大型ハイテク株以外の400超銘柄が上昇、市場全体を押し上げる
先週(11月18日週)の米国株式市場は堅調に推移しました。NYダウ平均は1.96%上昇し、史上最高値を更新しています。S&P500は1.68%上昇、11月11日につけた史上最高値まで残すところあと0.5%となっています。
市場の中身を見てみると、指数が示すより良いニュースが隠れています。それは、先週の市場の特徴として、主役が大型ハイテク株ではなく、S&P500の他の400を超える銘柄が上昇し、市場全体を押し上げたことです。
均等指数であるS&P500イコールウエイト指数は先週2.55%上昇、小型株指数であるラッセル2000は4.46%上昇と、S&P500の上げを上回っています。先週好決算を発表したディア[DE]の株価は8%、ギャップ[GAP]は12.8%上昇しました。このように非テクノロジー企業の上昇もあり、ハイテクに依存しない幅広い市場の回復が見られました。
エヌビディア[NVDA]株は長期的には上昇の余地あり
先週の注目は、エヌビディア[NVDA]の決算発表でした。同社の業績は前年同期比でほぼ倍増しましたが、市場の反応は控えめでした。決算発表前のオプション市場は、エヌビディアの決算発表を受け株価は上下8.6%の動きを予想していたのですが、決算発表翌日の株価の動きはわずか0.5%にとどまりました。
しかし、今回の決算発表はAI需要の堅調さを裏付ける内容であり、エヌビディアには依然として長期的には上昇余地があるとみています。先週1週間のエヌビディアの株価はほぼフラットだったものの、フィラデルフィア半導体指数は2.53%上昇。つまり、エヌビディア以外の半導体株も好調だったということです。
小売業界ではウォルマート[WMT]が好調を維持
小売業界ではターゲット[TGT]とウォルマート[WMT]が対照的な動きを見せました。先週17.8%株価が下落したターゲットは主に裁量消費品(必要品ではなく欲しいもの)に依存していますが、この分野の売上が減っています。それに対して、先週7.4%株価が上昇したウォルマートは価格競争力とスケールの拡大により好調な成績を維持しています。ターゲットは値下げを余儀なくされ、利益率を圧迫している点が懸念されています。
米国では11月28日はサンクスギビング(感謝祭の祭日)で株式市場はお休みとなります。米国株の裾野は広がっていることもあり、「感謝祭ラリー」への期待が高まっています。感謝祭はホリデーシーズンの始まりを意味し、消費支出や小売業界のパフォーマンスへの楽観的な期待が株式市場に良い影響を与えることでしょう。
投資家のセンチメントは「極度の強欲」レベルに至らず、今後は金利動向にも注視
その一方、現在のS&P500のPERは2024年予想EPSをベースにすると、23倍近辺と歴史的に見て割高なことが懸念材料でしょう。ただ、2025年の予想EPSを使うと約20倍と割安感がでてきます。また、投資家のセンチメントを測るFear & Greed Index(恐怖と欲望指数)を見てみると、まだ「欲望」の範囲に留まっており、「極度の強欲」のレベルまで到達していないことから、投資家のセンチメントは懸念するほど極端な強気の領域に達しているとは言えません。
金利動向も注視が必要です。米10年国債利回りは先週小幅低下したものの4%台を維持、一方、米2年債利回りは8週連続で上昇しており、経済成長やインフレに関する不安が市場心理に影響を与えています。今週11月27日には米第3四半期GDPの改定値(予想2.2%)とFRB(米連邦準備制度理事会)が重視するPCEデフレーター(予想2.3%)が発表される予定で、インフレデータの結果が市場の流れを左右する可能性があります。
また、12月18日はFOMC(米連邦公開市場委員会)です。ここでの25bpの利下げの発表は、ほぼコンセンサスとなっていました。しかし、直近では25bp利下げを行う確率は約52.7%へと下がり、ここからの金利の動きが注意点となります。