S&P500、ナスダック100ともに連続下落が5週ぶりにストップ

先週(3月17日週)の米国株式市場は、FOMC(米連邦公開市場委員会)でのパウエルFRB議長の慎重ながらも安心感を与える政策姿勢や、トランプ米大統領が示した関税政策への柔軟性が投資家心理を支えました。

一方で、市場の期待を集めていたエヌビディア[NVDA]主催のAI関連イベント「GTCコンファレンス」は、期待外れの結果となり、関連銘柄には売りが広がりました。こうした材料が交錯する中、市場は神経質な動きとなったものの、結果的には底堅く推移しました。週間ベースではS&P500が0.51%、ナスダック100が0.25%上昇し、いずれも連続下落は5週ぶりにストップしました。

「不確実性」の中でもぶれないFRBの舵取りにマーケットは好反応

3月19日(水)のFOMCでは、市場の予想通り、政策金利が4.25%~4.50%で据え置かれました。

パウエルFRB議長は記者会見で、「労働市場は非常に堅調で、インフレを上回るペースで賃金が上昇している」と述べ、景気に対して一定の信頼感を示しました。ただ同時に、関税政策によるインフレへの影響については不透明な見通しを強調するかのように、約60分間の記者会見で「不確実性」という言葉を18回も口にしました。

さらに、FRB当局者も公式声明で「経済見通しを巡る不確実性が高まっている」と指摘しています。それでもパウエル議長は、FRBの金利政策が経済状況の変化に対応するのに適切な位置にあると自信を示しました。

また、パウエル議長は最近急激に悪化しているセンチメント(心理)や信頼感などの「ソフトデータ」よりも、実際の数値で示される「ハードデータ」に注目していると述べています。同氏は、ソフトデータ、すなわち各種の調査結果は大きな懸念や下方リスクを示している一方、雇用や個人消費など、ハードデータは依然として良好であると説明しました。

今回FRBは2025年のGDP成長率予測を1.7%とし、2024年12月の予測から引き下げましたが、こうした若干の軟調さは、年内に利下げを再開する口実になりうるかもしれません。驚くようなネガティブなサプライズもない中、政策の安定性を好感した投資家の買い戻しが入り、この日S&P500は1.1%高、ナスダックは1.4%高と好反応を示しました。

関税導入を前に揺れる市場に、“緩和”の兆しが灯る

3月21日(金)には、トランプ米大統領が4月2日に予定されている新たな関税導入について、「柔軟に対応する可能性がある」と発言しました。このニュースにより、市場にはこれまで市場を支配していた関税リスクが和らぐとの期待が高まり、株価が買われる要因となりました。特に貿易摩擦の影響が大きいとされるハイテク株や産業株を中心に買い戻しが進み、この日ナスダック100は0.39%上昇、週間ベースの下げに歯止めをかけたのです。

エヌビディアNVDA]株が下落するも、「最終的な勝者」と期待できる理由

先週もうひとつの焦点だったエヌビディアのGTCコンファレンスでは、市場が望んでいたほどの驚きや革新的な内容が見られなかったため、同社の株価は先週3.26%下落しました。

また、ジェンスン・フアンCEOは、量子コンピューティングの実用化時期に関して1月に述べた悲観的な見解を訂正・謝罪したものの、リジッティ・コンピューティング・インク[RGTI]やDウエーブ クオンタム[QBTS]などの関連株も先週それぞれ19.2%、17.64%下落しました。

量子コンピューターは今すぐ普及する技術ではないかもしれませんが、長期的には極めて重要な技術となるでしょう。こうした中、どのような展開を見せようとも、最終的に勝者となるのはやはりエヌビディアであると考えられます。同社は量子コンピューティング向け半導体の供給を今後も継続する見通しであり、市場の成長スピードが仮に期待ほど速くなかったとしても、着実にその恩恵を享受できる立場にあります。常にトレンドの最前線を走り続けるファンCEOの卓越した戦略眼を考慮すれば、エヌビディア[NVDA]も量子コンピューターの進化の恩恵を受けるのではないでしょうか。

「底」は近いか? ソフトデータとインフレ指標がカギを握る

今週(3月24日週)は、市場が注目する経済指標が複数控えています。まず、3月25日(火)には、パウエル議長が「ソフトデータ」として重視する3月のコンファレンスボード消費者信頼感指数が発表されます。続いて28日(金)にはFRBが最重要視するインフレ指標、個人消費支出(PCE)物価指数が発表される予定です。

これらのデータがネガティブサプライズを避けられれば、政策リスクの低下と相まって、株価の回復がより鮮明化する可能性があります。

一方、マーケットは依然として不透明要因を抱えています。特に4月2日に関税導入を控えるなか、市場が不安定な動きを見せる可能性は否定できません。しかし、トランプ米大統領が関税問題について柔軟な姿勢を示したことで、関税が緩和されるというシナリオが現実味を帯びつつあります。マーケットがすでに「最悪なシナリオ」を織り込んでしまった可能性もあるため、これ以上の大きな下落余地はあったとしても限定的かもしれません。

歴史的にもマーケットは、懸念されるイベントの実際の発生より前に底打ちする傾向があるためです。そのため、関税措置が市場の想定を超えて緩和されれば、テクノロジー株や輸出関連企業を中心とした株価リバウンドが期待できるでしょう。