先週(2月9日週)の動き:FRBの利下げ可能性を探るNY金、経済指標への関心高める/国内金価格は円高が上値を抑制
先週(2月9日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、大幅反落後の調整局面入りから2週目に入った。下値を模索する動きが見られた前週(2月2日週)とは異なり、心理的節目でもある5,000ドルを挟んだレンジ相場に移行した。5,000ドルを固める展開とも言えるが、値動きは不安定だった。週後半には2営業日連続で、1日の価格の振れ幅が100ドルを超える荒れた展開となった。
手掛かり材料としては、1月中は存在感の大きかった地政学リスクに代わり、今後のFRB(米連邦準備制度理事会)の政策方針の見極めにつながる米経済指標に対する関心が市場で高まった。1月30日の金(ゴールド)の大幅反落では、トランプ米大統領がケビン・ウォーシュ元FRB理事を次期FRB議長に指名したことが、きっかけの一つとされた。これにより、年後半以降の金融政策の方向性への関心が高まったことも、経済指標への注目につながっている。
2025年12月米小売売上高は予想外の低迷
まず2月10日に発表された2025年12月の小売売上高は、前月比横ばいと、市場予想(0.4%増、ロイター調べ)を下回った。年末商戦は想定よりも低調だったと受け止められた。所得の伸び悩みや貯蓄率の低下がみられるなか、個人消費の鈍化を思わせた。
同じ日に発表された2025年10~12月期の米雇用コスト指数(ECI)も0.7%上昇と、伸びが前四半期から小幅鈍化し、2021年4~6月期以来、4年半ぶりの低水準となった。
NY金、1月米雇用統計を受け乱高下
当初の2月6日から遅れて2月11日に発表された1月の米雇用統計は、NY金にはやや波乱要因となった。(非農業部門)雇用者数は前月から13万人増加と、市場予想の7万人増を大きく上回り、13ヶ月ぶりの大幅増となった。失業率は4.3%と、前月の4.4%から改善した。
波乱要因となったのは、結果の解釈をめぐって市場に温度差が生まれたためである。FRBの政策方針を左右する指標であるため、好調さを表すヘッドラインをそのまま受け取るのか、内容を精査して実質ベースで判断するのかで、解釈が分かれた。一般的には、労働市場が安定化しつつある兆しが示されたと受け止められた。FRB高官の多くが慎重姿勢を示し、インフレ動向を見極める中、当面は金利を据え置くとの見方が広がった。
一方で、2025年12月の雇用者数は、当初の5万人増から4万8000人増に下方修正された。ロイターによると年次改定もあり、今回2025年通年では18万1000人増と、58万4000人増から下方修正され、2024年通年の145万9000人増から大きく縮小した。
そのため、1月の雇用者数の急増をもって「労働市場が実質的に転換した」と見なすべきではない、との指摘がある。また、今回の結果をそのまま「安定を示すサイン」と受け止めるべきではないとされている。
実際に2月11日のNY金は、一時5,144.5ドルまで買われ、1月30日の大幅下落後の戻り高値を付けていたが、雇用統計を受け乱高下した。発表前の5,100ドル超の水準から急落し、一時5,036.5ドルまで付け、売り一巡後も乱高下が続いた。値動きが一巡したのは終盤で、売りの波が吸収されたことで戻りに転じ、前日比プラス圏ながら上げ幅を削り5,098.5ドルで終了した。
1月米CPIは予想を下回る前年比2.4%上昇
主要指標の最後は2月13日発表の1月の米消費者物価指数(CPI)だった。物価の瞬間風速を示す前月比で0.2%上昇と、前月の0.3%から鈍化した。前年比では2.4%上昇と伸びは前月の2.7%から縮小。市場予想の2.5%も下回った。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年比2.5%上昇。こちらも伸びは前月の2.6%から鈍化し、2021年3月以来、最小の伸びとなった。
この結果を受け、FRBによる利下げ観測が高まった。NY金は買いが優勢となり、終盤に水準を切り上げた。前日比97.9ドル高の5,046.3ドルで週末の取引を終了した。
