2024年7月12日(金)21:30発表(日本時間)
米国 生産者物価指数(PPI)

【1】結果:総合・コアPPIいずれも市場予想・前回結果を上回る

6月の米生産者物価指数(PPI)は、前年比+2.6%を記録し、前回結果(+2.4%)と市場予想(+2.3%)を上回る結果となりました。また、物価動向の風向きを確認できる前月比ベースでは0.2%と予想以上に上昇し、物価の伸びに加速が見られました。

変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPPIは前年比で+3.0%、前月比で+0.4%となり、いずれも市場予想と前回結果を上回りました。

【図表1】米生産者物価指数PPI(最終需要)結果まとめ
出所:米労働省、Bloombergよりマネックス証券作成

【2】内容・注目点:流通業のマージン手数料が全体の伸びを牽引。PCEコア構成項目にも要注目

【図表2】米国生産者物価指数(前月比)の内訳
出所:米労働省、Bloombergよりマネックス証券作成

図表2の通り、内訳(前月比)を見ていくと、サービス価格は前月比+0.6%でした。サービス価格の中身を詳しく見ると、流通業(小売・卸売)のマージン手数料が+1.9%と大きく上昇しており、全体の伸びを牽引しています。

ただし、このマージン手数料は測定が難しく不安定であるため、その影響を排除するために「コアコア」の指標にも注目が集まります。つまり、エネルギー、食品、流通業を除いた価格指数で、その数値は前月比横ばい、前年比ベースでは+3.1%で前月の+3.3%から鈍化を示しました。

また、航空運賃(+1.1%)やポートフォリオ管理費(+1.0%)が上昇した一方で、外来医療費は+0.1%と前月の+0.5%から鈍化を示し、宿泊費も-0.2%と下落しました。これらの項目は、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の判断においてインフレ指標として採用しているPCEコア価格指数の算出に用いられるとされているため、金融政策の動向を予想する上では特に注目が集まります。

サービス価格が上昇した一方で、財価格は-0.5%と、前回5月から下落が続きます。ガソリン価格の大幅な下落(-5.8%)を筆頭としたエネルギー価格の下落(-2.6%)によるものでしょう。

ただし、一般的にエネルギー価格は夏場のドライブシーズンに向けて需要が高まり、価格が上昇する傾向にあります。実際に原油価格は6月中旬以降上昇基調にあるため、7月以降の推移に注目です。

【3】所感:米CPIとは対照的な米PPIの動きに要警戒も、見出しの数値ほどのインフレ警戒感はなし

今回6月の米PPI(生産者物価指数)は予想を上回りましたが、内訳を見るとPCE構成項目は強弱まちまちで、基調的な動向を示すコアコア指数は前月から横ばいでした。このため、ヘッドラインの数値が示すほど物価上昇への警戒感は強くないと言えます。市場では依然として9月の利下げ観測が続いています。

ただし、ここ数ヶ月の傾向を見ると、米PPIは前年比で5ヶ月連続上昇しており、米CPI(消費者物価指数)の鈍化傾向とは対照的な動きとなっています。PPIの動向からは今後の米CPIの上昇が示唆されますが、もし米CPIがこのまま上昇しない場合、資源価格や原材料価格が上昇しても、消費者需要の減退により企業がそのコストを消費者価格に転嫁できない状況にあるということが考えられます。

【図表3】米消費者物価指数(CPI)と米生産者物価指数(PPI)の推移
出所:米労働省、Bloombergよりマネックス証券作成

同じ7月12日に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数の速報値は66.0と前月から低下しており、市場予想も下回りました。やはり、消費者マインドは低下基調にあることがうかがえます。実際のデータとして消費者動向が確認できる小売売上高は、7月16日に発表されます。

フィナンシャル・インテリジェンス部 岡 功祐