先週の動き:旺盛な押し目買い続くニューヨーク金先物価格、国内金価格は9週続伸でこの間22.3%上昇

先週のニューヨーク金先物価格(NY金)は週間ベースで4週続伸となった。4月に入って以降、にわかに流動化した中東情勢だが、週末4月19日にイスラエルによるイラン攻撃が伝えられ、先行き不透明感を背景に「安全資産」としての金市場への資金流入が一時加速し、2,433.30ドルまで買われた。その後、売り戻されたものの切り上げた水準を維持し、2,413.80ドルで終了。終値ベースでの史上最高値を3営業日ぶりに更新した。週足は前週末比39.70ドル、1.7%の上昇となった。

金市場は週初から前週末にイランから直接攻撃を受けたイスラエルの反応に神経をとがらせながらの、様子見の展開が続いた。米国を中心に欧米および周辺国がイスラエルに自重を求める中で、政権基盤の弱いネタニヤフ首相の動きが注視されたが、事態は小康状態を保っていた。その間に発表された米主要経済指標やパウエル議長はじめ複数の米連邦準備制度理事会(FRB)高官の発言内容に反応する形で小幅に上下したが、押し目はすかさず拾われる形で前日比マイナスは1営業日のみという堅調な展開が続いた。

4月末に米連邦公開市場委員会(FOMC)が予定され、FRB高官が発言を控えるブラックアウト期間に入るのを前に、最後の発言機会となった4月16日のパウエル議長の発言は、タカ派的トーンへの変調を感じさせるものだった。「最近のデータは明らかに私たちに自信を与えていない」として、物価認識を修正。利下げ先送りを示唆するものと受け止められた。市場の利下げ転換見通しは7月よりむしろ9月に先送りされつつある。

こうした流れの中で、先週のNY金のレンジは2,340.20~2,433.30ドルと、2,340~2,390ドルとした想定レンジの上限を40ドルほど上回った。これは冒頭で述べたように、イスラエルによるイラン領土攻撃を受けた一時的上振れで付けた高値による。それでも週末の引け値を含め2営業日は2,400ドル超で終わっており、水準は切り上がっている。

一方、国内円建て価格は為替要因もあり、さらに上値追いとなった。米ドル円相場が154.79円と34年ぶり円安水準を更新し、その後滞留したことで大阪取引所の国内金価格は続伸した。週足は前週末比75円、0.64%高の1万1837円で終了。終値ベースで史上最高値を更新するとともに、4月19日の高値1万1983円は取引時間中の史上最高値でもある。週足は9週連続の上昇で、この間に2,156円、22.3%の上昇となる。

先週のレンジは1万1508~1万1983円となったが、こちらは1万1360~1万1950円とした想定レンジの下限を200円上回った。

押し目はエントリーポイントのNY金

先週4月15日に発表された米3月小売売上高は予想比で大きく上振れとなった。前月比0.7%増と、市場予想の0.3%増を大幅に上回った。2月分も0.9%増に上方修正され2ヶ月続けて高い伸びとなった。3月は13項目のうち8項目で増加。堅調な雇用市場に裏付けられた底堅い消費需要が、驚くほど力強い経済成長を支え続けていることが示された。

この結果を受け米長期金利は急伸し、年内利下げシナリオに対する投資家の確信が揺らいでいることを表したが、金市場も売り優勢に転じた。

発表前の2,375ドル近辺から30ドル超急落。2,350ドルの節目を割れ、2,340.20ドルまで売られた。ところが、そこからの展開は足元金市場の買い気の強さを感じさせる展開だった。押し目買いに反転すると、買戻しの動きは終盤に向けて持続し、通常取引は2,383.00ドルで終了。その後も買いは途切れず、時間外取引も上値追いとなり、一時2,404.30ドルまで買われ、結局、2,399.30ドルで時間外取引は終了した。

この下げは、押し目買いの好機として捉えられたとみられる。売り込まれた後の復元力の強さは、まさに相場格言の表す「押し目待ちに押し目無し」という展開といえる。

ワシントン会合、介入体制整えた日本

国内金価格が9週連続高となったことは先に触れたが、NY金の上昇に加え、この間の円安も上昇ドライバーとなっている。この点で先週は注目すべきイベントがあった。

国際通貨基金(IMF)の春季総会がワシントンで開かれる機会を使い、4月17日に日本と韓国、米国の財務相が初の3ヶ国会合を開催。為替相場に関して、「最近の急速な円安およびウォン安に関する日韓の深刻な懸念を認識しつつ、既存の20ヶ国・地域(G20)コミットメントに沿って、外為市場の動向に関して引き続き緊密に協議する」との文言を共同声明に盛り込んだ。

鈴木財務相は、為替について日米で意思疎通を確認し、急速な円安、ウォン安についての認識を共有したと述べた。おそらく、米ドル円相場に関し、為替介入にいつでも乗り出せる体制を整えたと思われる。2022年の介入の際には600億ドル(現在の換算で約9兆円)を投じたとされるが、今後の介入の際の資金として預金に加え(潤沢に保有する)米国債を売却する内諾を得たということだろう。もちろん介入は今後タイミングを狙ってということだが、国内金価格を見る上で頭に入れておきたい。

今週の見通し:FOMC控え3月コアPCEデフレーターが最大の注目点に 想定レンジNY金2,350~2,410ドル、国内金価格 1万1560~1万1940円

FOMCを前にして、今週はFRB高官の発言はなく、経済指標が注目される。この点で4月26日発表の、3月の個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)がポイントとなる。エネルギーと食品を除いたコアPCEデフレーターはFRBが注視していることで知られるが、前月比0.3%上昇、前年比2.7%上昇と予想されている。3ヶ月連続で市場予想比上振れのサプライズとなった消費者物価指数(CPI)ほどではないものの、高めの数字になる可能性が指摘されている。その結果によりFOMC前に一定の動きが先行して出る可能性がありそうだ。

また、4月25日には1~3月の米国内総生産(GDP、速報値)が発表される。予想は前期比年率2.2%と前四半期の堅調なペース(3.4%)からは鈍化するものの、利下げ後送りを正当化する内容となりそうだ。強めの数字は一定の織り込みが進んでいるが、ここでも上振れがあり得るだけにNY金は下値を試す可能性がある。ただし、その押し目を待っている買い手が存在しているのが足元の金市場だ。

想定レンジはやや広めにNY金2,350~2,410ドル、国内金価格は 1万1560~1万1940円を想定している。

【図表】金 縦軸:円建て金/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券