デフレは止まったのか?よく議論されるテーマです。私は既にデフレは止まっていると思っています。消費者物価指数は前年同月比で0.1%とか0.2%の下落が続いていますが、要素を見るとPCが29%下落などあり、その実態は複雑です。PCの場合、1年前の製品と同等の性能の製品の価格をもって変化率を計るので、技術革新がある分野ではどうしても下がりがちになります。おにぎりなどでも、高級おにぎりが出現しても、物価の変化の計算上は去年と今年と同じクラスのおにぎりで比較しますから、商品・サービスの革新・改善努力のある分野では、どこも物価指数は下がりがちになります。そういった革新が起きていることはいいことであるのに、皮肉なことにデフレは止まっていない、と云われてしまいます。しかしこれらの「指数足枷」を外して考えれば、実力ベースでは物価は既に上がり始めているのではないでしょうか。コンビニでも、最初に売り切れるのは高級おにぎりです。気を付けなければいけないのは、仮に物価が下がっていても、全体の支出が増えていれば、経済は成長していると云うことです。社会構造が変わっていく時には、かつて使われた指標が意味をなさなくなる時がある筈です。今は、そういったことに丁寧に注意を払うべきでしょう。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。