先週(10月14日週)の動き:米政治リスクへの対応、内外金価格連日の最高値更新

先週(10月14日週)の金市場は、国内外ともに週後半に連日史上最高値の更新が続いた。ニューヨーク金先物価格(NY金)は10月17日、9月26日以来3週間ぶりに2,700ドル台に乗せ、終値ベースでも初めて2,700ドル超で取引を終了した。翌10月18日にはさらに上値を追い、取引時間中の高値は2,737.80ドル、終値は2,730.00ドルといずれも史上最高値を更新した。週足は前週末比53.70ドル、2.0%の続伸となった。

先行き不透明感への備えとして買われる金(ゴールド)

米国を中心に金融経済のリスク要因が特段高まったわけではなく、中東を中心とする地政学リスクにも大きな変化の見られない、いわば無風状態の中での最高値更新だった。買いの手掛かりとなっているのは、複合的なリスクに対する安全資産としてのヘッジ買いで、先週は特に約3週間後に迫った米大統領選挙と議会選挙の不透明感に備えるポートフォリオの見直しに際して、金(ゴールド)に買いが入ったとみられた。NY金が水準を切り上げ、同じタイミングで、米ドル/円相場が米ドル高円安に振れたことから、国内金価格(JPX金)にはダブルの押し上げ要因となり、JPX金および店頭小売価格ともに過去最高値を更新することになった。

週を通して堅調に推移

先々週(10月7日週)末に2,676.30ドルと高値圏で取引を終了していたNY金は、先週は週を通し取引時間中にも節目の2,650ドルを割れることなく、堅調に推移した。10月10日に発表された米物価指数が傾向的には鈍化を示したものの、前月比ではわずかながらプラスとなったこともあり、FRB(米連邦準備制度理事会)による今後の利下げの動きが想定より緩やかになるとの見通しが固まった。その中で、米長期金利が2ヶ月半ぶりの高水準となる4%超を維持、ドル指数(DXY)も103ポイント台後半のやはり2ヶ月半ぶりの高水準で推移するという向かい風の中での堅調展開だった。

9月小売売上高の結果は力強い経済成長を裏付ける

先週(10月7日週)の注目指標は10月17日に発表された9月の小売売上高で、前月比0.4%増と市場予想の0.3%増を上回った。前回8月の結果は0.1%増だったのでそれを上回る結果となった。広範囲の分野で増加し、7~9月期も経済が力強い成長を維持したとの見方を裏付けた。指標となる米10年債利回りは4.1%を超える水準に上昇し、ドル指数(DXY)も一時103.874と8月2日以来の水準に上昇。その中でNY金は最高値を更新した。

結局、先週のNY金のレンジは2,654.40~2,737.80ドルとなり、想定レンジとした2,600~2,690ドルを上下限共に大きく上回ることになった。米大統領選など米政治リスクの上昇予測に基づいた資金シフトの活発化に加え、市場に出る売りの薄さが値動きを軽くしている印象が強い。

国内金価格は連日の最高値更新

一方、国内金価格は前述のようにNY金の上昇の中で、米ドル/円相場が米ドル高円安に傾いたことで週後半にかけて連日の最高値更新となった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、4営業日連続で取引時間中の最高値を更新し、11日は一時1万3113円まで付け1万3086円で終了。週足は前週末比402円、3.2%高の3週続伸となった。

米ドル/円相場は、週を通して8月上旬以来の149円台の水準で推移した。一時150.32円(FactSet調べ)まで円安が進んだことが、JPX金を押し上げた。なお、NY金が9月26日に2,700ドル近辺で取引されていた際の米ドル/円相場は144円台後半の水準だった。つまり、現在5円ほど円安に振れていることが国内金価格を大きく押し上げている。NY金が2,700ドル前後の水準にあるとき、米ドル/円相場1円の変動はJPX金には85円ほどの変動要因となる。

なお、先週は10%の消費税込みで表記される金現物の店頭小売価格も、10月18日に1万4347円(田中貴金属発表)と最高値を更新した。

新興国の中銀当局者、金準備増強見通し示す異例の発言

先週は10月14~15日の日程でロンドン貴金属市場協会(LBMA)の年次コンファレンス(年次集会)が米フロリダ州マイアミで開かれた。現物取り扱い業者を中心とする組織で、年に1回開催されており2025年は京都での開催が予定されている。需要サイド、供給サイドそれぞれのトピックにそって発表が続くが、2024年は需要に関連するセッションに複数の新興国の中央銀行関係者が登壇し、金保有の拡大意向を示す異例の発言をし、注目を集めた。

具体的にはメキシコとモンゴル、チェコの中銀で外貨準備を担当する当局者が登壇した。流動的な中東やウクライナ情勢、米大統領選挙を含む政治的分断など多くの不確実性を考えると、各国の準備資産に占める金の割合が今後数年間で増加する公算が大きいとの認識を共有していることが判明した。これらは、2024年6月に国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC、本部ロンドン)が発表した、2024年版のゴールドに関する中央銀行調査報告(2024 Central Bank Gold Reserves Survey)にて指摘されていたものでもある。ただし、中央銀行の担当者が直接公の場で発言するのは異例と言える。

今週(10月21日週)の見通し:23日(水)区連銀経済報告(ベージュブック)とFRB高官の発言内容に注目  

想定レンジNY金2,720~2,780ドル、JPX金1万3050~1万3250円

今週(10月21日週)は、米国関連では9月の中古、新築住宅販売件数など住宅関連指標が発表される。

金市場を見る上での注目は、10月23日(水)に発表される11月連邦公開市場委員会(FOMC)の基礎資料となる地区連銀経済報告(ベージュブック)、および10月24日に発表される週次の新規失業保険申請件数となる。さらに来週以降発言自粛期間(ブラックアウト)に入るのを前に、FRB高官の発言機会が連日予定されており、こちらにも注目したい。

また、国際通貨機関(IMF)の秋季総会も予定され、国際金融に対する問題提起もあり、これらは中長期的なゴールドの見通しを組む手掛かり材料となる。

こうした中で欧米、特に米国を中心に機関投資家のゴールドへの積極姿勢が今週も続くとみられることから、海図なき航海にも例えることができるNY金の高値追いが続きそうだ。NY金の想定レンジは史上最高値更新を見込む2,720~2,780ドル。JPX金はドル円相場が147~149円ほどとした上で、1万3050~1万3250円とやはり高値更新を見込むレンジを想定している。