米国株投資家ナスダッ子さんとハッチこと岡元兵八郎の対談2回目は、専業主婦から投資家に転身して変わったこと、投資の心得についてお届けします。

>>>>銘柄選びの3つの条件、3年半で6,000万円を2億円に【ナスダッ子さん×ハッチ:対談前編】

相場急変・暴落時の心構えと対処法「成功と失敗の両方を経験してこそ、次の段階に進める」

岡元:ナスダッ子さんが米国株投資をはじめてから、2017年11月の下落、2018年12月のクリスマスショック、2020年のコロナショック、2024年8月の暴落など、株価が大きく下がる局面がありました。相場急変時には、どのような心構えで、どんな投資行動を取られますか?
 
ナスダッ子さん:株式投資は、成功体験と失敗体験の両方を経験しないと冷静な判断ができるようにならないと考えています。大きく下げた局面で売って止めてしまったら、株式投資にネガティブな考えを持ったままとなってしまうでしょう。相場環境がいい時も、悪い時も参加し続けて、失敗したなら「あのとき、こんな行動をしたから失敗したのだ」、「別の方法をとれば成功したのではないか」、「次に株価が下がった時には、勇気を出して失敗したことの逆の行動を取ってみよう」と学び、実践できるでしょう。実践して成功したら、次の段階に進めると思うのです。

また、暴落を経験して、その時に自分自身がどう感じるかを理解することで、行動も感情もコントロールできるようになってきます。そうなれば、怖い物なしです。

岡元:今年(2024年)8月の暴落の時は、いかがでしたか?

ナスダッ子さん:後々「○○ショック」のような名前がつくかもしれない、歴史的な相場変動に立ち会っていることにワクワクしました。しかし、マーケット急変時に「これもいい経験だな」くらいに思って見ていられるようになったのは、この2年くらいです。

岡元:なぜ、冷静に見ていられるようになったのでしょうか?

ナスダッ子さん:2022年にナスダック市場がジワジワと下げる相場を経験したからだと思います。あの時は辛かったですね。

岡元:今回(2024年8月上旬)の暴落の時は、買い増しはされましたか?

ナスダッ子さん:エヌビディアの買い戻しだけを行いました。100ドル以下に下がったのを見て、98ドルの時に買い戻しの第1弾として少し買いました。前回(2024年5月)の株価上昇時に、ローソク足チャートが窓を開けて上がったのが、このあたりだったので、そこで止まる可能性が高いと考えて狙っていました。ただ、もう一段下げる可能性も想定して、資金を分けて買っていこうと思っています。

日々最新の米国株関連のニュースを情報収集

ナスダッ子さん
個人投資家

岡元:投資情報をどのような媒体で、どのように収集、分析していますか?日々行っているルーチンなどがあれば、それも教えてください。

ナスダッ子さん:朝起きたら「モーニングサテライト」を見て、スマホのアプリなどでニュースをチェックし、気になったニュースは調べますし、SNSの情報も確認します。

日中に余裕がある時には、ラジオNIKKEIで米国株の部分だけを拾って聞きます。午後は、証券会社の担当者にニュースや株価の動きで気になっていることを質問して、解説してもらっています。

夜に時間がある時には、気になっていた国際経済や政治関連のYouTubeなどを見ています。時間にすると3時間くらいでしょうか。他の作業をしながら聞いていることも多いので、株のことだけを考えてスマホやPCを見ている時間は、そのうちの半分から3分の1以下だと思います。

ニュースは、「NewsPicks」で主なニュースをチェックし、気になるものは発信元サイトで確認します。「ブルームバーグ」と「ウォール・ストリート・ジャーナル」、「バロンズ」などもチェックしています。YouTubeでは「ストックボイス」とマネックス証券のチャンネルをよく見ています。

岡元:銘柄のウォッチリストは作っていますか?

ナスダッ子さん:ウォッチリストは、以前にセクターごとに30銘柄位ずつ入れた10ページ以上あるもの作り、銘柄を多少入れ替えながらいまも使っています。

この3年くらいは集中投資に切り替えたこともあって、一番よく見る30銘柄くらいをまとめたリストと、ETFのリスト以外は、じっくり見ることはないですね。何かの銘柄が話題になった時に、参考程度に見るくらいでしょうか。

今後もハイテク・グロース株への投資を継続したいと考える理由

岡元兵八郎
マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー

岡元:今後の投資方針は、どう考えていますか?例えば、日本株への投資は考えていらっしゃいますか?

ナスダッ子さん:日本株への投資は考えていません。今年(2024年)、起業しました。理由はそろそろ株に割く時間を減らし、新しいジャンルの勉強や出会いも増やしたいと考えたことが背景にあります。私が日本株に投資すると、昼間も神経が削がれてしまって、それができなくなってしまうかと感じています。

私は順張りの投資が好きですし、人類の生活を変えるような革新的な技術を開発するグローバルな企業が好きです。ですので、どうしても米国のハイテク・グロース株に目が向きます。

岡元:現状ではエヌビディアとテスラに集中投資されていますが、銘柄の入れ替えや分散投資についてはどう考えていらっしゃいますか?

