S&P500は2.27%下げ、ナスダック100は2.46%の下落、リセッション懸念が市場を冷やす

先週(3月10日週)の米国株もトランプ米大統領の発言に振り回される週となりました。S&P500は2.27%下げ、ナスダック100は2.46%下落して終わりました。

週初めはリセッション(景気後退)という言葉が市場のセンチメントを冷やし、大幅な下落を記録。しかし、週後半になるとインフレ鈍化が確認され、投資家は再びリスクを取る姿勢を見せました。週間ベースでは大幅に下落したものの、3月14日(金)には市場が急反発し、今週(3月17日週)はマーケットの方向性が変わる展開が起きるかもしれません。

3月9日(日)、トランプ米大統領が「景気後退の可能性を排除しない」と発言したことで、市場は一気に不安定化しました。すでに経済指標の鈍化や貿易摩擦、政府支出削減による影響が懸念されていた中で、この発言が売りを加速させました。特に、関税政策の不透明感が企業の投資計画や消費者支出に悪影響を与え、市場心理は急激に悪化。AIの進化に対する前向きな見方をする余裕すらなくなっているようです。

市場の落ち着きには、より明確な金融政策の方向性が必要

しかし、3月12日(水)には、2月の消費者物価指数(CPI)前月比が予想を下回る+0.2%となり、市場は一時的に反発しました。特に航空運賃の急落(前月比-4.0%)がインフレ鈍化を牽引しましたが、これは一時的な要因であり、物価の基調的な上昇圧力が弱まったわけではないとの見方も強くあります。また、「関税によるコスト上昇が控えているため、インフレの低下が続くとは限らない」という声も多く、市場の落ち着きを取り戻すためには、より明確な金融政策の方向性が必要とされています。

インフレ指標の発表を受けて、市場の利下げ期待は後退しました。CME FedWatchツールによると、5月の利下げ確率は17.9%に低下し、6月の利下げ確率も83.1%まで下落。市場は依然として6月の利下げを織り込んでいますが、その確信度はやや揺らいでいることが示されています。

3月14日(金)にS&P500は急反発、株式市場に広がる回復期待

3月13日(木)、S&P500は2月19日の高値から10%以上下落し、調整局面に突入しました。過去16営業日での急落は、2020年2月のコロナショック以来の速さであり、市場の不安が広がりました。しかし、14日(金)に入ると13日までの弱気相場が一転、S&P500は+2.1%と2025年最大の上昇を記録し、引けました。S&P500の全11セクターが上昇して、市場には一時的な安堵感が広がりました。

実は、この日はS&P500にとって重要な転換点となった可能性があります。ここ最近、3週連続で月曜日に下落し、金曜日に反発するというパターンが続いていましたが、3月14日(金)は特に勢いよく上昇しました。さらに、S&P500採用銘柄500銘柄のうち450銘柄以上が上昇するという広範な買いが入り、市場の裾野が広がっていることが確認されました。これは、市場回復への期待が高まりつつある良い兆候です。

また、この日、S&P500は2月19日以来初めて前日の高値を上回って引けました。それまでの約1ヶ月間、毎日前日の高値を下回る形での引けが続いていたため、市場の弱気心理がいかに根強かったかが見て取れます。この3月14日(金)の動きは、市場に覆いかぶさっていた弱気ムードが和らぎ始めた兆しと捉えることができるかもしれません。今週17日(月)のS&P500の動きには引き続き注目です。

過去のデータからわかる急落後の回復パターン

今回のマーケットの急速な調整は、過去のデータと照らし合わせると、反発が期待されるパターンに当てはまる可能性が高いことがわかります。

1953年以降、S&P500が史上最高値から3週間以内に7.5%以上下落したのは、今回を含めてわずか17回のみです。過去の16回において、S&P500は少なくとも7.5%の下落を経験した後、1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、そして1年後すべての期間で平均的に上昇しています。

具体的には、1週間後にS&P500が平均+2.6%、1ヶ月後には平均+4.8%、半年後には平均+12.2%上昇し、その間にS&P500がプラスに転じる確率はそれぞれ88%に達しています。

これらのデータは、史上最高値から急落した後、少なくとも数週間から半年間は反発が起きやすいことを示唆しています。しかし、トランプ米大統領の新たな発言が再びマーケットを困惑させる可能性もあり、引き続き注意を払う必要があります。

今後の注目ポイントはFOMCとエヌビディアAIカンファレンス

今週3月19日(水)に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)では、利下げは見送られるとの見方がコンセンサスとなっています。市場は依然として6月の利下げを予想しているものの、その確度は揺らいでおり、FOMCの動向が注目されています。

さらに、3月17日(月)から始まるエヌビディア[NVDA]のGTC AIカンファレンスも注目のイベントです。トランプ米大統領の関税問題によって影を落としてきたAI分野ですが、このカンファレンスでは再びAI技術への関心が高まる可能性があり、特に今後の市場動向に大きな影響を与えると予想されます。