2024年最大となる約9.3%の下落率を記録

COMEX(ニューヨーク商品取引所)で取引されている金先物価格が軟調に推移しています。10月30日(水)に一時、1オンス=2801.8ドルの高値をつけたあとは下げに転じ、11月14日(木)には一時2541.5ドルまで下落する場面がありました。高値からの下落率は約9.3%に達し、半月程度の短期間の下落率としては2024年最大となります。

米国の利下げペース鈍化の可能性が高まる中、金利がつかない金の相対的な優位性が薄れるとの見方も下落の背景の1つとされています。FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は先週「現在、われわれが目にしている経済の強さにより、慎重な決定を行うことが可能になっている」と述べ、「経済はFRBが利下げを急ぐ必要性を示唆せず」と言及しました。

続いて、コリンズ米ボストン連銀総裁も12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げは未定だと発言しました。CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のフェドウォッチ・ツールの12月の利下げ確率は低下し、12月のFOMCでの追加利下げ観測が後退しています。

高値からの下落率が大きくなったことで、テクニカル指標には弱気サインが数多く点灯しています。7月後半の安値を起点とした上昇トレンドラインを下方ブレイクしたほか、トレンド転換を判断する「新値三本足」は陰転した後も陰線が続いています。一目均衡表では、転換線や基準線を下回ったあと、遅行スパンが当時の水準を下回る弱気サインを示唆しており、ここから抵抗帯(雲)の下限を下回ると、「三役逆転」の弱気相場入りとなるでしょう。ひとまず、11月14日に安値をつけた後は雲の下限で下げ渋っており、値ごろ感からの短期的なリバウンドは予想できます。ただ、ここまで大きな下落率となると、今後のパターンは以下の2通りに絞られるでしょう。

今後の「金」の相場パターンと、2025年に向けてのリスク要因

1つ目は、保ち合い相場に発展していくシナリオです。その判断材料になるのは、初動のリバウンド大きさです。10月30日高値から11月14日安値までの下落幅に対する半値戻しが2671.6ドルとなり、この半値戻しを達成する場合、保ち合い相場に移行できる実力がまだ残っていることになります。

2つ目は、中間反騰をこなした後に底割れし、再び下落相場入りとなるケースです。例えば、上述した半値戻しもできない状態で反転下落となる場合、そのリスクが高まることになるでしょう。

この先の短期的な動きを観察しないと、判断しづらい局面ですが、いずれにしても10月30日高値が当面の高値(天井)になった可能性が高いとみられます。

特に2つ目のケースになる場合を想定すると、米国の長期金利(10年債利回り)上昇が続いているシナリオが予想できます。10年債利回りは短期的にはいったん上昇が一服しても不思議ではないタイミングです。しかし、月足でみると「三役好転」の強気局面(金利上昇局面)が続いており、2025年に向けてのリスク要因になる要素が十分あると思います。