ナスダッ子さん:世代的には、ボラティリティの大きなハイテク・グロースの個別銘柄への投資などはやめて、分散投資、守りの投資に切り替えたらどうかという声も耳にします。しかし、子育てや住宅ローンの返済が終わり、多少なりとも老後資金を増やしたいという動機ではじめた投資です。しかも、ハイテク・グロースは、もともと好きだった分野。その勉強をしながらお金も増えるなんて、これほど趣味と実益を兼ね備えた最高のものはないと思っています。資産が増えたことで、さらにリスクを取る余裕ができたとも考えています。

ただ、もう少し、リスクオンとリスクオフの時のボリューム調整を上手にできるようにはしたいと思います。個別銘柄に投資することによって企業を応援する楽しさを知ってしまった以上、まだしばらくは現状の投資方針は続けたいと思っています。

自分がワクワクできる銘柄を買い、それに伴う辛さは覚悟する

 

岡元:米国の個別株では高配当株も人気です。今後、高配当株に投資する予定はありますか?

ナスダッ子さん:以前は、銀行株やプロクター・アンド・ギャンブル[PG]など値動きが比較的安定している銘柄に投資してみたこともあります。値動きが安定している銘柄は、安心して保有できるけれども、値上がりもゆっくりなので、保有していて楽しくない…。それよりも、大きく下げる局面もあるけれど、上がる時には跳ねるハイテク・グロース株のほうが、私自身投資をしていて楽しく感じるのです。

こういった経験から、「投資をするなら、自分がワクワクできる銘柄を買おう。それに伴う辛さは覚悟しよう」と決めました。「米国の未来がハイテク産業になくてどうする、調整の都度売るのは投資ではない!」そう考えています。

岡元:腹をくくったのですね。

ナスダッ子さん:はい。腹をくくりました。エヌビディアへの投資で集中投資の効果を実感しましたし、集中投資で大きく増やせたことで、今では暴落時でもワクワクできる、リスクを取る余裕を与えてもらったとも思っています。

私はハイリスクを承知でハイテク・グロース株に投資していますし、どんなに厳選して選んだ銘柄でも、一時的には買った時よりも30%くらいは資産が減る可能性があることも覚悟しています。ですから、相場の急変で株価が戻ってこないリスクもあるような小型株は、なるべく選ばないか、投資するとしても少額に止めています。

また、厳選して買った銘柄の株価が下がり、長期間低迷したあとで元の水準に戻った時に「やれやれ売り」をしないことも徹底しています。私は、投資の利益は忍耐への報酬だと考えています。下落トレンドで懲りて、「やれやれ売り」をしてしまったら、メンタルをすり減らしただけで、報酬を受け取らないことになってしまうでしょう。

私は順張り派なので、新高値が大好きです。それに、米国のハイテク・グロース株は、新高値のあとにも大きなチャンスがあると思っています。だからこそ、まだ伸びしろがあると思える銘柄は、高値から下がる不快さに耐えながらも、待つのは当然のことだと考えています。

投資仲間との会話を通じて世界が広がる

岡元:資産が増えたこと以外に、「投資で得たこと」はありますか?

ナスダッ子さん:「投資仲間」から様々なことを学んでいます。私が投資をはじめ、続けられているのは、単にお金のためだけではなく、日常の時間を楽しく、豊かにしてくれるからです。また、ベテランの投資仲間の経験談を聞くことで、暴落への心の準備ができ、暴落を乗り越えて資産額が上昇する夢が広がります。人それぞれに性格が異なるように、自分にあった投資方法を選ぶことの大切さも教えてもらいました。

また、投資をしていることで、世界各国、老若男女、生活環境、従事する仕事や持っているキャリアなど、あらゆる違いを超えた方々と共通の話題を持つことができます。それによって、世界が広がり自己肯定感が向上しました。異なるバックグラウンドや違った環境で暮らす人々と、SNSやリアルで信頼関係が結ぶことができ、投資以外の知識も増えますし、様々なチャンスも広がります。投資仲間と会話していると、本当に楽しくで、時間がたつのも忘れてしまうほどです。

以前は、預金を取り崩して生活していく将来を考えると少し恐怖感も感じていたのですが、投資を始めてからは金銭的な余裕が心理的な余裕を産み、そして私自身の行動範囲と視野が広がりました。投資を始める前は主婦業、母親業と家族のためだけに生きてきて、行動範囲と経験が縛られていましたが、いまは自分自身のためにも時間を使えていると思います。

そして、いまは投資で得た利益を「モノ」ではなく「体験」に使っていきたいと思っており、自分自身がやりたいことにお金を使いたいと思っています。日々、「昨日と違う1日」を過ごしたいと考えています。また、投資をすることで知った世界の企業が生み出す技術によって、これまで想像もしなかった未来を見ることができるかもしれない、といったような夢をもつこともできます。投資をすることで人生に対しても前向きな気持ちになることができました。

投資と人生の共通点

岡元:ナスダッ子さんは、米国株投資をはじめたことで、大きく人生が変わったのですね。最後に、まだ投資をはじめて間もない人や、これから投資をしたいと考えている人にアドバイス、メッセージをお願いします。

ナスダッ子さん:投資をすることで、いままでは気づかなかった、ニュースと相場の関係や企業の決算と相場の関係、投資家の心理と相場の関係など、新しい気づきを得ることができると思います。普段の生活のなかでも、たくさんの面白い発見、気づきがあるでしょう。

もちろん、投資をすることで、お金を増やすこともできます。しかし、投資にはリスクもありお金が減ることもあります。私が実践している集中投資は、自分以外の方には勧めることはできませんが。投資で味わう忍耐や可能性は、人生と共通点があると思います。投資で失敗から学ぶことの大切さを実感できたなら、それを人生のさまざまな場面で活かすことができるでしょう。

次回は、ナスダッ子さんが、ハッチに突撃質問した内容【ナスダッ子さん×ハッチ:対談後編】「テスラの高値更新はいつか?」をお届けします。

※本対談は2024年8月14日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。

写真:竹井 俊晴