1月「米国のレートチェック」後に急落した米ドル
1月23日に、米国の通貨当局も円安けん制の「レートチェック」に動いたことを受け、その後、米ドル売りが急拡大した。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルのポジションで試算)は「レートチェック」の後から売り越しに転落すると、ほんの1ヶ月程度で過去最高に一気に迫る20万枚以上に拡大した(図表1参照)。
こうした中で、ユーロ/米ドルは1.16米ドルから1.20米ドルまで上昇し、急激なユーロ高、米ドル安が進んだ。米ドルは円以外の通貨に対しても軒並み急落し、これを受けて、ベッセント財務長官は、「断じて米ドル売り介入は行っていない」と弁明に追い込まれた。これは、米ドル自体にも脆さを抱えていることを改めて再認識させるものだった。
ベッセント長官は米ドル急落リスクを懸念か
その米ドルは、足下では過去最高を大きく更新する買い越しになっている。言い換えると、空前の「買われ過ぎ」が懸念される。そうした中、米ドル売り介入が「買われ過ぎ」修正のきっかけとなり、逆に米ドル売りが急拡大するリスクをベッセント長官が警戒したため、円買い介入の対価は米ドル売りではなくユーロ売りにしたのではないか。
今回、米国が米ドル売りではなくユーロ売り介入を行った理由としては、いわゆる近隣窮乏化策として国際的にルール違反になる自国通貨安誘導だと疑われることを避けるためだ、との解説もあるようだが、米ドル安・円高が続く局面ならそうだろうが、逆に歴史的な米ドル高・円安水準で推移している局面では、そのような疑いは生じにくいだろう。
米ドルは対円以外では、2025年1月のトランプ政権発足以降大きく下落するケースが多かった。米国が米ドル売り介入を行った場合、円安是正の目的とは裏腹に、円以外の通貨に対して米ドル急落が広がるきっかけをベッセント長官はなお懸念しているのかもしれない。
ユーロ買い・円売りポジションの損失への転換
米当局がユーロ売り・円買い介入を行ったとされる中、ユーロ/円は足下で185円程度に位置する120日MA(移動平均線)を大きく割り込む動きとなった(図表2参照)。この120日MAは、代表的な投機筋であるヘッジファンドの円売りポジションの損益分岐点の目安ともみられている。その意味では、ユーロ/円が120日MAを大きく割れるようなら、ヘッジファンドのユーロ買い・円売りポジションは損失に転落し、さらに損失拡大の懸念も出るのではないか。
ここ数年、円安の進行は対米ドルよりも米ドル以外の通貨に対して、つまりクロス円のほうがはるかに大きいケースが増えている。同じ円安阻止でも、米当局は米ドル以外の通貨に対する円安の阻止にも一定の役割を担い、むしろクロス円での円安こそが、米ドル/円も含めた円安進行のリード役になっているとの観点から、ユーロ高・円安けん制を強化した可能性も考えられなくはない。
投機筋の円売りポジションの損失に転じて、損失拡大を回避するための円買い戻しが広がることにより、ユーロ/円以外のクロス円でも円反発の連鎖が起こる可能性も注目される。介入警戒で対米ドルでの円安がこれまで限られたのに対し、クロス円の円安は大きく広がった。その主役の1つがユーロ高・円安だったが、それが変化するようなら、それはクロス円全体の円安傾向の転換につながる可能性も注目されるのではないか。
