「悲観は気分、楽観は意志」と言ったのは小泉首相ですが、そもそもの性格として、楽観的な人と悲観的な人というの分かれると思います。金融の世界で言うと、株のトレーダーなど株式関係者は楽観的な人が多く、一方債券トレーダーは悲観的な人が多いものです。私は元々債券の世界にいて、今は主に株の世界にいますが、性格としては常に楽観的だったと思います。このように人の性格はそんなに変わるものではありませんが、それでも様々な環境の中で、楽観的な時と、悲観的な時という状態の変化はあります。ところで重要な判断をする時に、自分が楽観的であるか、悲観的になっているかを自己観察することは有意義なことだと、最近考えるようになりました。世界史を紐解いてみると、人は悲観的な時に極めて重大な誤判断をしがちなのではないかと思います。戦争などの重大政治的判断などにその傾向を見る気がします。通常の判断は、ワースト・ケース・シナリオも考えて行動すべきだと思いますが、重要な判断であればあるほど、自らが楽観的な心理状態にあること、少なくとも悲観的でないことを確認すべきだと思っています。悲観は脳活動を萎縮し、想像力を低下し、多くの選択肢を用意できない中で判断することに繋がるからでしょうか。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。