FRBの政策方向を読むNY金、不安定な状況続く
先週(2月9日週)のNY金は、FRBの金融政策の方向性を読む手掛かりとなる米主要指標の発表が重なったこともあり、その結果に反応して上下した。最終的には5,000ドル超を維持して取引を終了した。2月13日の引けは前述のように5,046.3ドル、週足は前週末比66.50ドル(1.34%)高の反発となった。レンジは4,900.0~5,144.5ドルで値幅は244.50ドルと上下に大きく振れた前週の690.7ドルから半分以下に縮小した。一方で、週後半は1日の値動きが100ドルを超えるなど、不安定な状況は続いている。
円高に上値を抑えられた国内金価格
先週(2月9日週)の国内金価格は、こうしたNY金の値動きに加え、米ドル/円相場の変動が大きく影響し、上値を抑えることになった。米ドル/円相場は一時152.27円まで円高が進み、週足は前週末比3.84円(2.45%)の円高ドル安となり、国内金価格には押し下げ要因となった。
大阪取引所の金先物価格(JPX金)の週末2月13日の終値は2万5168円で、週足は前週末比38円(0.15%)の小幅反発となった。週初めにNY金が自律反発的な動きを見せ、5,000ドル超に上昇した際に付けた、2万6307円が先週の高値となった。
レンジは2万4728~2万6307円で値幅は1579円と、NY金と同様に大荒れとなった前週の4019円から半分以下に縮小した。
中国人民銀行(中央銀行)、15ヶ月連続で金準備増加
金市場で注目度が高い新興国中央銀行による買い付けについて、2月7日に中国人民銀行(中央銀行)が定例の外貨準備の内訳を公表した。それによると1月の金準備は約4万トロイオンス(約1.2トン)増え、約2,307トンとなった。これは15ヶ月連続の増加となる。このデータは数量そのものよりも、中国人民銀行が継続的に金準備を増やしているという事実が金市場では重要視されている。
中国全体としては、国有銀行などの保有分もあるため、実質的な保有状況の境界が見えにくいとされている。国家ファンド(SWF)や国有機関からの移し替えも考えられることから、人民銀行の持ち分は公表以上と捉えられることが多い。
今週(2月16日週)の動き:12月の個人消費支出(PCE)コア価格指数に注目、イランを巡る地政学リスクの上昇/NY金4,700~5,150ドル、JPX金2万4000~2万6000円
12月の個人消費支出(PCE)コア価格指数に注目
今週(2月16日週)も米国関連で重要指標の発表が予定されている。FRBの利下げ見通しを探るうえで市場の関心度も高い。2月20日(金)には、2025年10~12月期のGDP速報値が発表される。前四半期のGDPは、政府機関閉鎖の影響で発表が遅れたうえ、4%超と2年ぶりの高い数字になった。その反動で、ペースは鈍るものの、今回は前期比3%を維持するとみられている。
また同日2月20日に2025年12月の個人消費支出(PCE)・所得統計とFRBが重視するインフレ指標、PCE価格指数が発表される。2月13日に発表された1月の米CPIが予想を下回っただけに、PCE価格指数(特にコア指数)に注目したい。PCE価格指数は、FRBがインフレ指標として注視しているためである。
このところの米経済指標は予想外の結果が増えており、今回も果たしてどうなるか不透明である。結果をどう受け止めるかについて、市場で見方が分かれることも増えている。
イランを巡る地政学リスクの上昇
地政学的要因では、トランプ米政権がイランに対し軍事プレッシャーを強めていることが気掛かりだ。すでに原子力空母エーブラハム・リンカーンを中心とする打撃群を中東に展開しているが、空母打撃群の追加派遣を指示したと伝えられている。米国とイランの核協議は、2月17日にスイス・ジュネーブで実施される予定になっている。2月6日にも協議の場が持たれたが、仲介国オマーンを通じた間接形式だった。今回も同様の形になると推測される。
NY金は、上値が5,100ドル程度、下値は4,700ドル程度までのやや広いレンジが想定され、不安定な環境が続くとみる。JPX金もそれに従い2万4000~2万6000円のレンジ相場となりそうだ。
