先週(3月31日週)の動き:NY金は連日の最高値更新から益出し売りに急反落、JPX金も最高値更新から週足5週ぶりに反落
先週(3月31日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、4月2日のトランプ米大統領による相互関税の詳細が発表されると、米株式など金融市場が大荒れ状態となったことを受け、上下の値動きが大きくなった。
関税賦課の対象国の広さと特定国への関税率の高さが想定を上回ったことで、市場は世界経済の先行き懸念を強めた。中国やカナダなどが米国に対し報復関税を発表したことから世界貿易戦争への懸念が高まり株式市場を中心に債券、為替市場とリスクオフ(リスク資産回避)センチメントが広がった。
こうした中でNY金は、前週(3月24日週)から続く史上最高値更新の動きが4月2日まで5営業日連続で続いた後、週末にかけて株式市場が大きく売られる中で、史上最高値圏に位置していることもあり益出し売りが膨らんだ。週末4月4日のNY金は、時間外のアジアからロンドン、さらにNYの早朝まで3,130ドルをやや上回る水準を横ばいで推移した。
ところが、米株市場の下げが加速すると、NY金にも売りが波及した。米株市場は下げ幅を拡大し、結果的に新型コロナ感染拡大後の規模にせまる暴落状態となった。NY金は利益確定売りが続いた。これは株式取引などの清算や、取引維持のための追加の証拠金を必要とするファンドなどが、キャッシュ捻出の売りを出したものとみられた。
4月4日のNY金の終値は3,035.40ドルで前日比では86.30ドル安となった。週足は前週末比78.90ドル2.53%安で5週間ぶりの反落となった。つまり4日の下げで週足はマイナスに転じたことになる。レンジは3,032.70~3201.6ドルで上下の値幅は168.90ドルに拡大した。
トランプ関税発表を受けNY金も乱高下
広く報じられたように4月3日から米国への全輸出品に最低10%の関税が賦課される。同時に示された国別の関税率チャートでは対中国が34%、欧州連合(EU)は20%、日本は24%、ベトナムは46%とされた。なお中国に関する関税34%は合成麻薬フェンタニルの米国への流入に関して先に賦課されていた20%の関税に追加されることから、関税率は合計で少なくとも54%に達する見込みとなった。
発表に対する市場の反応は幅広くネガティブでNY金の値動きも大きくなった。発表は米東部時間4月2日16時と取引の薄い時間帯だったが、発表を受けいったん大きく売られ3,150ドル割れまで付けた。その後急反発し、そのまま3,201.60ドルまで急伸、最高値の更新となった。その後も40ドルほどのレンジ取引が続き、時間外取引は3,190.30ドルで終了した。高値更新とはいえ、薄商いの中で瞬間的に付けた価格となる。
キャッシュ捻出の金売りは短期で終息か
前述した4日の米株価下落拡大は、中国が報復措置として米国からのすべての輸入品に34%の追加関税をかけると発表したことが、米景気の先行き不透明感を高め、売りにつながっていると捉えている。
ポイントは、今回の株価の下げはその規模から暴落との表現も使われるが、何か突発的な金融危機につながるようなイベントに反応したものではないということである。それゆえ金(ゴールド)の換金売りが一巡するのも早いとみられる。
JPX金4月1日に最高値更新(1万5253円)も上げ幅すべて失う
NY金同様に先週(3月31日週)の国内金価格も上下の振れ幅が拡大した。大阪取引所の金先物価格(JPX金)も、NY金に連動する形で前週後半からの最高値更新の動きが4月1日まで4営業日連続し、この日、取引時間中(1万5253円)および終値(1万5192円)ともに最高値を更新した。
ただし、そこをピークにその後は週末にかけてNY金の下げに連動するとともに、米ドル/円相場が3円ほど円高に振れたことで上げ幅を全すべて失うことになった。4日のJPX金の終値は1万4656円で週足は前週末比357円2.4%の5週間ぶりの反落となった。
NY金の現在の価格水準では、米ドル/円相場1円の変動で国内価格は100円ほどの変動要因となる。レンジは1万4426~1万5253円で値幅は827円と年初来で最大となった。
今週(4月7日週)の見通し:10日(木)発表の3月米消費者物価指数(CPI)と11日(金)発表の4月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)に注目、モメンタム喪失のNY金は日柄整理、JPX金1万4000~1万4500円のレンジ
トランプ関税発動後の混乱から米景気後退観測も高まっており、足元で一定のインフレ傾向が持続されていることから、いよいよ市場はスタグフレーションを意識し始めている。
この点で今週(4月7日週)は4月10日(木)に発表される3月の米消費者物価指数(CPI)に注目したい。市場予想では前月比0.1%上昇と、2024年7月以来の小幅上昇が見込まれている。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.3%上昇、前年同月比3%上昇の見込みとなっている。予想通りならば2021年以来の低い年間インフレ率となる。ただし、市場では一時的なものとの見方が多く、トランプ関税による影響がいつ物価に表れるかに関心が向けられることになる。
さらに速報値になるが11日(金)に発表される4月のミシガン大学消費者信頼感指数も注目となる。このところ消費者のインフレ期待が上昇しており、FRB(米連邦準備制度理事会)も注視しているとみられる。3月の確報値では5年超の期待インフレ率は4.1%と1993年以来32年ぶりの高水準だった。
9日には3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)会合の議事要旨が発表される。関税を巡る不透明要因が金融政策の判断を難しくしているが、メンバーがどのように現状分析と見通しを示していたか、今後の動向を探る上での参考としたい。
こうした中で今週のNY金は改めて3,000~3,100ドルのレンジを固められるかがポイントになる。先週前半までのモメンタムが失われただけに、値固めモードの日柄調整という印象となる。JPX金も同様にNY金の値動きに沿う形で1万4000円台前半~1万4500円のレンジとなりそうだ。