2012年末に元手1,000万円で株式投資をスタートし、独自のバリュー投資を確立、そして現在は運用資産5億円を突破している個人投資家・某哲也さん。最初の投資での痛手や急落相場などの数々の荒波を乗り越え、どのようにして5億円という大きな資産を築き上げたのでしょうか。資産5億円に到達するまでの投資ヒストリー、失敗から学んだリアルなエピソード、そして家庭で実践する独自のマネー教育「パパ証券」についてお聞きしました。
●某哲也さんプロフィール●
サラリーマンを経て、現在は独自の高配当収益バリュー投資を実践する個人投資家。40代、妻子あり。「安く売らされない」ことを信条に地道な運用を続け、2025年8月に運用資産5億円を達成。日々の銘柄分析を自身のブログで発信するほか、2026年2月に著書『5歳から始める金融・投資の勉強法』を出版。
東日本大震災後に、元手1000万から投資をスタート
――投資に興味を持ったきっかけを教えてください。
投資を始めたのは2012年末です。会社員時代にパチンコで稼いだ1000万円を軍資金として始めました。最初に投資をした銘柄は、東日本大震災がきっかけで株価が10分の1以下に下落した東京電力を1点フルポジションで買いました。生きるために必要な電力を扱う会社で、倒産することはないだろうという安易な考えで始めたのですが、ロット管理などを考えて、自分に合った投資とは違うのではないかと気づき、2~3週間で東京電力から撤退してバリュー投資の道へ進みました。
――投資を始めるにあたり、勉強や情報収集はどのようにされましたか?
長く実績を積まれて、かつ手法もなるべく分かりやすく公開してくださっている現役投資家のブログをピックアップして、それらを毎日読んで成功している投資家の考え方などを参考にすることから始めました。
「高配当」という理由だけで保有しない、銘柄選びのコツ
――現在保有している銘柄数と、銘柄選びの基準を教えてください。
保有しているのは日本株で、銘柄数としては130銘柄ほどです。ただ分散枠として保有している銘柄や、優待も兼ねて単元で保有している銘柄も多いですが、主力や準主力として、ロットを厚めに投資している銘柄など、ある程度強弱をつけて保有しています。
主に増収増益の高配当銘柄(高配当の収益バリュー株)へ投資しています。そのため、配当利回り2.5%以上・業績右肩上がり・配当性向50%以下であることを、銘柄選定の最低条件としています。
銘柄選びにおいて1番大切にしているのは、「高配当」という理由だけで保有しないということです。もう少し詳しくいえば、「減配」となる銘柄を極力避けるということを意識しています。そのためには、業績も右肩上がりで、配当性向も高すぎないなど、配当を継続して増配していける力がある銘柄を選ぶように心がけています。
地道に収益バリュー投資を行ないつつも、チャンスがきた時にはフルスイング!
――運用資産5億円を達成した、投資ヒストリーをお聞かせください。
5億円を達成したのは2025年8月でした。2023年に東証がPBR1倍の是正要請を出したとき、高配当の収益バリュー株にレバレッジをかけてフルスイングできたことが一番大きかったと思います(図表)。結果的に、地道に収益バリュー投資を行いつつ資産形成をし、チャンスが来た時にはフルスイングという考えは、今後も活かせると思います。
――逆に失敗談があれば教えてください。
2016年年初の急落時に、信用ポジションを持ちすぎていたことです。2012年から投資を始めて、アベノミクスの恩恵を受け続けたこともあって、下落の怖さというものを知りませんでした。そんな時にレバレッジを大きくかけた状態で急落を迎えたので、ここで初めて信用取引の怖さを思い知ることとなりました。
世界で需要のある歯科矯正の銘柄に注目
――現在、保有しているファンドや個別株のうち、ご自身で注目している、期待している銘柄はありますか?
アソインターナショナルという、歯科技工物を扱う小型株がポートフォリオの主力の一つです。現在、世界的に歯科矯正の需要が高まっており、この会社は日本の上場企業ではトップクラスの歯科技工物メーカーで、同社は今後、世界展開を見込んでいます。この会社の社長は世界的に強い人脈を持つ社長で、現在の海外売上高比率を5%から50%まで引き上げることを目標としており、それも十分可能だと思います。
また、物価高や円安となっていますが、このような会社は代替が利きにくく、値上げが通りやすいという強みもあると考えています。現在の株価は決して高い水準ではなく、長期保有すれば、損をしにくい銘柄だと思います。
――最新の資産のポートフォリオについて教えてください。
ほぼすべてが収益バリュー株で、レバレッジは現物の30%ほどかかっている状態です。主力株でいうと、コシダカホールディングス(2157)、アップガレージグループ(7134)、アソインターナショナル(9340)あたりになります。
――資産配分を変更するタイミングは決めていますか?
これについてはさまざまな要因や環境によって変化するので、一言で説明することは難しいです。しいて挙げるなら、ロットを多めに入れている銘柄で利益確定する際には、空いた資金で他の銘柄に入れ替えることもあります。そうしたタイミングではポートフォリオ内に変化が起こりやすいですね。特に決算時期にはそういうことも起こりやすいです。
――「NISA」はどのように活用されていますか?
