モトリーフール米国本社、2024年8月6日投稿記事より

グロース投資家として広くフォローされているキャシー・ウッド氏が、売り局面で購入した3銘柄

アーク・インベストメント・マネジメント(以下、アーク社)の共同創業者でCEOを務めるキャシー・ウッド氏にとって、市場が下落した8月5日は忙しい1日となりました。アーク社で銘柄選択を担当する同氏は株価の下落を好機と捉え、20銘柄以上で構成される既存ポジションを追加投資しました。

ウッド氏は5日、市場全体の下落を受け、各社の株価もその日2~4%下落していましたがアマゾン・ドットコム[AMZN]、テスラ[TSLA]、テンパスAI[TEM]の株式に追加投資しました。

アマゾン・ドットコム[AMZN]

オンライン小売大手のアマゾン・ドットコムの株価が5日に4%下落したことは、株主にとって面白くないものでしたが、同社をめぐっては数週間前から嫌な展開が続いていました。同社の株価は、7月に付けた過去最高値から20%下落しています。

特に大幅に落ち込んだのは8月2日で、同日に発表された第2四半期決算の内容が失望を呼び、株価は9%下落しました。1株当たり利益(EPS)は前年同期比で2倍近い1.26ドルとなり、アナリスト予想の1.03ドルを大幅に上回りました。とはいえアマゾン・ドットコムは過去4四半期、いずれもウォール街の予想を2桁上回る利益を発表してきたため、これは大きなサプライズとは受け取られませんでした。

売上高は同10%増の1,480億ドルとなり、アナリスト予想をわずかに下回りました。好調なアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)部門で19%増となったものの、北米Eコマース部門が9%増、海外部門が7%増にとどまったことが足かせとなりました。

アマゾン・ドットコム側の見通しも、市場に嫌気されました。会社側は第3四半期の売上高を8~11%増と予想していますが、中央値は、市場関係者が予想する約11%増を下回ります。会社側はまた、営業利益の伸びが直近数四半期と比べて大幅に鈍化すると予想しています。

株価はここにきて魅力的な水準となっています。一方、売上高の伸びは減速しています。2024年の増収率は3年連続で12%を下回ると予想されており、株式上場から27年の歴史の中で増収率ワースト3となる見通しです。アマゾン・ドットコムは相当の危機感を抱いています。急成長する中国のEコマース企業との競争に直面し、実店舗の小売りチェーンはオンライン販売の強化にさまざまな策を講じています。景気後退の可能性も、逆風でしかありません。

こうした背景に対し、利益予想は徐々に上向いています。株価下落を受け、2024年予想株価収益率(PER)は34倍、2025年予想PERは28倍未満です。これは、売上高の伸びが鈍化し続けているEコマース企業にとっては割高なバリュエーションかもしれません。しかし、アマゾン・ドットコムの場合、支配的な市場ポジションと利益率の高いAWS事業が高いバリュエーションを正当化しています。

テスラ[TSLA]

テスラは、ウッド氏が運用する最大の上場投資信託(ETF)であるアーク・イノベーションETFの14%を占める最大の保有銘柄です。テスラの株価は年初来で20%下落しており、アーク・イノベーションETFが過去4年間で3回、市場をアンダーパフォームした大きな原因となっています。

テスラにとって目下の課題は成長です。第2四半期の売上高は前年同期比で2%増となりましたが、これはエネルギー生成・貯蔵部門の売上高が前年同期比で2倍になったおかげです。一方、主力事業である自動車部門の売上高は7%減でした。出荷台数が5%減少し、平均販売価格が低下した結果、全社の利益率は大幅に落ち込みました。

テスラは依然として、ニッチ分野のリーダーです。しかし、一部の積極的な成長予想モデルについては、やや割り引いて考える必要があるかもしれません。特に、テスラの自動車や完全自動運転プラットフォームといったプレミアム製品の価格予想は、過去1年間に上昇するどころか下落傾向にあります。テスラは、割高な自動車メーカーなのか、それとも割安なハイテク企業なのか。ウッド氏の考えは後者なのかもしれません。だからこそ、8月5日にテスラ株を追加投資したのでしょう。

テンパスAI[TEM]

新規株式公開(IPO)銘柄の中には、特に値動きが激しい銘柄があります。テンパスAIの株価は、6月中旬の上場以降、まるでロデオに登場する荒馬のような激しい動きを見せています。市場デビューから1週間後には22.89ドルという安値を付け、先週は47.09ドルの高値でピークとなり、現在は公開価格の37ドル付近で取引されています。

テンパスAIは野心にあふれています。医療における人工知能(AI)の実用化に取り組んでおり、生成AIを活用してインテリジェントな診断を提供し、患者に対する治療と結果の改善を目指しています。米国の大学病院の約3分の2、そして、がん専門医の半数がテンパスAIのサービスを利用しています。

間もなく、テンパスAIが上場して最初の四半期決算が発表されます。8月6日の取引終了後に最新の四半期決算が発表される予定です。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケット元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Rick Munarrizは、記載されているどの企業の株式も保有していません。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、テスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。