先週(11月25日週)の動き:週初の大幅下落を埋めきれずNY金週足は反落、米利下げ見通し鈍化も売り材料に 国内金価格に円高圧力高まる
先週(11月25日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は週足で反落となった。週初の11月25日は、前週末比93.70ドル、3.16%安と1日の下げ率としては2024年6月7日の2.75%を上回り、2021年6月17日の4.65%以来の大きな下げに見舞われることになった。その後、サンクスギビング(感謝祭)の休日を挟み週末にかけて続伸したものの週初の下げを埋められずに終了した。
11月27日には取引の中心となる限月(active month)が12月物から2025年2月物に移行している。今回の移行にともない2ヶ月分の金利相当分のプレミアムが価格に乗っており、週末29日の終値は2,681.00ドルとなり、前週末比16.20ドル、1.15%の下落となった。
11月25日の大幅下落の背景
週初、11月25日の大幅下落は、ウクライナを巡る地政学リスクの上昇に反応し、週足で5.5%と1年8ヶ月ぶりの大幅上昇となった前週(11月18日週)の過度の緊張が終息したことに加え、中東情勢にもイスラエルとレバノンの停戦合意への道が示されたことでファンドの手じまい売りが膨らんだものだった。
さらにトランプ次期米大統領が、財務長官に関税賦課や財政拡張に慎重派とされる投資ファンド経営者スコット・ベッセント氏を指名したことも好感され、主要株式指標が最高値を更新。リスクオンセンチメントの高まりもNY金の売り要因となった。
経済指標は米経済の堅調さを示唆
金市場を取り巻く金融環境面では、引き続き米経済の堅調さを示唆する指標の発表が続き、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げテンポが当初想定より緩やかなものになるとの見方もNY金の上値を抑えた。
先週の当欄で注目指標とした米10月個人消費支出(PCE)統計でのPCEコア価格指数(デフレーター)は、前年同月比2.8%上昇と、伸びが加速。パウエル議長の「経済は利下げが必要とのシグナルを発していない」という11月14日の発言内容をはじめ、FRB高官が利下げに慎重な姿勢を示していることを裏打ちする内容となった。ただし、加速したものの市場予想に沿ったものだったことで、解釈としては12月利下げ見通しを変えるほどの内容ではないと受け止められた。FRBは12月に0.25%の利下げをした後、次回2025年1月FOMC(米連邦公開市場委員)では金利水準を据え置くとの見方が高まっていることも、NY金には逆風となっている。
先週(11月25日週)のNY金のレンジは2,605.30 ~2,723.20ドルと100ドル超に拡大
週後半に為替市場で対円を中心に主要通貨に対しドルが弱含みに推移し、前週に一時108ポイント台を超えたドル指数(DXY)は、105.737で終了。米長期金利の指標10年債利回りも4.175%と10月18日以来の低水準で終了した。
こうした中で先週のNY金のレンジは2,605.30 ~2,723.20ドルと、前週同様に100ドル超に拡大した。想定レンジを2,660.00~2,725.00ドルに置いていたのは、ウクライナを巡る買いは一巡と判断したためだが、先週のイスラエル、レバノン間の武装組織ヒズボラを巡る停戦協議の進展は想定外だった。
国内金価格は円高が下押し圧力を高める
一方、国内金価格はDXYの大幅下落の背景にもなった米ドル/円相場の急落(円高)が大きく影響し、週末にかけ下押し圧力が高まった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)の週末終値は、1万2916円と再び1万3000円割れに転落。JPX金の週足は前週末比542円、4.02%安と前週(11月18日週)の週足上昇分(531円、4.1%高)のすべてを失う形になった。
JPX金は11月29日に、一時11月18日以来の安値となる1万2796円まで下落した。レンジは1万2796~1万3560円(上下764円)と前週(上下708円)を上回る規模となった。想定レンジは1万3100~1万3560円としており為替水準の想定のずれが誤差につながった。
なお、11月29日に発表された11月の東京都区部消費者物価指数(CPI)の予想比上振れが、一時6週間ぶりの149円台の円高につながりJPX金の売り手掛かりとされた。その後30日未明、植田日銀総裁が「一段の円安はリスクが大きい。場合によっては政策変更で対応しないといけなくなる」との見解を示したと日本経済新聞電子版が報じ、29日NY時間にドル円相場は一時149.47円まで下落(円高)した。
今週(12月2日週)の見通し:買い手掛かり一巡でレンジの下値を探る動き、11月米雇用者増加数とパウエル議長などFRB高官の発言に注目
NY金2,590.00~2,680.00ドル、JPX金1万2500~1万2947円
今週(12月2日週)の米国は、月初のいわゆるイベント週である。12月3日の9月求人件数(JOLTS)をはじめ、12月6日の11月雇用統計まで労働指標の発表が続く。
特に雇用者数は10月に前月比1万2000人増まで縮小したことから注目度は高い。10月分はハリケーンや航空機大手ボーイング社のストライキの影響で伸び悩んだが、11月分は反動もあり急増が予想されている。一方、求人件数の減少や人員削減計画など基調的な労働市場の減速を指摘する見方も注目されている。雇用者増加数の市場予想は20万人(ダウジョーンズ)となっているが、仮に下振れ、近い将来の失業率の上昇を示唆するとNY金には押し上げ要因となりそうだ。
今週は12月17~18日のFOMCのため、7日以降発言を控えるブラックアウト期間入りを前にFRB高官の発言機会が連日予定されている。注目は本日2日(月)のウォラーFRB理事の講演と、4日(水)の討論会に参加予定のパウエル議長の発言である。他にもこれまでの発言内容の市場への影響度から、ウィリアムズ・ニューヨーク地区連銀総裁、デイリー・サンフランシスコ地区連銀総裁、ボウマンFRB理事の発言にも注目している。
今週のNY金は、買い手掛かり材料が一巡する中で今後のレンジ形成の下値を探る動きを想定している。取引が2月物に移行したことで水準は切り上がったことを考慮しつつも、下値を2,590.00ドル、上値を2,680.00ドルと想定。
JPX金は11月29日の夜間取引で記録した高値を上限にし、想定レンジは1万2500~1万2947円となる。