投資信託は保有していないため、つみたて枠は使用していません。成長投資枠については、長期保有する予定の高配当株やバリュー株にフルで充てています。特に増配傾向にある銘柄は、取得単価で見た時の利回りがどんどん上がっていくため、それが永久的に非課税となる効果は大きいと思っています。
子どもがお金と投資について楽しく体験できる「パパ投資」を実践中
――著書『5歳から始める金融投資の勉強法』でも触れられていますが、子どもへの投資学習の一環として、仮想の証券会社「パパ証券」を開く取り組み始めたきっかけについてお教えください。
小学1年生のタイミングでお金を使うことを含めた、お金の管理を学んでほしいと思い、おこづかい制度を始めたのですが、娘は物欲がなくて貯めるばかりでした。使うことを学んでほしいとは思ったのですが、それならいっそのこと貯める楽しさを倍増させてあげようと思い立って、楽しみながら興味を持てる投資の疑似体験を考えた結果、今行っている「パパ証券」を思いつきました。
・娘が銀行に貯金をした瞬間、その額と同じだけの高配当株をバーチャルで買ったことにしてエクセルに買値などを記録する。
・高配当株は私の監視銘柄リスト(私のブログに載っている銘柄)から私が選ぶ。
・買った株が配当月を迎えたら、毎月500円のおこづかいにプラスして配当金をあげる。
・TOBなどの上場廃止の場合は株を売却したとして新たな高配当株に入れ替える。
・私の監視銘柄から外れてしまった銘柄は、お年玉を貯金するタイミングで売却して銘柄を入れ替える。
(引用:某哲也著『5歳から始める金融・投資の勉強法』)
――「パパ証券」を開いてからお子さんにどのような変化がありましたか?
配当金をもらう楽しさが伝わっているようです。3月と9月は特に配当金が多いので楽しみにしています。また貯金をする(パパ証券に入金する)ともらえる配当金が増えるので、単に銀行に貯金をするよりも、お金を増やす楽しさは狙い通り倍増しているようです。
「パパ証券」では入金投資を疑似体験できるので、配当金や追加入金による複利の力というのを感じ取れるようになってきたことが、一番の成功だと思っています。また長く保有している銘柄は含み益も大きくなっているので、収益のあるバリュー株を保有すると価値が上がっていくことが、目に見えて分かる点も効果的でした。
――投資以外でお金に関する考え方など、お子さんへどのように伝えていますか?
今はインフレ局面にあるため、スーパーや飲食店などで物価高が目に見えて分かる時期なので、現金は目減りしていくということ、株式投資はインフレ対策になるということなどを、かなり漠然と伝えています。ただ、やはりお金は稼ぐ大変さが分からないと、お金の価値というものがピンとこないかなと思っています。私が本当に伝えたい、お金に対する考え方は、実際に娘が社会人になってから話すことになると思っています。
――2027年1月から始まる「こどもNISA」を活用する予定はありますか?
「パパ証券」とは別に、実際に子どもの口座で優待株など保有していますが、NISAを使うとすれば、そのような保有株をNISA口座で保有することになると思います。ただ、子どもが自分の意思で投資をしてみたいと思う時まで、NISAは使わずに取っておいた方がいいのではないかとも思っているので、2027年から活用するかどうかはまだ考え中ですね。
「下手でいい、ただ勝つ!」を胸に地道なバリュー投資を貫く
――投資を行う際、大切にしているマイルールはありますか?
私が1番大切にしていることは、「安値で売らされない」ということですね。これが私の根本にあって、これをしないためにはどういう投資行動を取ればいいか、ということを深堀りして考えています。
――日常生活のなかで、投資の情報収集や管理にどのくらい時間をかけていますか?
自分の監視銘柄を、1日1銘柄を目標に少しだけ深掘りして、それをブログにまとめるというルーティンがあります。これにかける時間が20~30分程度ですので、これが投資にかける主な時間となります。逆に寄りや引けを絶対に見るとか、毎日開示資料を確認するということはしていないので、あまり投資に対する時間は割いていないほうだと思います。
――投資における座右の銘などがあれば教えてください。
ある麻雀漫画のセリフですが、「ワシは下手でいい、ただ勝つ…!」という言葉を座右の銘にしています。周りがどれだけテーマ株などで儲けていたとしても、自分は地道なバリュー投資を貫いて、他人の華やかさに惑わされることなく確実にできることをやっていこうと心がけています。
――今後の目標や、やってみたいことなどはありますか?
ボードゲームや麻雀が大好きなので、多くの人が集まって遊べる家を建てたいという目標があります。社会貢献としては、子どもや学生に投資についてお話しする機会があれば積極的に協力したいと思っています。
――最後に、投資に苦手意識のある方へメッセージをお願いいたします。
まずは投資の本質を理解して、常に念頭に置いておくことが大切だと思います。たとえば、バリュー投資でいえば、黒字を積み重ねている会社は、企業価値が高まり、いずれ評価されるということです。そのような銘柄を、長期にわたって保有することがはじめの一歩となります。まずはそれを目指していただくのがよいかと思います。そのための考え方やメンタル管理などは、私の書籍『5歳から始める金融・投資の勉強法』にも詳しくまとめています。こちらの本は、子どもに投資について伝えたい大人へ向けの内容です。投資初心者や投資を始めたけど迷子になっている方へのアドバイスも載せていますので、ぜひ読んでみてください。
