2017年に6000万円で米国株への投資を始めて、わずか3年半で資産を2億円にまで増やしたナスダッ子さんとマネックス証券のチーフ・外国株コンサルタントのハッチこと岡元兵八郎の対談を3回に渡ってお届けします。前編では、米国株投資をはじめたきっかけ、銘柄の選び方などについてうかがいました。

お金を置いておく場所を選び、お金にお金を産んでもらう

岡元:最初にナスダッ子さんが投資を始めたきっかけを教えてください。

ナスダッ子さん:私は1993年に投資を始めました。当時は投資信託で資産運用をしていました。金融の知識はなかったのですが、証券会社の営業担当者から投資信託を買い、1~2割増えたら利益確定して、他の投資信託に乗り換えるという受け身の投資をしていました。いま振り返ると、もったいないことをしていたと思います。

岡元:その頃は、個別株には投資をしていなかったのですか?

ナスダッ子さん:当時は、日本の金利が高い時代だったので、現金をMMFに入れたりしていました。子どもの学資保険や会社の財形貯蓄で教育資金や将来のためのお金を準備することを優先していたこともあって、投資をしていたのはお付き合いの投資信託を買うくらいでした。金額は数百万円から1000万円ぐらいだったと思います。

岡元:まとまった金額を資産運用されていたのですね。

ナスダッ子さん:大学を卒業してから、東京で一人暮らしをしていたので、自分自身でお金の管理はわりとしっかりとするようにしていたほうだと思います。当時は定期預金の金利が高かったこともあって、銀行や郵便局(現、ゆうちょ銀行)に預けておけばお金は増えるものだと思っていました。ですから、結婚後に商売をやっていた義理の母から、「お金は置いておく場所を選んで、お金にお金を産んでもらうのよ」と言われた時には、目からうろこが落ちる思いでした。

世界のインフラ的企業、アマゾン・ドットコム[AMZN]に投資

ナスダッ子さん
個人投資家

岡元:投資信託から米国株の個別銘柄投資へ舵を切られたそうですが、きっかけと米国株を投資対象とした理由を教えてください。また、金額的にはどのくらいでしたか?

ナスダッ子さん:2017年の主人の退職と子どもの自立がきっかけでした。投資信託やラップ口座などを解約したお金、それまで貯めてきていた預貯金などを合わせて6000万円ぐらいでしょうか。

米国の個別株を選んだのは、私が新しい技術に興味を持っていることを知っていた当時取引していた証券会社の担当者が、「米国のナスダックの銘柄に投資するのがよいのでは」と勧めてくれたからです。私は子どもが産まれる前から趣味でインターネットゲームをやっており、また家族も最先端の技術に興味があったので、ハイテク関連の展示会などにも足を運んでいました。アマゾン・ドットコム[AMZN]の株価が前年も2倍以上になったニュースなども知っていたので、いずれは米国のハイテク株に投資したいと思っていたのです。そして、多くの方が知っている大きな会社だから倒産することはないだろうし、まだ利用していない人もいるから、伸びしろがあると考え、手始めにアマゾンの株式を500万円分購入しました。

岡元:500万円というと投資初心者にとっては、かなりまとまった金額ですが、それを米国株1銘柄に投資することは、怖くありませんでしたか?

ナスダッ子さん:私が米国の個別株投資をはじめた2017年の夏からでその年の11月29日まで、米国株はさしたる下げもなく上がり続けたのです。暴落の怖さを知っているベテラン投資家の方々が、利益確定したあとに買い戻せずにいるなか、怖い物知らずのビギナーだった私は、どんどん買い増しをしていきました。

岡元:その状況下で買い増せたのはなぜでしょう?

ナスダッ子さん:米国は、何らかの要因で一時的に株価が下がっても政策で株価を上げてくれる国であり、世界のインフラ的存在の企業が多いから安心できると信じていたからです。

岡元:アマゾンだけを買い増ししたのですか?他の銘柄にも投資されたのでしょうか?

ナスダッ子さん:アマゾンのほかに、当時、世界中の自動車会社との提携が話題になっていた半導体大手のエヌビディア[NVDA]や、手術支援ロボット「ダヴィンチサージカルシステム」の開発で知られるインテューイティブ・サージカル[ISRG]、中国の巨大IT企業テンセント(香港・ハンセン市場)に投資をしていました。

その少し後に、決済サービスのペイパル・ホールディングス[PYPL]やコンテンツ配信のネットフリックス[NFLX]、クラウドベースの企業向けID管理システムを提供するオクタ[OKTA]、オーストラリアのIT企業でナスダックに上場しているアトラシアン[TEAM]を投資対象としていました。

ビジュアル検索プラットフォームを運営するピンタレスト[PINS]は上場初日に買いました。その他、eコマースプラットフォームのショッピファイ[SHOP]、セキュリティプロバイダーのクラウドストライク・ホールディングス[CRWD]などにも投資しました。

銘柄選び3つの条件:唯一無二の技術があり、将来への期待を持てる銘柄を

岡元兵八郎
マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー
岡元:色々な銘柄に投資をされましたね。それらの銘柄を選んだ理由はなんでしょうか?

