先週(4月14日週)の動き:NY金週足続伸、4月16日には前日比106.00ドル高・上昇率3.3%と1日としては5年ぶりの大幅上昇、国内金価格も円高を跳ね返し最高値更新
先週(4月14日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、さらに想定外とも言える規模で上値を伸ばし、3,300ドル台に達することになった。
前週末4月11日にかけ3営業日だけで254.40ドル8.5%もの上昇を見せ、価格水準も3.200ドル台半ばまで一気に切り上げた。さすがに過熱感は否めず、週明け14日は利益確定売りに反落した。それでも前週末比18.30ドル安と小反落程度で、小休止ということに。
実際に翌15日に反発すると16日にはNY時間外のアジア時間からロンドン、さらにNYの時間帯を通し、買い優勢の流れが一貫して続きNY金の通常取引は前日比106.00ドル高の3,346.40ドルで終了した。上昇率3.3%で、1日の上昇率としては2020年4月9日の4.0%以来の大きさとなった。終値ベースでの最高値更新とともに取引時間中の高値も更新した。
翌4月17日は18日がイースターのグッド・フライデー(聖金曜日)の祭日で3連休となることから、薄商いの中で利益確定やファンドのポジション(持ち高)調整の売りで小反落した。前日比18.00ドル安の3.328.40ドルで終了した。この日もNY時間外のアジア時間に前日の余勢を駆る形で一時3.371.90ドルまで買われ、前日に付けた取引時間中の史上最高値をさらに更新した。
先週(4月14日週)は4営業日であるものの、NY金の週足は83.80ドル、2.6%の続伸となった。レンジは3,208.70~3,371.90ドルで値幅は163.20ドルと大きいが、前週(292.60ドル)より縮小した。
米中貿易摩擦は高まる一方、話し合いの糸口なし
前週(4月7日週)、市場のかく乱要因となった米国株、米ドル安、米国債安のトリプル安だが、米国債安は落ち着きを取り戻した。一方、米通商政策を巡る不確実性はむしろ拡大気味で推移した。
4月14日に欧州連合(EU)は米国と貿易交渉を始めたが意見の相違を埋められず、ほとんど進展は得られなかったと伝わった。
さらにトランプ米大統領は、「激化する米中貿易摩擦の解決に向けた交渉を開始するには、中国側からの接触が必要だ」との見解を示したものの、中国側も強硬な姿勢を崩しておらず、沈静化の兆しが見えない。むしろ4月16日には米ブルームバーグ通信が、「中国政府は米国の輸出の象徴である米ボーイングの機体の納入停止を決めたほか、米企業からの航空機関連の機器や部品の購入も停止するよう求めた」と報じた。米中間の摩擦の高まりは、双方が歩み寄りの姿勢を見せないままエスカレートする中で、世界経済への悪影響が意識され安全資産としての金への資金シフトが加速し、前述のように大幅高に至った。
利下げについてはインフレ動向から慎重判断…パウエルFRB議長
現地時間4月16日13時30分からは、シカゴ経済クラブでパウエルFRB(米連邦準備理事会)議長が講演。関税政策などを背景に景気の不確実性や下振れリスクが高まったとしつつも、関税に伴う物価上昇が持続的なインフレ高進を引き起こさぬよう政策変更(利下げ)を急がない姿勢を示した。
発言内容はタカ派的と受け止められ、株式市場は下げ幅を拡大する一方で、金市場には逃避資金が集まり上昇が加速した。ただし、後述するようにトランプ米大統領によるパウエルFRB議長解任発言が飛び出すことになった。
史上最高値更新JPX金1万5451円、店頭小売価格(税込み)1万6855円
最高値の更新が続くNY金に伴い、国内金価格も先週(4月14日週)は最高値の更新となった。前週(4月7日週)に見られた米国売り(トリプル安)の中で米国債売りこそ沈静化したものの、米ドル安・円高の流れが継続したことで(一時1ドル=141.66円)、国内金価格には逆風となった。それでもNY金の週足大幅続伸で円高による相殺分は消化され、4月1日以来となる史上最高値の更新となった。
大阪取引所の金先物価格(JPX金)は4月17日に一時1万5451円まで付け取引時間中の最高値を更新、さらに当日の終値は1万5341円と共に最高値を更新した。週末18日は欧米市場休場の中で小動きとなり1万5350円で終了。
JPX金の週足は前週末比411円2.75%の続伸となった。レンジは1万4939~1万5350円で値幅は669円と前週より300円ほど縮小したものの、値動きは依然として大きい。ちなみに指標的な店頭小売価格(10%税込み)も17日1万6855円と最高値を更新している。
今週(4月21日週)の動き:トランプ米大統領によるパウエルFRB議長解任発言の余波に注意、相場は過熱しておりリスク管理を万全にしたい
マインド系指数の低下が続く中、PMI(速報値)に要注目
今週(4月21日週)は主要経済指標では住宅関連指標があるが、23日(水)のS&Pグローバル発表の4月PMI(速報値)に注目したい。関税を巡る不透明感が続く中でマインド系指数の低下が続いており、早晩実体経済の指標の悪化に波及するとみられる。その中で一定のインフレ継続は、以前から話題の景気減速・後退とインフレが同時に進むスタグフレーションが現実のものとなる。金(ゴールド)が買われやすい環境だが、足元の金価格の動きを見るかぎり市場はそれを織り込みにかかっていると言えそうだ。
さらに23日にはワシントンにてG20財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。ベッセント米財務長官は個別に各国財務相との間で会談を持つと見られ、特に日米間では為替相場がテーマとされるだけに要注意だ。
解任発言に高まる市場での危機感
4月17日、トランプ米大統領はパウエルFRB議長が行動を起こすのが「遅すぎる」とし、「満足していない」と非難した。そして、パウエル議長の解任は「早ければ早いほど良い」とし、FRBに対し改めて早期利下げを要求した。「私が彼を辞めさせたいと思えば、即座にそうできる」とも述べていた。また18日には、トランプ米大統領は議長を解任できるかどうかを検討していると、ハセット米国家経済会議(NEC)委員長が述べたと伝えられた。
中央銀行の政治からの独立は金融市場では不可侵と捉えられるものゆえに、この発言はそのまま米ドルの守護神でもあるFRBを揺るがし、米ドルの信認を傷つけるものとして市場では危機感が高まっている。ドル安とともに本稿執筆中の4月21日午前の時点で主要通貨に対するドル安と同時進行でNY金の上昇が加速し、3,400ドルに接近する動きを見せている。
このところ金市場では先物市場のみならずOTCと呼ばれる現物の相対市場への資金流入が急拡大しており、現物が品薄との指摘も出ている。一方通行的な上昇が続いているが、過熱は明らかであり、先物などレバレッジを利かした取引にはリスク管理を万全にして乱高下にも備えたい。