今日の株式マーケットは大幅な下落となりました。このような日につぶやきを書くのは、正直言ってとても難儀です。しかし思うのですが、マーケットは大抵ゆっくりと上昇していき、ドカンと落ちるものです。何故でしょうか?このような動きは、信用や信頼の形成と崩壊に似ています。人の信頼というものは、何年も掛けて創られてきたものが、場合によっては一日にして崩れ去ることがあります。そう考えるとやはりマーケットというものは、正に人の営みの、特に人の心理の機微の、集大成なのでしょう。昨日と今日で、企業の収益水準が大きく変わった訳ではありません。敢えて株価を分解して言うならば、収益水準XPERとして表せる株価の内の、PER、即ち何年間その企業がそのような収益水準を維持できるか、成長を維持できるかというコンフィデンス水準に調整が起きて株価が下がる訳です。一義的な理由としては、各国に於ける金利水準の上昇に伴う流動性の減少であるとか、利益確定の売りだとか、需給バランスの変化だとか解説できますが、結果として『コンフィデンス水準が下がった』という形で表現されます。問題は、そのコンフィデンス水準の下落が、個別のマーケットや株にとって妥当なものかということです。
今回、恐らく中国に端を発して世界的に株価が下落した訳ですが、日本株に対するコンフィデンス水準の下落について、冷静に評価すべきだと思います。世界の株の中の日本株、日本株の中の個別株、という文脈で、一旦玉石混淆で全てのものが狼狽する心理の中で投げ売りされたあとに、必ず他の比較から見直されてくるものがある筈です。それを冷静に考え、見極めることが、とても重要だと思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。