先週(4月14日週)の振り返り=141円台まで米ドル続落

米ドル/円と金利差との逆相関は一巡

先週の米ドル/円は続落、この間の安値を更新し、一時141円台まで下落しました(図表1参照)。4月17日に米国の関税政策を巡る日米交渉が行われましたが、それを受けて一段と円高になる可能性が警戒されたという解説が一般的だったでしょう。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年1月~)
出所:マネックストレーダーFX

米ドル/円の続落は、日米金利差(米ドル優位・円劣位)との関係を見ると、前週(4月7日週)の逆相関、米金利上昇に伴う日米金利差拡大を尻目に米ドル/円が下落する関係は一服し、順相関、つまり日米金利差縮小で米ドル/円下落という一般的な関係に基本的には戻りました(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「米国売り」再燃と日米交渉に注目

米金利上昇とは米国債価格の下落であり、それと米国株、米ドルの下落が重なることを「トリプル安」と言います。そして、本来的に米ドル高をもたらす可能性のある米金利上昇でも米ドルが下落することを「悪い金利上昇」と呼びます。また、米国株、米国債、米ドルが一緒に売られることは「米国売り」とされます。

要するに、先週(4月14日週)はそうした「米トリプル安」、「悪い金利上昇」、「米国売り」が一息ついた形となりました。ただ、それでも米ドル安・円高傾向が続いたのは、上述のように関税政策を巡る日米交渉が円高をもたらすリスクへの警戒が強かったということのようです。

以上のように見ると、この先も米ドル/円の下落が続くかは、日米交渉が円高をもたらすか、または「米国売り」が再燃するかなどが主な目安になりそうなので、この2点について考えてみたいと思います。

今週(4月21日週)の注目点=日米の為替調整と「米国売り」の関係

「米国売り」は簡単に終わらない?

この2点は、基本的には両立が難しいものでしょう。つまり、「米国売り」リスクが残る中で、日米交渉において円高・米ドル安リスクが高まった場合、「米国売り」拡大が制御不能になる懸念があるからです。その意味では、「米国売り」リスクがこの先も続くかが、日米交渉の円高リスクにも影響するのではないでしょうか。

この「米国売り」、つまり米国株と米国債、米ドルという「トリプル安」、米金利上昇にもかかわらず米ドル下落となった「悪い金利上昇」は、トランプ政権1期目、2018年にも見られた現象で、この時は1~3月にかけて2~3ヶ月続きました(図表3参照)。そうしたことを参考にすると、今回の場合も「悪い金利上昇」、「米国売り」がもう終わったか、まだ微妙ではないでしょうか。

【図表3】米ドル/円と日米10年債利回り差(2016~2020年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

「米国売り」リスクに注意する必要あり

もしも、「米国売り」リスクがまだ完全に払しょくされていないなら、そのような中での米ドル安・円高への誘導は、米ドルのコントロール不能の下落をもたらしかねない懸念があるのではないでしょうか。

一般的には、当初の予想以上に米ドル安・円高が広がり始めたのは、日米間の円安是正の可能性も一因との理解が多い気がしますが、私はむしろ「米国売り」リスクに注意する必要があると思います。仮に日米が円安是正を目指していたとしても、「米国売り」リスクが拡大し、円安是正の米ドル安・円高がコントロール不能のリスクが出てきた場合はいったん立ち止まる可能性があり、最近の状況はそれに近いのではないでしょうか。

今週(4月21日週)の予想レンジは140~145円

これまで見てきたように、「米国売り」が再燃するリスクが払しょくされるまでは米ドルの反発は限られ、下値が広がりやすい状況が続く可能性が高いのではないでしょうか。ただし、ここまで米ドル安・円高が続く中、為替市場のポジションは大きく米ドル売り・円買いに傾斜していると見られ、その修正が米ドル/円の下落の歯止め役となり、きっかけ次第では米ドル反発の後押し役になる可能性はあるでしょう。

なお、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、4月15日時点で買い越し(米ドル売り越し)がこれまでの最高を大きく更新し、17.1万枚と一段と拡大しました(図表3参照)。低金利の円という意味では異例の大幅な買い越しであり、為替市場ではさらなる米ドル売り・円買い余力が限られ、きっかけ次第では米ドル買い戻しが広がりやすい状況が続いているという面がありそうです。以上を踏まえ、今週(4月21日週)の米ドル/円は140~145円で予想したいと思います。

【図表4】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成