今ボストンにいます。昨日は午前中エジンバラ、午後ロンドンでミーティング2つずつ行い、それから大西洋を渡りました。

NYから見るとボストンはヨーロッパっぽい雰囲気を残している場所ですが、実際にUK・ヨーロッパから移ってくると、その雰囲気はあまりにも違います。空港から見える街並みが先ず摩天楼だらけで「マテリアル・ワールド」に来た印象があり、空港にいる人の雰囲気もどこかぞんざいで、空港から街までの道も(例えばトンネル一つの造りを見ても)どこか殺風景です。街中に入ると、人は多く、雑然としていて、汚い印象があります。要は全般に雑な感じがあるのです。我々を迎えに来たクルマはバンで、品質を感じさせるものではありませんが、もちろんきちんと動き、経済合理的な形をしています。以前にも書いたことがありますが、「クオリティ」のヨーロッパと、「プロダクティビティ」のアメリカの違いでしょうか。

しかしボストンは私にとっては思い出深い場所です。20歳の時に生まれて初めて海外旅行をし、翌年にNY・ボストンに一人旅をしました。当時ハーバードに憧れていた私は、ケンブリッジの或る大学の寮に安く泊まっていたのですが、英語がてんでダメで、同時期に寮に泊まっていた他の学生(彼らは英語を母国語としない国から来ていた同年代の学生でしたが、皆英語がきちんと出来るのでした)の言うことが理解出来ないばかりか、自分のことを理解させることが全く出来ず、深い被拒絶感と挫折感に負けて、尻尾を巻いて逃げ出してしまったのです。3週間の予定を2週間に切り上げて寮を出たのですが、他に泊まっていた連中にその説明をすることが恐くて、情けないことに夜逃げ同然に朝早くチェックアウトし、人目を避けて街に出て、アムトラックでNYに戻ったのでした。

あれからちょうど20年です。今ではようやく英語も人並みに使えるようになり、仕事でこの街に来るようになり、英語による私の話を待っている人が(しかも仕事で!)、この街に居るようになりました。正直、人間随分変わるものだと思います。外資系証券に就職することになったのも、元はと云えばこの街で拒絶された苦い経験から、英語ぐらい使えるようになりたいという気持ちから志望したことです。そんな原点の一つであるボストンで、今日は丁寧に一仕事したいと思います。