ナスダッ子さん:まとまった金額で投資する銘柄を選ぶ理由は、当時もいまも変わっていません。条件は主に3つあります。

【1】そのセクター全体に資金が流入していて、市場が拡大していること

【2】圧倒的なシェアを持つ、唯一無二の技術がある、既に世界的なインフラになっている、将来価格競争が生じ難い優位な立場にある、セクター内でも市場を牽引する立場にある銘柄であること、

【3】イノベイティブな企業で、事業を応援したい気持ちになれる企業であり、将来への期待が持てる銘柄であること。なぜなら、その気持ちや将来への期待がないと株価が下がっているときに待てないからです。

怖い物知らずだった私は、アマゾンでの成功体験から調子に乗ってどんどん投資金額を増やしていっていました。

岡元:そんな時に暴落が起きたのですね。

ナスダッ子さん:はい。当時の証券会社の担当者が「そろそろ利益確定して現金化しておきませんか」と言っていたのは、株価が下落する可能性を想定していたのかと思いました。

岡元:その時投資資産はどのように変動していったのですか?

ナスダッ子さん:6000万円が9000万円くらいまで増え、それが7000万円ぐらいになりました。暴落の前に、利益を得た記念として500万円で車を購入したのですが、「買っておいてよかった」と思ったことを覚えています。

岡元:2017年に暴落を経験しながら、投資を止めなかったのはなぜでしょうか?

ナスダッ子さん:暴落の直後は、「投資を止めよう」とも思いました。証券会社の担当者にも「もう、売却して現金にしたい」と言ったくらいです。ところが、その方には「市場がパニック状態になっている時に売ってはダメです。あと2日待てませんか」と言われました。そして本当に、相場は反転したのです。あの時の言葉には感謝しています。

その後も2018年末に暴落を経験し、そこでは狼狽売りをして買い戻せなかったことで、勉強し、新たな知識も得ました。例えば、相場の強弱や加熱感を表すテクニカル指標であるRSIという指標の見方を知ったのもこのときです。相場が反転し、資産が増えていくのを見るなかで、恐怖から買えなかった大底こそが資産を増やす一番のチャンスだったことを痛感して、「二度と狼狽売りはしない」と自分に言い聞かせました。

エヌビディア[NVDA]とテスラ[TSLA]に注目した理由

 

岡元:2023年時点では、保有銘柄をエヌビディア[NVDA]とテスラ[TSLA]に絞られたということですが、この2銘柄に限定されたのはなぜでしょうか?

ナスダッ子さん:私にとってエヌビディアは、30年近く前から縁がある銘柄です。当時大好きだった米国のエレクトロニックアーツの「シムピープル(現在のThe Sims 4)」というゲームを快適なPCのスペックでやるためには、エヌビディアの「GeForce」が必要だったのです。そういったきっかけで社名を知っていました。そして、今ある資産のかなりの部分を稼いでくれたのもそのエヌビディアです。

岡元:エヌビディアへの投資金額は、どのくらいですか?

ナスダッ子さん:最初は1,000万円分くらいで、決算前後の売り買いもしました。しかし直近2年間は全く売らず、エヌビディアが時価総額で世界一になった日にはあまりの過熱感から久しぶりに少しだけ利益確定しました。しかし自動運転や医療・ヘルスケア、宇宙開発事業などの分野での利益は、まだそれほど計上されているわけではありません。2024年6月の株価上昇は、同社が生成AI向けの半導体を手掛けていることから、ChatGPTへの期待が株価を押し上げた「棚からぼた餅」的なものではないでしょうか。

エヌビディアは、Gforce4090(超高性能なゲーミングと綿密に表現されたバーチャル世界を実現するグラフィックス カード)の生産が間に合っていないのに、次、その次の商品を考えていたり、中国の規制に適合できる製品を作り出したり、色々な面に対して対応・スピード感が早い企業だと感じています。そのため、まだ伸びしろのある企業だと考え、期待して保有しています。2022年に株価が大きく落ち込みましたが、その時期を耐え、反転してからは買い戻しや買い増しをし、決算を3回またいだら、想像以上に資産が増えていました。業績に不安材料が見えるまでは、簡単には手放さないつもりです。

テスラは、「宇宙のテスラ車」など予想さえしなかった技術を生み出しています。株価は(2022年以降)下げる局面もありますが、同社のイーロン・マスク氏は、これからも私たち人間の生活を大きく変えるようなことをやってくれるでしょう。比率は低くなってしまいましたが、マスク氏への期待もあり、いまも保有し続けています。

この2銘柄のほかにも、ビッグデータ分析用のソフトウエアプラットフォームのパランティア・テクノロジーズ[PLTR]もずっと持っていますし、2023年は守りの銘柄としてマイクロソフト[MSFT]を買いました。ポートフォリオ(資産配分)の内訳は、エヌビディアが最高値だった時にはエヌビディアが8割、テスラが1割、その他が1割です。

岡元:投資元本は追加されていますか?差し支えなければ、現在の資産総額も教えてください。

ナスダッ子さん:追加での入金はしていないので、投資元本は6000万円のままです。その一方で、もう年金生活なので、むしろ引き出しはしています。車の購入や家のリフォーム、生活費の補填のほか、私が起業するための資金など、利益から4,000万円以上引き出しました。資産は、コロナ後のバブルの時に2億円まで増え、2022年の米国の利上げの時の半値近くまで下がり、エヌビディアの株価反転を機に、資金をエヌビディアに寄せた結果、3億円を超えて上昇しました。いまは、また3億円を切るところまで下がっています。

次回は、【ナスダッ子さん×ハッチ:対談中編】「成功と失敗の両方を糧にして、どんな相場でも冷静な判断を」をお届けします。

※本対談は2024年8月14日に実施しました。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。

写真:竹井 俊晴