占めました。マクドナルドは「4つのD」戦略(デジタル、デリバリー、ドライブスルー、レストランの開発(Development))をさらに強化し、顧客が望むものをより手軽かつ迅速に、よりお得な価格で注文できるようにしています。

こうした改善は、不況時や関税が長期化する時期にマクドナルドの業績向上に役立つでしょう。過去、マクドナルドは値上げを正当化し、コスト増を顧客に転嫁することに成功してきました。より良いサービスと利便性を提供することで、マクドナルドは競合他社との差別化を図り、景気後退期でも来店客を増やすことができると見られます。一部の顧客は、レストランでの食事から、より安いオプションや食料品に食費をシフトする可能性があり、それはマクドナルドにとって利益となると考えられます。

マクドナルドの売上高と利益率の10年間の推移を参照すると、第1期トランプ政権下の2018年の貿易摩擦、新型コロナのパンデミック、ここ数年のインフレ期など、過去の市場の下落や景気減速期においても、同社の業績があまり落ち込んでいないことがわかります。

マクドナルドのフランチャイズモデル、業務改善、ポイントプログラムへの投資、モバイルオーダー、ピックアップ、デリバリー、そして市場でのポジショニングは、同社が経済の不確実性に耐えるのに役立ちます。マクドナルドの株価が2025年に入ってから、幅広い株価指数と比較してよく持ちこたえているのは、こうした要因によるのかもしれません。

マクドナルド、48年連続で増配・積極的な株主還元を実施

資本負担の軽いビジネスモデルと高い利益率のおかげで、マクドナルドは配当と自社株買いを通じて、株主に多額の利益を還元することができます。マクドナルドの配当性向は59.2%で、利益を配当金に回し過ぎているわけではありません。マクドナルドは48年連続で増配しており、信頼性の高い受動的収入源となっています。

過去10年間で、マクドナルドは株式数を4分の1近く減らし、配当金を2倍超に増やしています。自社株買いと配当金の増加の両方を通じて、株主に資本を還元していることがわかります。本稿執筆時点で、マクドナルドの利回りは2.4%です。

マクドナルドは急成長しているビジネスではありません。しかし、景気減速や不況時にも業績を維持できる安定した企業を探している投資家にとっては、優れた安全な株式でしょう。フランチャイズを多用するビジネスモデルは安定したキャッシュフローにつながり、予測可能な増配や自社株買いを支えています。

これらを総合すると、マクドナルドはリスク回避型の投資家や、株式市場全体がどのような動きをしていても頼りになる配当株を探している人にとって、じっくりと検討する価値があるかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Daniel Foelberは、記載されているどの銘柄も保有していません。モトリーフール米国本社は、チポトレ・メキシカン・グリル、マイクロソフト、スターバックスの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は以下のオプションを推奨しています:マイクロソフトの2026年1月満期395ドルコールのロング、マイクロソフトの2026年1月満期405ドルコールのショート、チポトレ・メキシカン・グリルの2025年3月満期58ドルコールのショート。モトリーフール米国本社は情報開示方針を定めています。